最近母さんのスパルタが酷い
鈍足更新ですみません。いつも読んで下さってありがとうございます。
母さんと空を飛ぶ訓練をしたり、狩りに行く訓練をして日々を過ごしていた。
そんなある日のことだった。
狩りの訓練から戻ってくるなり母さんは俺に言った。
狩りの訓練とは大量の魔物を真正面から虐殺するあれだ。
「あなたに言っておきたいことがあります」
俺は手に入れた魔物素材で自作装備を補強しようとしながらそれを聞いていた。
「ちゃんと話を聞いてるの!」
「……な、なんでしょう?」
「あなたは優秀ですが、少し考え方が後ろ向きです。攻撃されたらどうしよう。その事ばかり考えている気がします。なので、それは全て処分させて貰います。そもそも、並の素材では防具を作るだけ無駄ですよ」
母さんは俺が作った装備を例の理の力で一気に凍らせ、それを砕いて霧散させた。
砕かれた氷は全て水蒸気となって消えてしまう。
何で全部水になった。材料に使った骨や皮などはどこへ行ったと言いたい。
「……う、折角作ったのに。時間も一杯使ったのに」
「泣き真似をしても無駄です。そして、その考え方はあなたの戦い方にも現われています。あなたは魔物が近づく前に全て遠距離から仕留めようとしていますね。悪いこととは言いませんが私の教育方針であれは今後禁止です。魔術でしたっけ? 確かにそれなりに優秀でしょう。ですが、私の目の前でその力を使おうとしたら容赦なく霧散させますからそのつもりで」
「え? 流石にそれはないって」
「そうですか。言ってわからないなら今から追加の訓練に行きましょう」
あ、ヤバイ。完全に母さんがスパルタモードに入ってらっしゃる。
俺は抗議する間もなくつままれて、森へと連れて行かれてしまった。
森の適当なところに放置すると、母さんは森の奥に魔物を探しに行ってしまった。
よし、逃げよう。
俺がこっそりそのばから移動しようとすると、急に後ろ足が凍らされた。
特殊な氷らしく、冷たくはないが全くその場から動けなくなった。
地面にがっちり固定されてしまったから飛んで逃げることも出来ない。
火で溶けないかなと思って試しに火の魔術を行使しようとしてみる。
しかし魔力を集める段階で霧散してしまった。多分制御を奪われたんだと思う。
動けずにその場で藻掻いていたら、例の地鳴りがドドドドドッと森の向こうから響いてくる。
魔物の大軍が迫る足音だ。
そしてお決まりの位置に母さん。
日本に現れた巨大怪獣がビル群を倒しながら乗用車を追っかけてる。
それと同じようなことが再現されていた。
こちらに向かって車物を俺は減らすことが出来ない。
母さんが追い込む魔物は初日以降、魔物は大幅に増えている。
俺達の実力を確認してこれくらいならいけると思ってしまったらしい。
何度試しても母さんの妨害を魔術が突破できない。
いつもだったらそれでもなんとか近づく前に終わらせるんだけど、今日は無理だ。
攻撃手段は物理格闘のみ。
足が封じられているので、それ以外の部位だけが使用可能だ。
「ええい!やってやる。やればいいんだろ」
魔物が接近してくるまで俺は待つ。
あわよくば通り過ぎてくれないかなと思ったら、母さんが俺のは以後に氷の壁を作って進路を塞いでしまった。そしてその氷の壁をぐるりと円形に伸ばして氷のコロシアムのような場所を即席で作り上げる。
狭い範囲に魔物が密集させられている状態。その中心には俺がいる。
それでひとまず満足したのか母さんの放つプレッシャーが無くなった。
魔物達は本能に突き動かされていた状態から解放される。
腹を空かせていた魔物は近くの魔物に襲いかかる。
足が動かない俺も格好の獲物の一体だったらしく、容赦なく魔物が群がってくる。
