難易度エクストリームなお母さんと一緒
ごめんなさい。投稿時間についてウソつきました。
19時予定でしたが、投稿できそうにないので今投稿します。
今後こんな事が無いように対策を考えました。
と、そういうわけでTwitter始めてみました。
初心者であまり使いこなせないかも知れませんが、とりあえず今度から作品をアップしたらツイートする形を取りたいと思います。時間は不定期。
一応URL
https://twitter.com/lastomu
とりあえずストックはある程度確保したので一日一回のペースの投稿は今後しばらく続ける予定です。
どうしてもアップされたらすぐ知りたいって方じゃければTwitterは全然見に来なくていいです。
拙作ですのでそんな奇特な方はあまりいないと思いますけど。
なんで、よければ夜遅くにでも覗いてみて下さい。
長文失礼しました。
「いやいやいやいや、この量は不味いって! これなんて怪獣大戦争!」
ドドドドドドッと地鳴りがする。
魔物の大軍が押し寄せて来ているのがわかる。
マイマザーめ。数匹でいいところを張り切っちゃって。
森の木々のせいで視界が悪い。いつ木々の隙間から魔物が現れるかわからないのは厄介だ。
「クロ、今のうちに魔法を使う。どうせ母さんになぎ倒される運命にある森林だ。先に倒して視界を確保しておくぞ」
「……かぁ、魔法はいまいち苦手なんだけどな。仕方ねぇか」
単純な攻撃魔法なら火か岩石弾が一番手っ取り早い。だが、木を切り倒しての視界確保には向かない。
火の場合は森林火災。
岩の場合は折角木を薙ぎ倒して除去しても結局岩という物質が残ってしまうデメリットがある。
だから俺の選ぶ物質は水。水ならそこまで視界の邪魔にならない。
それどころか水で地面がぬかるむことで迫ってくる魔物の行動を阻害できるメリットまである。
だからこそ俺が選んだ魔法はウォーターカッター。
空中の一点に莫大な運動エネルギー圧をかけ、作り出した水を高圧で飛ばす攻撃魔法だ。
現代社会では鉄材を斬るためにも使われていることもあって非常に強力だ。
俺が使う魔法の場合、地面などの地形を変形させて陥没させるよりも一から物質を作り出した方が魔力効率がよっぽどいい。
以前俺は水を物質として完成させるまで見た目は水でも魔力のままだと説明した。
だが、岩と違って水は液体である事が非常に問題だ。
それを一定量実体化させた上で尚且つこぼれること無くしばらく宙に留める方法は何か?
俺は一生懸命考えた。そして、魔力を固めて容器を作り出すことを思いついた。
空中に浮かべた不可視の丸い魔力容器に水を充填していく。
端から見ると、水球が浮いているように見えるだろう。
その一点に僅かだけ穴を空けてそこに運動エネルギーの負荷をかける。
運動エネルギーの方向に関しては条件指定を変えることで一定のアルゴリズムを持たせられる事も研究済みだ。今回の場合は首振り運動が望ましい。
一見、結構めんどくさい手順に見えるが発動自体は一瞬だ。使いにくさはそれほど感じない。
ふっふっふ。この魔法で根こそぎ木を切り倒してやる。
もし魔物が襲ってきてもついでに切り刻めて一石二鳥だ。
クロの方をちらりと見ると、クロは力に物を言わせてひたすら運動エネルギーに魔力変換していた。
俺と違って水なんかを用意しているようには見えない。
そしてその莫大なエネルギーをそのまま空中に一定方向に放つ。
ドラゴンの馬鹿魔力をひたすら空気に伝える。
その結果何が起こるかというと、突風だ。
シンプルながらに悪くない選択だと思う。
森林の向かって左側の木々を俺のウォーターカッターが切断し、右側の木々はクロの放った暴風で根こそぎ引っこ抜かれて吹き飛んでいく。
もし、あんな風力を持った台風が日本の首都を襲ったら大災害確定だな。きっと死者が数百万人出る。
……なんというか、俺の方が絵面が地味だな。
俺の方は切り株残ってるし何となく負けた気がする。
俺達が強制的に森の中に作り出した平原。
間もなく巨大な母さんがドスドス地面を踏みならすその先に小さな(俺達よりでかい)魔物の大軍がひたすら逃げ惑っている姿が見えた。既に平原に出ているのでその姿は全て浮き彫りだ。
くそ、こんなときにデッドリースパイダーの硬糸があれば最高だったのに。
こちらに走ってくるのを糸張って待っているだけで自動切断できたに違いない。
いや、そもそも森の木々を切り倒す必要も無かった。
木々の間に硬糸の結界を張るだけでいい。勝手に突っ込んで来た魔物から死んでくれる。
無いものは仕方が無い。気持ちを切り替えよう。
平地になったなら戦いようはいくらでもある。
俺の必殺魔法その2。100連ロックマシンガン!
