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賢者になる前は底辺プログラマでした  作者: 白井つくよ
§01 ソフィア共和国連邦編
6/6

#06 街道での遭遇

本日2回目の投稿!

主人公サイドを進めました。

テンプレ盛り込みすぎた感があります。


 鬱蒼とした。

 見渡せども何処までも、青蒼碧翠(あおあお)ていた。


 そうして踏み入るごとに大地の豊満な肥沃においに酔いそうになる。

 幼少の頃、家族参加した白上山地での長期キャンプに憶える残り香よりも強い。



 静々と二人分の足並み、三人分の息遣い、時折木霊する生命いきものの気配、そこに微かに流れる清流の調べ。



 僕ら三人は海辺の小屋を離れ、そこから数十キロ先にある城塞都市ラピスを目指していた。




「おぅ、坊主シア。ひょろっちいくせに中々粘るじゃねぇか」


 金髪碧眼の色黒大男、アトラスが数歩後ろを背追う僕にそう皮肉をかける。



「はぁはぁ。……そろそろ、休憩が、欲しいですよ、アトラス」

「がはははは‼︎ これから〈冒険者〉登録にいこうってんだ。ちったぁ体力作りにこの山道は適してるからよぉ。頑張れ(きばん)な、坊主シア


(いや、これ山道じゃなくて、獣道。よりも酷いんじゃないか……?)



 都会育ちの現代っ子日本人を舐めないで欲しい。すでに体力エイチピー限界ピンチだ。


 こういうとき、僕の味方、おっさん(アトラス)の手綱を握ってくれる幼女、エレはと言えば。森に入って数刻後にはおっさんの背で健やかな寝息を立てる始末。


 あぁ、女神かみよ、其方は乗り越えられる試練しか与えないのではなかったのか。


 ……阿呆な茶番を心内で繰り広げる。しかして目的地はまだまだ見えるはずもなかった。



「まったく、21(その)歳にもなってその体力じゃ、ここでは生きて行けんぞ」

「あはははは…………」


 僕は苦笑しながら、都市を目指すことになった理由わけ。昨晩のことを思い出す――――――




 ◆




 ――――そんで、小僧は一体何があって海辺で倒れてたんだ?」


 そう色黒の大男、アトラスが真面目な面で口火を切った。


 先ほどまでの親バカぶりもなりを潜める。呼び方はランクダウンしたままであったが。


「エレもシア兄に何があったか知りたい」


 幼女エレもこちらを不安げに見上げる。彼女の小さな手が、僕の裾に僅かなしわをつくる。


「…………えぇ。そうですね、色々とありすぎて。まだ僕の中では整理がついていないのですが……。僕は――――


 それから暫しの間、僕は淡々と日本・・での生活や職業、経験、また巻き込まれた天変地異について静かに語った。




 ……………………




「僕は島国の生まれで、都会……大きな都市で育ちました」


「一応成人していて、今年で21歳になります」


「おぉぉ? 坊主成人……つうか15歳越えていたのか⁈」

「(………エレより10歳も年上………⁈)」


(僕、そこまで童顔じゃないと思うんだ………)


 異世界ものにつきもの、お決まりの呪い(テンプレ)

 日本人は大人になっても童顔説。

 これ、海外まわりが早熟過多(すぎ)で、日本人悪くないと思うんだ。


 というか、幼女エレよ。僕は一体幾つに見えていたんだい? 怒らないから目逸らさないで、お兄ちゃんの眼見て話そ?


「俺にはまだ信じらんねぇなぁ。おぃ、小僧。基本情報だけでいいから、【自己閲覧ステイタス】見せてみろ」


 呆然としていた色黒大男(アトラス)がいち早く衝撃ショックから立ち直った。……衝撃ショックってやっぱり童顔系日本人に対して失礼だと思う。


 そうして定番の【自己閲覧ステイタス】なるものを唱えろと言う。おぉ、流石異世界だ。


「疑ぐり深いですね……そのうち凹みますよ。えぇっと、【自己閲覧ステイタス】」


 作法やりかたも分からないまま、とりあえず基本情報、基本情報と考えながら声に出す。


 そうして僕の目の前に、周りのきらきらとした粒子の様なものが集まり少し大きめの名刺の様な半透明のカードを形成する。おー、これが僕の初魔法?になるのかな。案外普通に発動するんだなぁ。



(こいつ……【魔力操作】の技巧レベルが異常だな)

 坊主が形成する【自己閲覧ステイタス】に俺は内心舌を巻いた。



 ――――――――――――――――――

 シア / 男 / 21歳

 賢人族(エルダル) / 魔法技師(プログラマ)

 ――――――――――――――――――


 ……………………ん?なんだこれ……ナンダコレ⁈


「ほぉ、本当に小僧そのなりで成人してやがったのか。こいつぁ疑って悪かったな! がっはっはっはっ‼︎」

「シア兄がエレより10歳年上10歳年上10歳年上……………」


 ちょ、そこじゃない。そこじゃないぞぉぉぉ‼︎


 僕はいつの間に人間辞めてたの?

 人の生物学的な立ち位置は霊長目ヒト科ヒト属のホモ・サピエンスって学院のじっちゃんが言ってたの覚えてる‼︎

 あ……、いや。

 ホモ・サピエンスってラテン語で「賢き人」って意味だともじっちゃんが得意げに雑談してたのも覚えてる……。


 この世界の翻訳システム的なの雑すぎね? ホモ・サピエンスを「賢人」って訳したの? ねぇ、そうなの?



