第十二話 全ての人の魂の戦い《前編》
次は三日以内に投稿する。
俺のサイドエフェクトがそう言っている。
「来るのが遅くなって申し訳ない」
「いえ、おかげで助かりました」
巨大な船と共に現れたおやっさん。
彼が増援を送ってくれなければやばかった。
握手をしながら感謝を述べる。
「ラルカンシェル、機能、装備共に問題なし。あとはスタッフの慣れ次第でどこへでも」
おやっさんが自慢げに船を指さす。
あまりにも巨大な鉄の戦艦。
これが人類に残された最後の剣。
「ついに人類の反撃が始まるんですね……」
「ああ、我々シティも全力を尽くそう」
今までの苦労が思い出される。
ただの研究者だった私がいまや世界を救う英雄になろうとしているのだ。
遠いところへ来てしまったものだと、自分でも思う。
「改めてよろしくお願いします」
ぺこりと頭をさげる。
「何、人がいる場所では言えんが昔の血が騒いでな」
すると恥ずかしそうに鼻をかきながら、口調もくだけていく。
「ああ、やっぱりそうだったんですね」
彼に会った時から同じ匂いと言うか、そういう近いものを感じていたのだ。
似たような仕事をもともとしていたのだろう。
「そういえば」
ふと思い出す。
あの紅い《ムソー》に乗っていた男が言っていた言葉。
「おやっさん、永遠って何かご存知ですか?」
永遠。
それはミカータの歴史において一番有名な英雄譚。
古代チッカークとミカータが戦争をしていた時代の英雄が持つ名前だ。
「永遠……《エターナル》というその2つ名を持つNBが古代に存在したと聞いたことはあるが……」
おやっさんは語りだした。
「強すぎるその力を危険視したため生産されたのは1機のみらしい。何分、シティにも伝説として残っているだけでな」
古代の遺跡が機能しているシティならなにか資料が残っていると思ったが、やはり詳しいことは分からないようだ。
だが……。
「《エターナル》……うっ」
「大丈夫かね?」
《エターナル》と言う言葉を聞いて、頭の片隅で靄がかかったような気分になる。
何かを思い出せそうで思い出せない。
だが確かに知っているような感覚。
頭痛がなりやまない。
「ええ、ちょっと疲れがたまっているようで」
「少し休むと良い。これからやることは山ほどあるのだから」
「はい、そうさせてもらいます」
フラフラと足取り重く私は研究所に戻るのであった。
「すごい、これがラルカンシェルか」
俺は目の前にそびえるどでかい戦艦の姿に驚く。
ファンタジーらしくなってきたな。
「あの時遺跡の地下で見たのが本当に飛んでくるなんて……」
キツカちゃんもこれには驚いている。
すると誰かがこっちにやって来ているのが見えた。
年配の方だ。
「サッカン、ご苦労だった」
その人はケイさんに声をかけてきた。
ケイさんはなんだか驚いた表情をしている。
「おやっさん!? あなたまでついてきたの?」
「アレを整備する人間は1人でも多い方がいいからな」
「それにしたって……はあ、今はそんなこと言ってられないか」
「そういうことだ」
多少取り乱していたが、はあっとため息をついてすぐに冷静になっていく。
「物資の搬入を急げよ!」
「はっ」
周囲の様子が慌ただしくなっていく。
一般兵士や研究員の人たちが次々と行き交っていく。
その中にフラフラと漂うマホツさんの姿が見えた。
俺は声をかけて駆けつける。
「マホツさん、大変だったみたいですね」
「ええ、まあ」
倒れそうな顔をしているので肩を貸して上げる。
実際に顔を合わせるのは初めてだが、不思議と懐かしさを覚えた。
「すみませんが騎士団長さんのところまで連れて行ってもらえますか?」
「それはかまわないけど」
「マホツ、少しやすんだほうが」
「ありがとうキツカ。だけどまだ眠るわけにはいかなくて」
ふらつきながらも仕事を続けようとするマホツさん。
俺たちは仕方なしにホームラのいるテントまで移動する。