魔術……を使おうとして発動しない。
その一瞬のラグをついてデビルホーンキャットが突っ込んでくる。
本能的にしようと思って足が動かなくて更に窮地に陥る。
慌てて片手で角を掴んで動きを止めたが、死角から別の固体が突っ込んできて俺の腹部に角を突き立てた。くそ、凶悪な角さえ無ければ可愛い猫なんだけどな。
硬い鱗に阻まれたおかげで幸いノーダメ-ジだったが、俺は悔しさにギリリと歯を食いしばる。
……デス1。ゴブリンなら死んでいた。間違いない。
角が突き刺さらず、はじき返されて転がったデビルホーンキャットに、先ほど掴んだままだったデビルホーンキャットの角を突き立てる。突き立てつつ首を折る。これで二体仕留めた。
と、そこで尻尾に重みというか違和感を覚えた。
ちらりと振り返ると尻尾が伸びていた。と、一瞬思ったが途中から柄が違う。
鱗には覆われているが、その鱗模様は濃蒼に鮮やかな真紅の円で描かれている。
ヴェノムヴァイパーだ。
どうやら尻尾の先端から俺を丸のみにしようとしていたらしい。
毒液のついた牙に関してだが、どうやら俺の頑丈な鱗に阻まれたおかげで毒に冒される事態は防げたようだ。
咥えられているのがこそばゆい位なのでひとまず放置で問題ない。
ここで一番厄介なのがデッドリースパイダーだ。
奴らは生態的にこんな状況にまず追い込まれないからな。凄く不機嫌になっている。
そしてメイン武器は殺傷力が高く遠距離攻撃が出来、細く目にも見えにくいという俺も愛用していた斬糸である。
斬糸を吐いて飛ばそうとしてきたので、俺は尻尾を振るって牽制をする。
ヴェノムヴァイパーが尻尾に食らいついていたからこそ、リーチが伸びて出来たことである。
このまま役に立って貰うぞ。
尻尾にくっついたままのヴェノムヴァイパーを鞭代わりにしてデッドリースパイダーを殴る。
するとヴェノムヴァイパーで延長された尻尾でも届かないくらいに距離を取られる。
その間にゴブリンが恐れ知らずというか、こちらに向かってくるのが目に見えた。
馬鹿だなぁ。よりにもよって斬糸の軌道直線に躍り出るなんて。
何が嬉しいのか楽しそうに笑ってるし。
なら間近に迫ったもう一体のAランクを先にどうにかさせて貰う。
筋肉こそ正義とでも言わんばかりに腕や大胸筋が膨れあがった熊。三メートル近くもある体躯。
パワードグリズリーである。
奴は接近戦しか出来ない。だが、接近戦に滅法強い。また、足の筋肉も相当で瞬発力もヤバイ。
高速で近づいてきて高威力でぶん殴る。脳筋を地で行く奴だ。
また、恐るべきタフネスで弓みたいな小さな点の攻撃は殆ど意味を成さないと来ている。
パワードグリズリーが大きく体を仰け反らせながら腕を引く。
何であのモーションなんだろう?
やはり一撃の威力に重きを置いているのか?
コンパクトにジャブを撃ってくればSランクだったんじゃないかと俺は思う。
俺はそれを見ながら落ち着いてそれでいて素早く、デビルホーンキャットの角を折る。
それを片手で作業しながらもう片方の手で尻尾についているヴェノムヴァイパーの牙も折って毒腺を引きずり出しておく。
その毒腺を塗りつけたデビルホーンキャットの角に塗り、手のひらを支えに指の隙間から出すように握って、パワードグリズリーの拳にカウンターを合わせた。
デビルホーンキャットの角がか去っても尚、拳の威力は衰えない。
予想していた俺はもう片方の腕も支えに回す。
それでも厳しい。
ガード越しに俺は頭をぶん殴られた。
一瞬ぐらっときたが、ドラゴンの頭蓋は頑丈なようだ。ダメージそのものは無い。
……デス2。
くそ、筋肉馬鹿め。
これでもゴブリン時代よりは遙かにパワーがあがって無茶が出来るようになったんだけどな。
グギョオオオオオオッ!
