装備開発難航中?
私事になりますが、しばらく自宅のネット回線が止まります。
多分、明日から一週間ほど投稿できそうにありません。
気がつくといつもの窖の中だった。
灰色の世界でのことは夢だったのだろうか。
傷の治り具合から推測するに時間は殆ど経過していないように思える。
この場に母さんはいない。部下らしきドラゴンと外に出て行ったのだから当然か。
その事から鑑みてもあの灰色の世界は現実とは異なる領域だと言うことが分かる。
あの世界は多分、肉体と切り離された世界なんだろう。
言うなれば精神世界。だからこそ距離や時間があまりが関係ない。
あの世界で母さんと遭遇したのは多分そういう理屈だ。
そして、精神世界の移動距離は現実ではカウントされない。
さっきまで一緒にいたが、あくまで精神世界の話。
現実で母さんは離れた場所にいる。
母さんは精神世界から一度現実世界に戻り、その場所から帰ってこないといけないわけだ。
そういえば、いつの間にかあの熱を発する氷が消滅している。
もう少し研究しようと思っていたのに残念だ。
灰色の世界については帰ってきてから母さんに聞くことにして、今は今できることをしよう。
とりあえず、クロの様子を見に行くことにする。
「どう、調子は?」
訊ねるが、クロはぐったりとしたまま身動き一つしない。
結構危ない兆候だ。意識が飛びかけている。
とりあえずきつけ代わりに一発殴っておくことにする。
殴られたことに気づいたのかクロのうつろな目がこっちへと向いた。
何か言いたげだが、吼えるだけの体力が無いと言った状況か。
恨みがましい目でコッチを見ている。
……まぁ、生きていることが確認できたわけだし概ね問題は無いだろう。
とりあえず意識が戻ったようなので無理矢理にでも肉を喰わせておく。
体を治す材料補給を怠ると、足りない材料で体を構築しようとするから反って体が弱くなることがある。それではこの苦行の意味が無い。
ついでに俺も肉を食えるだけ食っておく。
クロの方の問題が片付いたので、母さんに洞窟の中に閉じ込められていた期間からコツコツと続けている作業の続きでもしようと思う。
その作業というのが装備の開発。
以前ハンマーを作ったけれど、何度か振り回した結果いまいち使い勝手が悪かった。
使いにくいので下の洞窟に放置されているが別段取りに行かなくてもいいかなと思っている。
だが、あのハンマーを作ったことで何の収穫もなかったわけじゃない。分かったことはある。
四足歩行だと手に持って使うような独立した構造の武器を使いこなすのは中々に難しいのだ。
持ち運ぶときは背に背負って、使うときは一度立ちあがってから両手に持つ。
走りながら抜剣できる人間と比べてしまうと、これでは非常に効率が悪い。
だから装着したまま移動できる武器がいいと考えた。
それなら走りながらノータイムで攻撃に移れる。つまり持たずに固定装着できる武器だ。
戦いは基本的に距離と考えている俺はリーチの短さから今まであまり使ったことは無い武器種だが、今世で使う武器はグローブやかぎ爪手甲等がいいのではないかと考えている。
今の所あまり上手くいっていない。
と、言うのも俺の肌をびっしりと覆う鱗がやたら頑丈なせいだ。
多分鋼程度の武器では傷一つつかないと思う。
グローブに関してだが、俺の鱗肌を超えるくらい頑丈な物を作らなくては少なくとも付ける意味が薄い。なので何度か作って制作を諦めた。
今はむしろかぎ爪手甲の作成がメイン作業としている。
防御が期待できなくても攻撃リーチが伸びることには意味がある。
コッチも中々大変だ。
手甲部分は魔物の革でかぎ爪の材料は魔物の骨にしようと思っている。
金属の方が丈夫だと思うが生憎鍛冶設備も鍛冶技術も無い。
よくよく考えてみれば殆ど原始人の生活だ。
使える材料もそれに準じるしかない。
しかし、複雑な構造をドラゴンの手で仕立て上げようとするのは中々に厳しい。
ゴブ世でを弓を作ったときよりも難航しているあたりドラゴンはゴブリンよりも不器用なのだろうか?
人間より大分不器用なゴブリンよりも酷いって相当だぞ。
確かにドラゴンがちまちま工作作業しているイメージはわかないけどさ。
不器用なことがドラゴンの一番の弱点なのかもしれない。
何回作っても上手くいかない。
真っ直ぐ並べてかぎ爪を配置できなかったり、腕にしっかり革ベルトで固定できなかったりどうしても不格好になってしまう。
ただ、少しずつ技術は上がっている気がする。
諦めなければそのうち出来るだろう。暇を見て気長にやろう。
幸い今世は寿命が長い。
並行して魔物の革を草の汁で煮込んでみたり、火で炙ってみたり強度を上げる方法を試行錯誤してみる。生憎何の知識も無いので思いつく限りの方法を総当たりだが、これで運良く革の最適な加工技術が見つかれば儲け物だ。これも成果が出るまで地道にやろう。
いずれ全身鎧の制作にも取り組んでみたい。
まだまだ先になりそうだが。
しばらく工作作業をしていると母さんが洞窟へと帰ってきた。
例の自傷訓練の傷が治りきっておらず、案の定叱られる形となった。