「ん、鴉たちか」
「やあ、キツカにマホツじゃないか」
「誰?」
「王子様」
「へえ」
知らなかったそんなの……。
「急いで相談したいことが……」
「もしかして、地上の戦力が心配なのかい?」
「それもそうですが」
「ふむ……《ムソ―》で上位個体の天使を倒した輩か」
ホームラが先に答えを言う。
マホツさんは、ええと頷く。
「中を開けてももぬけの殻。謎だらけですよ」
聞けば強い天使相手に《ムソ―》で一方的に勝ったというのだから、本当に人間なのか疑うレベルだ。
はたして敵か味方か。
「不安定要素だが、敵ではないと思っていいだろう」
「今のところは、ですが」
だが、天使と戦う意思を持った者なのだ。
どこかで巡り合った時、話し合えばわかりあえるはずだ。
そんな気がした。
「ここにいたのね」
「ケイさん」
会議をしているとテントにケイさんが入ってきた。
「さ、みんな作業急いで。いつまた天使に邪魔されるかわかったものじゃないわ」
「はい」
どうやら俺たちのケツを叩きに来たようだ。
俺たちもできることは全部やろう。
再びそれぞれ仕事に戻るのであった。
「え~!」
「俺たちが……殿下の護衛!?」
「そんな……嘘でしょう?」
新たに支給された騎士甲冑に身を包んだ若人、イケ、ガリ、カワが三者三様に驚く。
「本当だ。四天王が抜ける以上、他に有用な騎士はいない。それにまた首都が敵に襲われたときは殿下自身もNBに乗って戦うのだぞ」
「しかし……ええ……?」
ホームラは命令を淡々と語った。
ただでさえ自身らをボコボコにした四天王がいることで緊張しているのだ。
「じゃ、頑張れよ新入り共」
「ちょっ、火のカ様!」
そんな苦悩も知らず、あっけらかんとエールを送る火のカ。
さっさとテントの外へ出て行ってしまう。
「お前たちも騎士ならば胸を張れ」
「私たちがさんざん鍛えてあげたのですから、無様な戦いは許しませんわよ」
「炎のエン様……水のスイ様……」
憧れの四天王に発破をかけられ、震える3人。
それぞれの心に熱いものがこみ上げていた。
「ではな。あとのことは殿下に聞くように」
それだけを言い残し、四天王はラルカンシェルへと消えていった。
取り残された3人は無言で顔を見合わせる。
「……行っちゃった」
「……どうするの?」
「どうするって……戦うんでしょう?」
しかし、いざ自分たちに首都の命運がかかっているかと思うと、緊張とストレスで精神が悲鳴を上げていた。
「て、敵が来たら、だけどな」
イケが弱気になり、ぽろっと本音を漏らす。
「祈りましょう」
「祈ろうか」
「祈らないと……」
3人はとにかく神に祈りを捧げるしかなかった。
「用意できました」
「ああ……わかった」
物資もすべてラルカンシェルへと積み込んだ。
NBも整備はバッチリらしい。
すべての準備が整ったのだ。
一般兵士がズラッと整列している。
そこの先頭には殿下、四天王、マホツさん、ケイさん、キツカちゃん、俺が立つ。
「では、殿下……行ってまいります」
ホームラが深々と頭を下げる。
「父上は全治3カ月のケガを負ってしまってね。見送りに来れないことを悔やんでいたよ」
「ご自愛くださいとお伝えください」
「うん。君たちも無事に帰ってくるんだよ」
優し気な声で俺たちにエールを送ってくれる。
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
全員が敬礼をビシッと決めた。
「スイは帰ってきたらハグしてあげるからね」
「は?」
「スマセン」
最後が余計だった。
俺たちはそそくさと船に乗り込んでいく。
迷いは無かった。
「さて……今が踏ん張り時だ」
ぱっくんは太陽の眩しさを手で隠す。
己のできることはこれまでだ。
あとは力ある者たちに託すしかない。
「頼んだよ、おっさん」
かくして、船は空へと旅立った。
人類の存亡をかけた旅の。




