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規格外のマイマザー

突然ですが、いつも読んでくれてありがとうございます。気づけばもう二十話。マジで早かった。


やっぱり読者の方がいるとモチベーションが全然違いますね。

具体的には一話目からこの話まで毎日欠かさず投稿できるくらいには。

ここだけの話、なろうの連載小説でここまでポイントが伸びたのも感想が貰えたのも始めてのことなんですよね。励みにさせて貰ってます。




 更に一年が経過した。


 氷壁の中の魔物はもう残り少ない。

 さて、どうしたものか?


 そう思っていると、洞窟の外の方から羽ばたき音が聞こえてきた。

 そしてその音が聞こえなくなったと思ったら、


 ドガッシャアアアアアアアン!


 と氷壁を砕く音が聞こえてきた。

 久方ぶりに見る、マイマザーの姿だった。


 マイマザーは俺達に近づいてくるとビりビリと空気が震えるような凄まじい咆哮を上げた。


 「ただいまー。元気にしてたかしら。こんな狭いところに閉じ込めてごめんなさいね」


 ドラゴンの言葉を習得した俺にはその咆哮に乗った思念を読み取ることができる。

 そして、思う。

 内容が咆哮の凄まじさに全然合ってない! 発言内容が普通のお母さんじゃん!


 俺はあんぐりと口を開けていた。近くに居たクロも同様の反応だった。

 

 もしかして、ずっと母さんはこんな調子で話しかけていたつもりだったのだろうか?

 そうは全然見えなかったけどな!


 母さん(超でかい)が俺達の方に近づいてくる。

 そしてべろりとクロを舐めた。


 「うわっ。やめろ」


 「あら? 恥ずかしがっちゃって。それにしてもいつの間にか言葉を覚えたのかしら?」


 凄まじい違和感の塊だ。

 母さんの発言のたびに空気がビリビリ震えているところが特に。

 だが、会話が出来る事は既に確認済みだ。

 俺は意を決して話しかけてみる。


 「どうして俺達を閉じ込めてたんだ?」


 「ちょっと麓の森でで良くない状態が起こってね。その対応に追われていたのよ。あなたが、時々外に出ているのは知っていたから万が一にも出れないように蓋をしておけばいいかなって。ここは高いから落ちても危ないしね。飛べないうちは特に」


 麓が危険になったから頂上付近の洞窟まで運んだってことか?

 しかし、ここから落ちたら危ないって言葉が出たって事は、裏を返せば中腹の断崖から落ちても安全って事か? 中腹でも五百メートルくらいの高さがあったぞ。

 ……つくづく、ドラゴンって頑丈なんだな。


 「そうね。喋れるようになったのならそろそろ頃合いかも知れないわね。外に行って魔物を狩る練習をしましょう」


 いやいや、俺はもう狩りはやだって程経験済みだから。

 クロを見ると、同様のことを思ったのか同意するように頷いた。


 保護者同伴の狩り。

 果たしてどうなる事やら。


 会話が可能になったので、母さんはこの洞窟に来たときのように無理矢理ひっつかむような行動を取ることは無かった。両手を差し出すと、その上に乗るように促した。


 母さんに比べると俺とクロは手のひらサイズ。

 母さんにとっては俺たちはまだまだ弱い庇護対象なんだなと改めて実感する。

 その肌から感じる魔力量は俺達と比べるまでも無く多い。そして魔力の密度が濃い。

 俺もクロも大分頑張って訓練はしているが、後どれだけの努力を重ねたら母さんの居る次元まで到達するのかわからない。それくらい遠い存在だ。

 頑張れ、クロ。世界最強は限りなく遠いぞ。

 俺も負ける気は無いけどな。


 母さんは俺達を手のひらにのせたまま、麓の森へと降り立った。


 その瞬間、森の魔物達が阿鼻叫喚の叫びを上げて蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。


 ……OH。マイマザー。

 狩りの訓練に来たのに、早速魔物がいなくなっちまったよ。 


 「いい。まずは手本を見せてあげるわね。魔物はすぐ逃げてしまうの。だから、素早く追い詰めるのがコツよ」


 それ、母さんだけだと思う。

 少なくとも俺が森へと行ったときは、俺に襲いかかってくる魔物はいたぞ。

 ストーンリザードとかな。

 俺だって魔物の立場で母さんが襲ってきたら一目散に逃げ出すもん。


 母さんは森の木々を薙ぎ倒しながら突進を開始した。

 そして、間もなくぎゃーと悲しそうな魔物の悲鳴が聞こえてくる。

 ただ落ちている栗を拾うかのようなあんまりにも理不尽な狩りだった。


「どう? 参考になった?」


 なるかっ!


