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母さんはどうやら偉いらしい


 「……はぁ、なんで俺まで」


 クロが嫌そうに言った。


 母さん主導の下、何故か魔法の訓練が始まった。

 俺の魔力制御の下手さを見て、このまま狩りに行くのは危ないと判断したらしい。

 母さんは俺達に魔法の使い方を教えると張り切っている。


 「あなたたちが狩りで魔法を使っているのは見ました。そしてお母さんは思いました。何だか非常に無駄なことをしているなって。特にあなた!」


 母さんはビシッと指を指した。


 「え、俺?」


 「何で氷の魔法を使わないのですか? あなたの場合は一番魔力の効率が良く、発動が早いはずですよ」

 

 あ、そうなんだ。

 それと、ちょっと気になってるんだけど口調が厳しめなのは教育モードだからなのか?


 「それはわかったんだけど、ちょっといい? 俺達に名前ってないの?」


 いつまでもシロとクロじゃ味気ない。

 これだって子供どうして勝手に決めた物だし、普通親から貰うものだ。


 「それはあなたたちのお父さんに考えて貰うことになっています。後で付けて貰いに行きましょう」


 そうか。

 会ったこと無いけどそりゃ父親もいるよなぁ。

 それにしてももう四年も名前が無いまま放置されてるぞ。

 ゴブリンで例えると、既に四十歳のおっさんの年齢である。

 四十歳になってから名前を貰うとか困惑以外の何ものでもないぞ。

 結構な期間だと思うが、竜にとってはそうでも無いのか?


 「それよりも今は魔法の話です。まずは見本を見せますからね」


 母さんは俺の目の前に氷の結晶を作り出す。一個、二個、三個、四個。

 二メートルくらいの氷柱が一瞬のうちに次々と生成されていく。

 見た限り普通の氷魔法だよなぁ?


 「では、やってみて下さい」


 えっと、魔力を集めてイメージを……。

 俺が魔力を集め出すと、例の干渉魔法で制御を邪魔される。


 「お母さんはそんな無駄な事していませんよ。わざわざ自分の魔力を集めて使うよりも最初からその辺を漂っている魔力を使う方が発動が早いに決まっています」


 そんな方法あるのか!

 でも仕方ないじゃん。俺の魔法独学なんだから。


 でも、自分の魔力を使わないで周囲の魔力に干渉するってどうやるんだ? 


 「ちょっとあまりピンときていないみたいですね。なら今から言うことをしっかりと見ていて下さいね」


 言うことを見る? 今、変な日本語が聞こえてきたぞ。 


 母さんが咆哮した。

 その咆哮を聴いた瞬間、俺の脳内にイメージが浮かんだ。

 そうか、ドラゴンの会話は思念会話だからわざわざ文字に直さずイメージを直接送りつけることも出来るのか。確かにそっちの方が理解しやすいときもあるだろう。なるほど、だから見るなのか。

 俺が見えたイメージは世界。

 全てが凍りついた白銀に輝く世界。

 海や大地がどこまでも分厚い氷に閉ざされているような極寒の地。

 そして、そこに自分だけが君臨しているイメージ。

 イメージの中の俺は氷で出来た城の玉座で王冠かぶってふんぞり返っている。


 「流石は私の子ですね。一回で何か掴んだみたいですね。部下の誰もこのイメージを掴める者はいなかったんですが……」


 部下?


 俺が疑問に思っていると、洞窟の外からいくつかの羽ばたき音が聞こえてきた。

 俺がそちらを見ると、洞窟の入り口に三体のドラゴンがいるのが見えた。

 大きさは皆十メートルほど。母さんに比べると大分小さい。

 母さんは白く眩いぐらい輝く鱗だが、その三体のドラゴンは白いだけで光ってない。

 正直、羨ましい。俺の鱗も母さん譲りで反射するんだよね。

 目立ちやすいから魔物に狙われやすいっての。

 母さんが大人だとすると、彼らはまだ子供なのだろうか? 


 「クイーン。申し訳ありません。第三方面部隊を突破されました。第一、第二方面から救援を出していますが押さえるのがやっとの状況で」


 ……は?

 なんかドラゴンが軍事っぽいこと喋ってるんですけど。

 何かと軍隊規模で戦ってるの?

 いや、それよりも母さんクイーンって呼ばれてるのか。

 え? クイーンって国で一番偉い人だよね。

 もしかして母さんドラゴンの中でも偉いの?


 今のやりとりだけで俺の頭の中はパニック状態だ。

 呆然と母さん達を見ていることしか出来ない。


 「わかったわ。すぐ行く」

 

 母さんはすぐに真剣な顔つきになって部下らしきドラゴンたちの言葉に答えた。

 そして思い出したかのように俺達の方を向いた。その顔は部下に向けた物よりも優しい。

 ……あれ、そういえばいつの間にかドラゴン表情が理解できるようになってるな。


 「はーい。とりあえず今日の訓練はおしまい。ちょっとお母さんは出かけてくるからいい子にしているのよ」

 あ、訓練モードが終わったのか母さんの口調が戻った。

 するとクロが言った。


 「……魔法訓練に参加させられた割にまだ俺は何も教わってないんだが」

 

 「ごめんなさいね。多分、あなたに魔法のイメージを伝えるのは私よりもお父さんの方が向いているかも知れないわね。私は氷だけど、あの人は雷の支配者だから」


 竜言語による日本語自動変換でドラゴンじゃ無くて人に変換されているのはニュアンスかな。

 多分思念の受け手側の俺の問題だ。

 それにしても、雷の支配者とか気になる言葉が出てきたな。


 「じゃ、今度こそお母さんは出かけなきゃいけないけど、さっき伝えたイメージを掴めるように頑張るのよ。正解にたどり着くためのヒントをあげましょう」


 母さんは俺の目の前に1つの氷を作り出した。

 それから部下らしきドラゴンと慌ただしく洞窟を出て行った。


 ……なんだったんだろう?

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