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とある守護竜の話

わかりにくい話になってきたので設定を簡潔にわかりやすく挟み込む目的でこの話を投稿です。

一応補足ですが主人公の母親視点の話です。


 

 私の名はフィンクーザ。

 世界の守護竜。それが私に課せられた役割だ。

 この世界は暗闇の中に浮いてる孤独な世界。

 闇夜に浮かぶ一筋の光。


 光を求めて亡者共はこの世界に殺到してくる。

 亡者共もこの世界とは異なるが、元は世界という秩序に支配された枠組みの中にいた存在だ。

 秩序とは世界に住まう全てを闇から守護してくれる存在。

 枠組みを壊されて嘆き苦しみ、未だその枠組みが残った世界へと侵略してくる。

 彼らには既に意思はない。意思はないが光を求める本能だけはある。

 彼らは本能的にこの世界にアクセスして自分達に都合のいい秩序に書き換えようとする。

 ただし、この場所に外の世界を受け入れられるだけの容量が無い。

 そんな事をすれば受け入れた分だけこの世界の物が追い出されることになる。


 これは一種の生存競争。

 彼らの世界が滅びたのは彼らに力が無かったからだ。

 元はこの世界の回りにも世界があった。

 だが、その世界は全て闇に飲まれてしまった。

 仕方が無いことだろう。闇は強大だ。

 戦うためには強大な力がいる。

 私は闇と戦う為に神によって作り出された存在だ。

 この世界は元々七つの世界と接していた。

 よって亡者共の侵略の激しい場所はこの世界に七ヶ所存在する。

 私は霊峰の麓の森を守護地として長い事任されているが、他の六ヶ所には私と同格の存在が派遣されている。私も彼らも守護地を空けることが出来ないため、実は交流はここ最近になるまで殆ど無かった。


 神は私たちに眷族を作ってくれた。

 眷族とは私たちの力が及ばない範囲をカバーしてくれる非常に重要な存在だ。

 彼らがいるから私たちは十分な休息を取ることが出来る。

 孤独に戦い続けていては警戒しっぱなしで今まで持たなかっただろう。

 勿論、中にはその役割を嫌って自由に生きる者もいた。

 それがはぐれと呼ばれるドラゴンだ。

 彼らは世界の命運よりも彼らが生きている間だけ自由であればそれでいいのだろう。

 はぐれ竜や眷族、彼らには私たちと守護竜と違って寿命がある。

 彼らの死んだ後の世界は彼らには関係が無いこともまた事実だ。

 そういった考えもまた理解できる。

 眷族まで不老不死に出来るほど神の力は多くはなかったのだ。

 せめて生物として強い存在にすること。

 闇との戦いにおいて神が眷族にしてやれたせめてもの事だった。

 神は眷族と私たちを作ると力を使い果たして眠りについた。

 長い眠りだ。


 それから数百万年以上、気が遠くなるほどの時間私は闇の軍勢と戦い続けた。

 元々その目的のために私は作られたのだからその役割には異存は無い。


 数万年に一度、私の眷族は世代交代をする。寿命が来て親から子供にその役目を繋ぐのだ。

 私は眷族の竜とは違い、子供を作る器官を最初から持っていなかった。

 私には寿命がないため子を作る意味が無かったからだ。 

 羨ましいとは思った。だが、彼らと私では立場が違う。

 私をずっと支えてくれた眷族竜達。生まれたときから死ぬまでその生涯を私は見守ってきた。

 私にとって、彼らは子供のような存在だった。

 彼らを守るためにも私は終わりの見えない戦いに身を投じ続けた。


 そして、二百年ほど前。

 ついに神が長い眠りから覚めた。


 神は私のことをねぎらってくれた。

 力もある程度戻ったので世界を守り続けてきた礼がしたいと仰ってくれたのだ。

 だから私は無茶を承知でお願いをした。

 私も自分の子供が欲しかったのだ。

 ただし、私と子を作るには相手も同格の相手でなくてはいけなかった。

 そこで生まれて初めて私は森を離れることになった。


 私の不在を埋めてくれる存在。それに神は心当たりがあるという。

 神の力を受け入れられる器を持った人間の召喚。

 めったにいないらしいが世界を万単位で当たれば一人くらいはいると仰っていた。

 こうして私のわがままのために未だ闇の遠く及ばない遙かなる異世界から、一人の人間が呼び出されることになった。その際に神が困ったことになったと呟いていたのを覚えているが、何かあったのだろうか。


 呼び出されたのは勇者と呼ばれる神の力を持つ人間で、守護竜ほどは作るのに力はいらないそうだ。

 守護竜たる私がまだいなかった昔は彼らのような存在を大量に呼び出して闇の軍勢と戦わせていたらしい。勇者には人間同様寿命がある。限られた命だからこそ与える力が少なくてすむようだ。

 聞くに勇者という呼称は人間の間で神の力を持つ人間に勝手に送られるようになった名だそうだ。

 そして闇の軍勢を人々は魔王と呼んで恐れていたらしい。

 現在地表を徘徊している魔物と呼ばれる存在は元は普通の動物に闇が憑依し変質させたもの。

 彼らの王に見えたからこその魔王なのだろう。

 

 私が不在の間の森の守護は異世界から来たハセガワと言う名の男が埋めてくれた。

 件の勇者だ。

 ハセガワは森の守りを悲痛な面持ちで受け入れてくれた。

 せめてもの贖罪と口にしていたが何のことだろうか?

 

 私は各地を回ってこの世界の守護竜達と会った。

 そしてとりわけ気の合った黒き竜グランヴェルズと子を成すことにしたのだ。

 彼もまた長い生活の中で自分の子供が欲しいと感じ、神に願ったようなのだ。


 僅か三年。

 彼と寄り添った期間は長い生涯の中で見ると非常に短い時間だった。

 とはいえ、私の存在はこの世界から見て軽くはない。

 私にしか出来ないことはある。

 子が産まれたら顔を見せに行くと約束して私は森へと急ぎ戻った。


 ハセガワはその後、私の他の守護竜達の願いを叶えるために東奔西走する人生を送ったようだ。


 ハセガワのその後についてだが、ハセガワはこの森のすぐ側の平原の魔物を討伐し平定したようだ。

 安住の地を生涯掛けて作り出し集落を作ったのだ。

 しばらく見ないうちに立派な城や建物が並ぶ国になっていたのだから人間も中々侮れない。

 ハセガワはその仕事ぶりを評価されて最終的に私たちと同様神へ願いを叶えて貰えることになった。

 そしてハセガワが願ったのがあの聖樹と呼ばれる木だ。

 自分亡き後、子孫達が健やかに暮らせるようにとの願いを込めて植樹したそうだ。

 

 そしてその木が立派に生長する頃、私の生活にも変化が訪れた。


 夢にまで見た私の子が産まれたのだ。

 中々忙しいと思うけど、一緒にいられる時間をめい一杯使って大事にしようと思った。

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