 俺は体当たりで木々を薙ぎ倒せない。魔物を片手で掴んだりもできない。

 俺には不可能な狩りのスタイルだ。

 母さんは……うん、この先もそのスタイルで狩りをすればいいと思うよ。

 規格外なレベルで理にかなってるから。


 しかし、どうしたものか。

 母さんが森林破壊している間に当たりから魔物の気配がしなくなってしまった。


 「……魔物がいないよ」 


 俺はぽつりと独りごちた。すると母さんは言った。


 「待っててね、ちょっと持ってくる」


 再びの森林の木々をジェノサイド。バキバキと木々が悲鳴をあげていらっしゃる。


 「森の木がなくなっちゃうよ」


 俺が率直な感想を漏らすと獲物を手にして戻ってきた母さんが答えてくれる。


 「この森は魔力が濃いから、二日もあれば木は生えてくるわ」


 ……ああ、そうなんだ。

 母さんがこのスタイルで狩りをしている割に道理で木々が枯渇しないはずだよ。

 いや、多分真相はそうじゃないな。

 今明かり方をしていれば間違いなくゴブ時代の俺は母さんの存在に気づいていたはずだ。

 だとすれば、俺がゴブ生を送っていたときに母さんはどこで狩りをしていたんだろう?

 俺が気づかなかったって事は、ここが母さんの狩り場じゃなかったと言うことになる。

 そういうわけで質問してみた。


 「う~ん、そうね。あっちの方かしら。あっちの方がここより大きな森があるのよ。魔物もここよりも大分強いかしら」


 母さんが指さしたのは森から見て霊峰を含む山脈の向こう側。俺の知らない場所だ。

 霊峰周辺の山脈にはドラゴンの巣が群生しているし、わざわざ危険を冒してまで行こうとは思わなかった。

 それに、俺はあっち側で生まれて生活した事はない。

 そう言えば氷壁の魔物に俺の見たことがない種類の魔物が多数含まれていた気がする。

 例によって神さま知識で魔物の名前だけはわかったけどね。

 ちなみに、強さランクはSとだけ浮かんだ。

 どうやらある一定以上強い魔物は全部Sとしか表示されないらしい。


 しかし、強い魔物と聞いてクロがあからさまに反応した気がする。

 それを察して母さんが釘を刺してきた。


 「山の向こうの森は行っちゃ駄目よ。まずはここで経験を積みなさい」


 母さんは捕まえてきた魔物を俺の目の前に放った。


 オーケー、マイマザー。

 だけど、その魔物もう死んでいるよ。

 

 クロも何か思うことがあったのか母さんに言った。


 「その、アンタ……いや、母さんは遠くから見ているだけにしてくれ。俺もシロも早々この辺りの魔物に後れを取ることは無い」


 母さんは少ししょぼんとした様子を見せた。

 子供に邪魔と言われて悲しんでいる様はどう見てもやっぱり普通のお母さんなんだよな。

 俺は慌ててフォローに入る。


「そ、そうだ、遠くの方から母さんは俺達の居る場所に魔物を追い込んでくれればいいよ! それで危なくなったら助けて、ね?」


 言わば、追い込み漁だ。逃げてきた魔物と俺達が戦えばいい。


「わ、わかった。じゃあ今すぐ行ってくるわね」


 母さんはホッとしたようにこの場から飛び去っていく。

 そして、数キロ先まで飛んでいくと森の木々の中へと落ちていった。 


 ギャアアアアアアアアアアアアアアッ!

 ベキベキベキベキバキッ!


 森の中に再びもたらされた地獄絵図。見えはしないが容易に想像がつく。


 そして、数十秒後に俺とクロが目にしたのは数十体の魔物から成る、逆トレインだった。



明日は1話しか投稿できません。19時台になると思います。

理由は他の作品書いてたから。タイトルはアンリミテッド・アビリティチェイン。

二十話まで書いた今だから言いますけど、この話の一話目とその話の一話目は実は投稿時間ほぼ一緒なんですよね。

実を言うと、その話と比べてポイントが伸びる方をメイン投稿にしようと考えてました。

……いやぁ、作者の予想は裏切られた。

アンリミの方が伸びると思ったのに、ほぼ誰も読んでねぇ。

ま、いいか。

鈍足でも止まっても待ってる人がいないって事だから。

気楽だ。ばんざーい。こっちに注力できるぞ。

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