「おぃ、小僧大丈夫か? なんか嫌なことでも思い出したか? ほら飯食ってちょっと落ち着けや」

「シア兄大丈夫? お耳また撫でていいよ?」


 その後、暫くはこの異世界の仕様に関して呪詛を吐き続けた。その間、外野からは温かな言葉と暖かい食事と生暖かい視線を掛けられ勧められ頂くことになった。死んだ(ハイライトを)魚の(なくした)をしていたとは、エレからの後日談である。


 ……………………



(この世界の仕様絶対適当(てぬき)だろ……そもそも賢人って書いてルビがエルダルってなんだよ?厨二乙かよ、ちくせう………etc.)


「…………シア兄、シア兄。魔法技師(プログラマ)って何するひと?」


「……え? あぁ、魔法技師(プログラマ)というのはね……


 延々と呪詛を吐き続ける僕を幼女が現実こちらに引き戻す。幼女えれたん本気まじ天使。


 …………落ち着け。


 んで、幼女の好奇心に応えるために僕は魔法技師(プログラマ)なるものについて考察する。


 ん? プログラマッテナニスルヒトダッケ? 現代的萬屋?

 ダメだ。学院基準に考えすぎだ。幼女にはまだ早過ぎる。




 …………そうだね。僕のいた所だと、魔法の中でも雷魔法を精密に制御する技術が発達していたんだ。そこに科学っていう僕達のところでは一般的だった学問があってね。それらを組み合わせた魔道具、コンピュータを偉い人が発明したんだ」


「おぉー」

「なんだか小難しい話だなぁ」


 幼女エレの黄色瞳に更に好奇心が宿る。色黒大男(アトラス)の頭からは既に湯気が登り出していた。


「……コンピュータのすごいところはそれ一つで無限にも等しい効果を持たせられるんだ。何度でも書き直せて、いくつもの魔法を組み合わせたり、納得のいくオリジナルの魔法を創り出せる。そういう作業を僕は、魔法技師(プログラマ)としてやっていたよ」


 どう説明するべきか。迷ったが、スクリプトが持つ一側面をそのまま魔法のようなものに置き換え省略す(はしょ)ることにした。


「ほぉ、それはすごいな。俺は〈魔道士〉じゃねぇから、アレだが。魔法の専門家としてではなく、一冒険者としてその魔道具がやべぇ代物だってことはわかるぞ」

「シア兄の職業凄い」


 なんとなしに、雰囲気イメージは伝わったぽいな。エレの瞳の煌めきが一層濃くなった気がする。……大袈裟に言いすぎたな、これは。


 ……………………


 ——————そうして僕は大地震で身動きが取れなくなってしまって、続け様に起きた大津波に故郷から攫われたんだ……と思う。でもまぁ、こうして生き残れて良かった。まさに『九死に一生を得る』とはこのことさ」


「二人には改めて、心からの感謝を。僕にできることがあれば何でも言って欲しい。できる限り二人にこの恩を返したい」


 僕は二人に深々と頭を下げた。


「坊主が生意気(なま)言うんじゃねぇ……って言いたいところだが。お前さんは成人しているんだもんな。……なりがそれだから調子が狂うぜ、ったくよ」


 アトラスは頰傷をかきながら太々しくもそう応える。一方でエレからはと言うと……


「……それじゃあ、第一発見者のエレの発言権がコウリョされるべき。シア兄はエレのシア兄としてこれから生活するべき」


「「え、エレ⁈」(ちゃん⁈)」


 ふんっすと。幼女エレは満足気にここ一番の長文を朗々と謳いあげた。


「え、エレ、それはな、流石に父さんもな、それはそのぅ」

「お・と・う・さ・ん」


「エレ、」

「お・と・う・さ・ん」


「エ」

「(にっこり)」


「…………坊主、明日ここを出発してラピスまで行く。お前には〈冒険者〉として、エレの兄として」

「………………………………………………………………俺の息子として恥ずかしくないように俺が直々に鍛え上げる」


「え? え? おっさん、え?」


 変わり身早すぎない? そして最後の部分に物凄い葛藤を感じた。


「異論は認めん」


 えぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇっぇぇぇぇ⁈


「シア兄、がんばって」


 小悪魔的幼女の微笑みには抵抗でき(あらがえ)なかったよ……。



 ……………………

 ……………

 ……



 僕は黙々とアトラスの後を追いながら昨日のことをどうにかこうにか納得するように消化し続けていた。異世界に来て2日足らずの内に自身を取り巻く環境の変化が目紛し過ぎたのだ。すでに僕の許容量キャパシティ限界突破(オーバーフロウ)していた。


 その後も景色は然程変わらず、僕は獣道に喰らいつく。そうして下を向きながら足を進めていた自分の身体が一寸先の壁で立ち停まる。


「ん? アトラス、やっと休憩させてくれるのですか?」

「坊主。呼吸を沈めろ、魔物の気配が近い」


 アトラスの圧し殺した声で身体に緊張が走る。先程までの疲れが目醒めるように引き、冷や汗が肌を伝う。




 ————僕は異世界初の魔物きけんにこれから遭遇する。

拝読ありがとうございました!

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