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賢者になる前は底辺プログラマでした  作者: 白井つくよ
§01 ソフィア共和国連邦編
5/6

#05 盲目な叡智

ほんっっっとすみません。

体調壊したり、両手首寝違えて捻挫してたり実生活のほうでわちゃわちゃしておりました。


今回は、伏線色々含めてのシーンです。

今日は夜に主人公サイドを投稿しますので、乞うご期待頂ければ幸いです。

 白。


 そこは白に塗りつぶされた空間。


 大空を支配する雲海よりも荘厳で。


 氷雪が被覆おおう銀世界よりも優美で。


 ただただ、そこは有無を言わさぬ神々しさに包まれていた。




 黒。


 墨汁を一滴ひとてき落としたような染み。


 陽光ひかりも届かさぬ海の底、深海の蒼よりも暗く。


 病魔に蝕まれたからだの粘ついたあかよりも鮮明に。


 ただただ、そこに佇む黒き円卓。




 そうしてその周りに座す三者を揃えてこの世界は完成していた。





「きゃははっ。今回の賭けはボクの勝ちのようだね♪」


 ある一人は少女にも見える少年か、両者にも見える容姿なりをしている。少年は上機嫌に口元を綻ばせる。


「うふふふふ。いいえ、まだ分かりませんよ。運命も賭け事も全ては〈世界ガイア〉の御導きのままにあるのですから」


 ある一人はまるで聖母を体現した容姿なりをしている。彼女は柔和な笑顔でそれに応えた。


「あー! エーフィ、未来視ズルはいけないんだよ~。〈叡智〉を使ったら折角のお遊び(ゲーム)が興醒めだよ」


「ねぇ、ジンもそう思うでしょ? ねぇーってばぁ」

「……おぃ、煩いぞ。今は忙しい。邪魔をするな、フォルテ」


 ある一人は銀髪に灼眼、だが顔はどこか日本人めいた作りをしている。彼は鬱陶しそうにまとわりつく少年を引き剥がし突き飛ばす。


「もぅ、いけずなんだからぁ」


 少年はすごすごと自身の席次にどっかりと座り込んだ。退屈だと言わんばかりに足をばたつかせている。


「フォルテ、ジン様のお邪魔をしてはいけませんよ。〈世界の記憶(アカシックレコード)〉を観ている時は多分に集中なさっているのですから」

「エーフィはそうやってジンの味方するぅ。……また、ジンが何かおもしろいこと思いついたのかなぁ! きゃはははっ♪」



 ここに彼等が会するのは盤上ゲーム悪戯ひとてまを加え、より愉快に悲惨に喜劇に悲劇に、より世界おもちゃをおもしろくするためである。


 普段は〈世界ガイア〉の各神域で、その支配領域を眺め、ときに加護ちからを、ときに神託アドバイスを与えるのが彼等の暇つぶし(おやくめ)であった。



「……だめだ。取り逃がしたようだ」


 幾分かときが経ち、暇になった二人が小さな茶会に興じている中、ふと男が愚痴をこぼす。


「えー、取り逃がしたって何を?」

「ジン様、何か良からぬことが?」


 二人は内心驚きながらも、一人は面白げに、一人は男を案じるように問いかける。それほど男が胸のうちを吐露するのは珍しいことであった。


「〈世界ガイア〉から強引に情報を取り出そうとする輩がいた。……いや、取り出されてしまったがな。まさか、あの忌々しい〈賢者〉の子孫の仕業だとしたら中々に厄介だ」


 男は苦虫を潰したような表情で現状を半ば独り言のように分析している。


「……あの森人女(エルフ)もどきが子孫に限ってそれはあり得ないのでは、ジン様?」

「そうだよ、ジンー。ソフィーは人でありながら〈叡智〉の極致に至ったけど、それもあの樹を復活させるために代償は大きかったはずさ。今更ソフィーが恐いのかい?」


 女は〈賢者〉という言葉で瞳に憎悪を灯す。少年は男の独り言に対して呆れ半分揶揄うように嗤う。


「おい糞ガキ(フォルテ)。いい加減耳障りな口を閉せ。消すぞ」

「やれるもんならやってみろ~~~♪」


 二人の殺気混じりの覇気に空間が軋み出す。


「もう!! 二人ともいい加減にしてください。これ以上は世界がんぐに不確定性が生まれますよ。遊戯ゲームが台無しになるではありませんか!!!」


 二人の間に極大の蒼雷が物理的に迸る。


((………………………………………………))