二ヶ所から悲鳴が同時に聞こえた。
まず、あのゴブリンが死んだらしい。
そして、パワードグリズリーは今になって腕に深々と突き刺さったデビルホーンキャットの角に気づいたらしい。痛みに絶叫する。
苦しんでるところ悪いがそいつは神経毒つきだ。
デッドリースパイダーの斬糸が飛んでくるので尻尾のヴェノムヴァイパーで振り払う。
頑張ってくれたヴェノムヴァイパーも斬糸の前には無力であっさり真っ二つにされてしまった。
糸の軌道を変えるのが目的だったから役目としては十分だ。
しかし、足が動かないってのはあまりに酷くないか。母さんよ。
心の中で愚痴りながら、遠距離放題であるデッドリースナイパーの牽制手段が無いか考える。
丁度、俺が倒した魔物の死骸を狙ってちょろちょろしていたアーミーウルフがいたので利用させてもらうことにした。迷彩柄の毛並みをした狼だ。大きさは一メートル無いくらい。ギリギリいけるだろ。
アーミーウルフを尻尾で掴んでそのままデッドリースパイダーにぶん投げる。
遠くから狙ってくるデッドリースパイダーが非常にウザイ。本当はアイツを一番に仕留めたい。
内心愚痴りつつも、動きの緩慢になったパワードグリズリーに向き直る。
多分デビルホーンキャットを悔いのように打ち込んでやった腕は攻撃に使ってこない。
そろそろ体に痺れがあるはずだ。
ウガアアアアアッ。
パワードグリズリーは怒り任せに腕を大きく振りかぶる。
だが、その動きは明らかに最初よりも精彩を欠いている。
……よし、頃合いだな。
俺はパワードグリズリーの振るってきた腕に手を添える。
やることは力の方向の誘導。合気に近い技術だ。
あまり筋力差があると無駄に終わるので最初の一撃は食い止めることを優先に考えた。
力を逃がしてパワードグリズリーの拳を地面に炸裂させる。
炸裂させる場所は足元。
位置的に自力じゃ破壊しづらいんだよね。
願わくばこれで母さんが俺に付けた枷が外れてくれることだ。
ドオオオオオン!
大地が震える。
パワードグリズリーの穿った地面が爆散する。
流石筋肉馬鹿だな。
殴って木を折っているのを見たことあるが、ここまでとは思わなかった。
それでも母さんの作った氷は砕けなかった。どれだけ頑丈なんだよ。
ただ、地面の方は違ったようだ。地中から氷の塊を引き抜くことに俺は成功した。
後ろ足にでっかい氷の塊がついている状態だ。やはりまともに歩けない。
だが、飛べる。
俺はそのまま上空に羽ばたいていって、落下。
落下しながら後ろ足についていた氷の塊をハンマーのように一回転させてパワードグリズリーをたたきつぶした。
跡はあの憎たらしかったデッドリースパイダーを仕留めてやる。
お前はスナイパーとしては優秀だ。優秀故に近接戦は弱い。
まともに近づくのも馬鹿らしい。
って、事で再び上空に退避。
体の構造上、デッドリースパイダーは上空方向に糸を飛ばすのが苦手だ。
悠々と射程範囲を飛び越えて先程と同じように氷の塊でたたきつぶす。
「よし、帰る!」
暮らしている洞窟に帰ろうと羽ばたき始めたところで母さんがやって来てダイナミックキャッチされた。
「あれを全部倒すまで終わらせませんよ」
「だったらせめて足の拘束だけは解いて欲しい。逃げないから」
地上では俺が戦っていた場所以外でも熾烈な生存競争が繰り広げられていた。
俺が戦った戦場はコロシアムの中ではほんの一部。
同規模の戦闘がまだ十近くもあった。
……俺は泣く泣く物理手段だけで魔物を殲滅させられる羽目になったのである。
現在鋭意ストック作成中です。
まだ7話分くらいしか作れてないので、月一回投稿は相変わらずです。
……実を言うとこの話はしばらくスランプだったんですね。
一旦筆を止めて他を進めながら展開をどうするか考えてました。
今後の展開パターンをいくつも考えて舞台となる世界の地形とかをちゃんと考え直して、そんな事をしてたら時間がえらくかかりました。
とりあえず今考えている展開までは一気にストック作ります。
で、その内容で後から修正しなくても良さそうならペース上げて投稿したいと思います。