十センチほどの岩百個に運動エネルギーを与え、放射状に打ち出す。
ただそれだけの魔法だが、威力は絶大だ。
そこら中の魔物からメキャッと何かがひしゃげる音がしてくる。
その音と同じ数だけギャアアアッと叫び声も後を追った。
クロも俺より数は少ないながらも岩の弾丸で魔物を蹴散らしている。
それで半分はつぶせた。ほぼ壊滅までいけると思ったんだけどな。予想外のタフネスだ。
だが、それでもこちらも十分に危険だと魔物達に認識を植え付けることに成功したようだ。
魔物達は俺達の方ではなく、横へと逃げようとする。
今の俺達が正面から相手取って安全に倒せる魔物は一度に一体。
もう魔物の群れとの距離も大分近づいている。だからこれでいい。
……ふぅ、何とかなったか。
そう思った瞬間、マイマザーが魔物の進路を両手で阻止。
両手で水を掬うかのような動作で魔物達を真ん中へと戻す。
……ちょっと、折角魔物が分散したのにわざわざ集めないで!
中央に集められた魔物達はどうしたかというと……?
「ほら、自暴自棄になってこっちに突っ込んできたじゃないかあああっ!」
俺は魔法オイルライン(今命名)を発動。
魔物と俺達の間を分断するように幅一メートルほどに石油を撒く。
そして、更に魔法で火を放つ。
すると石油の道が燃え上がり、炎の壁が現れた。
炎の壁に魔物達は一瞬立ち止まった。
よし、時間が稼げる……?
しかし、母さんの猛追が魔物達の停滞を許さない。
ひどいや、母さん。
魔物達は火に焼かれる事も厭わずにこちらへと突っ込んできた。
体の所々に火がついている魔物達。
燃えながらも尚勢いを増して突っ込んでくるその迫力は凄まじい。
なにこれ? 初めての狩りの練習だよね?
なんで母さんは難易度エクストリームにしたがるの?
これじゃ完全に初心者の練習どころか、プロが軍隊規模で解決するレベルだよ。
仕方がない。戦いは放棄しよう。
魔物の目的は母さんから逃げること。進路を空けてやればそれで済むはずだ。
俺とクロは目配せして撤退。
しかし、俺達が撤退した方に何故か魔物が進路を変える。
魔物の後ろをちらりと見ると、母さんが俺達の方へ魔物の進路を巧みに操っているのが見えた。
だから、母さん!
獲物を追い込もうと頑張ってくれているのはわかるけど、張り切りすぎだよ!