「はぁ。どちらにしても手遅れだ、エーフィ」


 冷静さを取り戻した男は、溜息と共に言葉を吐き出す。


「それはどういうことでしょうか、ジン様?」

「やっぱりおもしろいことになるの?ジン!」


 男の次の言葉を二人は待つ。


「…………先程の何者かの干渉の結果か。事象確率に不確定性が生じ始めた」


「「!!!!!」」


 まさか、いや、有り得ないと。今度こそ男を含めた三者は表情を正す。


「ここにきて逸脱要因(イレギュラー)が含まれては敵わんな」

「我々の領域外での事象作用が働いているのでしょう」

「そうすると、やっぱりソフィーのところしか考えられないね♪」


 三者にとってその原因のありかは明白であった。しかし、今の彼ら(・・・・)は〈世界ガイア〉に対して大きな干渉はできない。いや、今後のためにもそれは避けなければならなかった。


「…………当面は筋書き通り、遊戯ゲームを終章まで続ける。俺は今後も不確定性の観測を続ける。お前たちは領域での動きに注視しろ」


 男の中で一つの決断プランがなされた。


「ジン様の御心のままに」

「はいはい、わかったよ。ジン」





 男を残して二人は自身の神域へと還って行く。


 そうして残った男は確かに嗤った。


 悠久の中、ただただ目的のために作業を繰り返すロールプレーイングゲーム


 そこへ訪れた不確定性(イベント)に男は怡悦を感じずには居られなかった。



(あぁぁああああぁあぁああぁっぁぁあぁああああぁあぁ)

(そうだよな、これじゃ生温過ぎたんだ(イージィモード)

(ようやく俺の、俺の英雄譚が、……あと少しだ)

(ここに寄越したあの傲慢な最高神クソッタレとやらに辿り着く)

(その前の肩慣らし(ハードモード)になれば、あぁ最高だなぁぁ)





 ―――――――――――――屠殺してやる(まっていろ)最高神クソッタレ




 ◇




 大樹の下。


 遥か地中深くでそれは祀られていた。


 常闇やみてらすものなどここでは不敬ふよう


 よこしまを祓い、人にぬくもりを授ける白。


 あたたかな、曙光のような、木漏れ日のようなそれを纏った〈ほこら〉がそこにただ佇んで居た。






 そこに森人族エルフの男が一人、祈祷を捧げるように跪き、〈祠〉に頭を垂れて居た。常しえを映すその瞳は、すでに男から蒼天を翠蓋を落陽を、それを取り上げていた。しかし、その瞳の向こうには、祠があった。



「…………奇怪な。〈世界ガイア〉が騒めいておる」


 男は一言そう掠れるように呟く。


 そうして、自身の祝福ギフト能力スキル、【叡智瞳(エルダルヴュ) Lv.2】を使用し、〈世界の記憶(アカシックレコード)〉その表層記憶(レコード)へと開示アクセスを試みる。


 表層であれどその情報量は人の器にそうそう収まりきるものではない。だが、彼は能力スキルを発動することで、通常ならば廃人オーバーフロウになりかねないその桁違いの情報を紙一重に制御していた。


 しかしながら能力スキルには等級レベル相応の限界が存在する。


「がはっ……」


 能力スキルの解除と同時に男の軀、至る所、五臓六腑全てをあかく染める。


「やはり幾歳には敵わんのぅ……。わずか寸刻にも満たず、か」


 老齢の嗄れたそのかおには、僅かに哀愁が漂う。


 そうして男は自身に〈智者〉である自身の職業ジョブ能力スキル、【神聖魔法】が一つ【治癒ヒール Lv.5】を行使する。僅かに体内魔素(フォンス)、魔力を消費するのを感じながら反動で負った代償を癒やす。


 その最中、男は記憶じょうほうを整理していた。



(――――何者かが記憶に強制的に干渉したようじゃ。ふははは)

(……やりおるのぉ。彼奴等もかなり警戒しておるのを感じ取れたわい)

(こやつの目的は分からんが……ふむ。〈世界ガイア〉がまた動きだすのかのぉ)

(ソフィア様、あなたの予言ゆいごんは、そのとき(・・・・)はすぐそこのようですぞ)




 憔悴した老兵然とした面、されど男の瞳には煌々と若かりし頃の光が還っていた。







拝読ありがとうございました!

もしお時間ありましたら、コメント・感想・評価を頂ければ幸いです。

続きが気になる、面白いと感じた方、ブックマークよろしくお願いします!

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