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与えられた役割と、目指すべき目標


 母さんが帰ってきたので灰色の世界について聞いてみることにした。

 クロはグロッキー状態なので俺一人で話を聞いている。

 多分元気だったとしても難しい話は嫌いそうだ。


「で、結局何だったの? あの世界は? 突然現れた不気味な顔面も」


「そうね。まずは何から話したら良いかしらね。まずは私たち守護竜の役割から話しましょうか。あなたにもその力が受け継がれているみたいだから」


「守護竜?」


「言うなればこの世界の根源たる力を制御する存在ね。正しく力を導き、外敵の侵略を阻止するのが役割なの。力は単に世界に満ちているだけじゃ駄目なの。力に指向性を持たせなければ大きな力には抗えないのよ」


「外敵ってのがあの巨大な顔面?」


「そうね。あれはかつて他の世界に根付いて暮らしていた人々のなれの果て。何らかの要因で世界が滅びてしまったため無の暗闇に放り出されて変質してしまった憐れな存在。歪ながらも人の顔の姿を取っているのは、まだ当時の姿に戻りたがっているためね。彼らは自分達が元の生活を送るための場所を求めている。その場所として未だ健在なこの世界を狙っているというわけ」


 とんでもない事実が発覚したな。

 要は守護竜ってのは侵略者から世界を守っているありがたい存在であると。

 俺がゴブ生を送っていたときはその日を生き延びるだけで精一杯で世界に目を向けている余裕なんて無かったからな。ドラゴンが何してるかなんて考えたことなかったよ。


 「でも、世界を乗っ取りたいんだったら何で俺を狙ったんだ?」


 「あなたの管理者権限が目的でしょうね。守護竜ってのは言わば世界の管理者なのよ。全能とは言わないまでもある程度の管理権限を持っている。私の場合は氷を自在に操ることが出来るわ。あなたの管理領域を奪い取ればそれに近しいことが出来る。つまりこの世界の枠組みの中で力を振るうことが出来ると言うことになるのよ」


 つまり、守護竜ってのはネトゲとかで言うゲームマスターに近い立ち位置なのか?

 そしてその立場を乗っ取られたら最後、乗っ取った奴の意思が徐々に反映される世界になってしまうと言うわけだ。

 そして図らずもゲームマスターの席の一つに俺は座っていると、そういうわけだな。

 右も左も分からなくてもゲームマスターである事には変わりが無いわけだ。


 「じゃあ、あの灰色の世界は何なんだ? 母さんが来た途端に氷の世界に変わったけど」


 「氷の世界は私の管理領域。あの灰色の世界はあなたの管理領域なのよ。この世界は幾つもの管理領域が薄い膜のように折り重なって出来ているの。あの世界も紛れもなくこの世界の一部ではあるのよ。今の所は殆ど機能はしてなさそうだけど、これからの訓練次第って所かしらね」

 

 「使いこなすってどうやるんだ?」


 「一朝一夕じゃ行かないことは確かね。私が自在に氷の理を自在に制御できるようになったのは闇の領域からの侵略者と戦いはじめて千年ほど経った頃経った頃だったわ」


 「この世界を知りなさい。この世界を愛しなさい。この世界のために働きなさい。管理者の力はこの世界の根源足る力。あなたの存在が世界に認められれば自然と使いこなせるようになるわ。管理者の力とは気長に向き合いなさい」


 要はギブアンドテイクの関係か。世界から力を貰う代わりに世界のために働けよって事だな。

 世界ってのは考え得る限り一番大きな規模の単位だ。得られる力も相当なものになるのだろう。


 母さんは守護竜の戦いについて詳しく語ってくれた。

 基本的に世界には守りの弱い要の部分があるようなのだ。それが現状七つ。

 クロからも聞いたが、人間達が呼ぶところの王竜達がその要所を守っている。

 それも、気が遠くなるほどの長い時間をだ。


 しかし、その力があってようやく対抗できるあの顔面野郎はそんなにヤバイ奴なのだろうか。

 知りたくなかった事実ではある。

 もう一つ知りたくなかった事実は、俺の正体が守護竜だと言うことだ。

 話の流れ的に俺が率先して戦わないとマズいんだろうな。逃げは恐らく許されない。

 俺をはじめとする守護竜が逃げたら世界はただ蹂躙されて終わるのだろう。

 世界が滅びたら俺だって生きていけない。

 ならば戦うしかない。

 生き残るためには力を付けるしかない。


 約百回のゴブ生を送ってみて分かったのは案外俺は根気があると言うことだ。

 毎回毎回死ぬ思いで最弱を脱却しようとあがき続けた。

 弱くてニューゲーム。決して楽なゴブ生はなかった。

 その全てを諦めずに全力で生き抜いてきた。

 ならば今回も全力で生き抜くまで。

 寿命がどれくらい続くのか分からない。終わりのない戦いなのかもしれない。

 全力で生き続けた俺の生き様が、誰かの目に留まったのだろうか?

 俺は元々同じ事を繰り返してもあまり苦にならない人間だ。

 愚直に同じ事を続けることが出来る。

 もしくはそれが守護竜の選定基準なのだろうか。

 ただ、これから待ち受ける戦いには確かな意味があって。


 結局の所、扱う力の大きさが変わっただけで今も昔もやることは変わらないのだ。

 生きるために強くなる。これしかない。

 その辺の魔物に苦戦しているようじゃ駄目なんだろう?


 どうやら目標地点は随分高いところにあるらしい。

 母さんは最後にこう締めくくった。


 「いずれ世界を旅しなさい。広い世界を見て回りなさい。その中であなたはあなたの役割を見つけなさい。あなたが管理者権限という大きな力を持って生まれてきたのには何きっと意味があるはずよ。その日までは私が全力であなたたちを守り、鍛え上げます」


 どうやら、当面は母さんのしごきを覚悟することになりそうだ。


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