「ああ、もうわかったよ。全部倒せばいいんだろ!」
スパルタ教育だ。そう思おう。
俺はぎょろりと周囲の魔物を一瞥する。
そして、その中にデッドリースパイダーを見た。
群れから少し外れてやや前方に一体だけ孤立した位置にいる。
十分狙える。
よし、武器来た。これで何とかなる。
俺は突進でデッドリースパイダーに肉薄。
勢いの乗ったまま腕を振り上げ、そのまま爪を立てて一気に腹を掻っ捌いた。
そして蜘蛛糸袋を引き抜く。そしたら中に入っている液体を細く射出して糸状に加工。
俺は魔物達から急いで距離を取りながら魔力で硬糸を操作して大きく円を描く。円には三体の魔物を巻き込むができた。
そしたら後は一気に糸を縛り上げて引き抜く。
それだけで三体の魔物を上下に二分することに成功する。
硬糸は体に触れてさえいれば操ることができる。
更に糸を増やして五本。蜘蛛糸袋は空になったこれくらいまでなら意識的に操れる。
ザシュ! ザシュ! ザシュ!
円を描いては引き絞る。魔物の死体が量産できる。
一体倒すまでの使用魔力量は岩の弾丸を作るよりも圧倒的に少ない。そして圧倒的に早い。
なんかあんまりにもあっさり魔物を倒せるから楽しくなってきた。
「ふはははははっ。俺に糸を持たせたのが間違いだったな」
調子に乗ったのが間違いだったのだろうか?
硬糸に火が燃え移った。どうやら火のついた魔物の体から引火したらしい。
硬糸はあっと言う間に燃え尽きて無くなってしまった。
魔物と距離を取ろうと走りながらだったから口で五本とも咥えて操作していた。
そのせいで口元で全部引火した。
もうね、一瞬。先端から俺の口までほぼタイムラグなしに燃え上がった。
どうやら滅茶苦茶燃えやすいという弱点があったらしい。
以後、扱いには注意だな。
それでも残りは四分の一。数に直すと十五体ほど。
大分隙間ができた。
だったら一つしか撤退の方向はない。
「クロ、魔物の群れに突っ込むぞ」
「正気か?」
「母さんの方に行けば魔物も流石に逃げるしか無いだろ」
俺は魔法を発動。
使うのは荒ぶる嵐のような風をその身に纏うストームバリア。
この魔法に与える運動エネルギーのアルゴリズムは、常に俺の周囲一メートルから二メートルの範囲。
中心部は台風の目のようで快適だ。これで一気に魔物をはじき飛ばしながら突っ込む。
結構繊細な魔力操作が必要だ。
この辺はまだクロにはできないだろう。
「俺が突っ込む。少し後ろに続け!」
俺は四足歩行の全力でもう眼前まで迫った魔物の群れまで一直線。
さながらトラックになった気分で魔物達を跳ね飛ばす。
この魔法に攻撃力を期待しちゃいけない。ただ近くの物を吹っ飛ばすだけだ。
俺達は母さんの目の前までやってくる。
すると母さんは俺達を潰さないように足を止めた。
「やり過ぎだよ!」
「あら? お母さん、一生懸命沢山魔物を連れてきたんだけど?」
「限度ってものがあるよ! 目的なんだっけ? 森の魔物を殲滅することじゃないよね」
「……そ、そうね。狩りの練習よね」
マイマザーがその巨体に似合わずにしょぼんとしてしまった。
その瞬間、背後の魔物達の殺気が膨れあがった気がする。
俺と母さんのやりとりを見てどうして自分達が理不尽な目に遭ったのか本能的に理解して、イラッとでもときたのだろうか?
ギリギリギリギリッと魔物の群れの方から妙な音が聞こえてくる。
何というか逃走という生存本能を怒りが上回ったようにも見える。
命を捨ててでも俺達に一矢報いるという鉄の意志を感じる。
魔物達が一斉に飛びかかってくる。
しかし、
「あ、危ない!」
母さんが地面に平手打ちした。何の工夫も無い単純な攻撃。
それだけで魔物せんべいが十五個できた。
地面には手形のクレーターまでできている。
……それができるんなら最初からもっと間引いておいてくれよ。




