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最弱(ゴブリン)生活に順応しすぎた結果、最強(ドラゴン)は堅実な努力に生きる。  作者: 秋月みのる
一章 何かがおかしいゴブリン生活
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100回目の転生。

ちょっと後の話で違和感を感じたので補足修正しました。


 ――俺は運が無い男だ。

 

 実に百回ほどの生涯を経てそう感じたんだから間違いないだろう。


 とは言え最初から俺も運が悪かったわけじゃない。最初の人生はまだまともだった。

 日本の中流家庭に生を受けた俺は特に苦労することもなく成長。

 高一の時にトラックに跳ねられ事故死するまで順風満帆な生活を送っていた。

 

 ん、あれ? 若くして死んでるからやっぱり運が無いのか?


 まあいいや。

 で、気がついたら森にいた。おまけに狼の群れに早速囲まれていた。

 俺は慌てふためいたが、何故か一緒にいたトラックの運転手は比較的落ち着いていた。

 何で落ち着いているのかな、と思ったらトラック運転手は神という存在に勇者として選ばれた存在で説明を受けたかららしい。

「俺は特別なんだ。大丈夫だ、やれる」とか聞いてもいないのにそんな事を一人呟いていた。


 いやいや。

 何でお前なんだよ! 普通轢かれた方だろ! 俺には説明も何もなかったぞ。


 はい。どうやら俺は勇者に巻き込まれたモブAとして異世界にやってきたらしい。

 そしてトラックの運転手が無双を開始した。素手にもかかわらず狼共をちぎっては投げ、ちぎっては投げと殲滅していく。例え噛みつかれても傷一つ無く平然としていた。

 もしかして俺も! 

 そう思ったが、実際そんなことは無かったぜ。俺はあっさり狼に噛まれ喰い殺されてしまった。

 トラック運転手は自分だけで手一杯だったらしく守ってくれなかったぜ。


 死後。そこで初めて神に遭遇した。

 巻き込んで済まないと謝罪された。

 お詫びに転生させてくれると言った。

 言葉が不自由だと困るだろうからと、人間の間で使われている共用言語知識を植え付けて貰った。

 これはあのトラック運転手にも与えたものらしい。


 お詫び転生キター。

 これはラノベにおいて巻き込まれと同等のチート必勝パターンだ。他には使命パターンがあるね。

 これで勝つる。俺の時代の幕開けじゃああああああっ!


 ――ゴブリンだった。


 ただのゴブリンですよ。はい。何の能力も無かった。どこがお詫びじゃコラ。

 人間の言葉が理解できる意味が無いっての!

 ゴブリンは弱いが繁殖力が高く爆発的に増えて数を維持する種族だ。個の命が安かった。

 最弱の魔物。被食者代表。三年生きれば長生きとされる。

 まともな発声器官が無い為言語を介さない。

 手先は不器用。見た目は醜悪。吐き気を催す酷い体臭。

 生後一ヶ月であっさり狼に喰われて死んだ。


 再び神に謝罪された。転生させて貰うことになった。


 ――ゴブリンだった。


 今度は成体まで生き延びた。生きるために真剣だった。魔物と戦闘すればまず負ける。

 食料は木の実狙い。肉は諦める。そもそも魔物が恐ろしくて戦う事など考えられなかった。

 安全マージンを取り過ぎた。

 結果、餓死した。


 神に謝罪された。三度転生させて貰うことになった。


 ――ゴブリンだった。


 前回の教訓を活かし、魔物との戦いを積極的に行ってみた。肉を得られるどころか肉になった。

 どうせ、死んでも神様がどうにかしてくれる。

 流石に次はゴブリンじゃないだろうという打算もあった。

 その目論見は半分だけ当たった。

 

 神に謝罪された。

 ゴブリンになりまくってることもそうだが、連続で転生した弊害で記憶が消せなくなったらしい。

 記憶が魂に深く刻まれすぎたとかなんとか。

 掃除をさぼった結果こびりついた頑固汚れのようなものなのだろうか?

 記憶を消そうとすれば最早魂ごと消すしか無いらしい。

 ここから先、神に会うことは無いが転生する度に記憶が残るようだ。

 生きるのが辛くなったら強く願えば魂を消滅させてくれると言ってくれた。

 あと、これが最後の神との遭遇になるので餞別代わりにこの世界に関する知識を少しだけ貰った。 


 ――ゴブリンだった。


 森を歩いていたらワイバーンに攫われた。頭を潰されて雛のエサになった。


 ――ゴブリンだった。


 俺は何もしていないのに女の敵と誹られ、冒険者の女性に斬られて死んだ。


 ――ゴブリンだった。


 雨で増水した川に流されてあっけなく死んだ。カナヅチだった。

 

 ――ゴブリンだった。


 無能な上司ゴブリンジェネラルに嗾けられて人間を襲ったら返り討ちで死んだ。


 ――ゴブリンだった。


 無能な上司ゴブリンジェネラルに嗾けられ、断ったら逆上されて殺された。


 ――ゴブリンだった。

 父ちゃんのかたきーと少年が棍棒握って突っ込んできた。

 涙を一杯に浮かべたその顔を見たら反撃できなくなった。

 そして俺は相手を気遣えるほど強くなかった。少年に殺された。 


 ――ゴブリンだった。


 怪しい白衣の男に薬漬けにされた。


 ――ゴブリンだった。


 農村の子供集団約二十人に遊び半分で囲まれそのままリンチにされた。


 ――ゴブリンだった。


 悲しくなってくる。もうよそう。どれもこれもロクな死に方じゃ無かった。

 尤も俺だってただ死ぬだけじゃなくて、記憶引き継ぎ活かして死ぬ度に着実に少しづつ強くはなっていったんだけどね。



 まぁ、そんなわけで俺はゴブリンとして何だかんだ百回近く生きたわけだ。


 だから次も恐らく――。


 期待はしない。

 百回目の転生。



 転生すれば大体窖で雌ゴブリンにゴブリンの幼生が集っている光景が見えるのだが……どうやら今回は違ったようだ。


 本来雌ゴブリンがいるべき場所に巨大爬虫類の顔があった。顔一つで雌ゴブリンの十倍以上は大きいんだからその全体のサイズは途轍もない。

 凶悪な顔に不釣り合いなほど美しく輝く白金の鱗。

 不思議と怖さが無かった。むしろ一種の芸術のようで神々しいとすら思えた。

 ゴブリンとしてファンタジー世界に何度も転生してきてこれほど高位の存在は初めて見た。

 良いものが見られたと思って満足しておこう。

 

 ふと、視界の端に雌ゴブリンの死体を見つけた。


 ……なるほど。こういうパターンもあるのか。

 俺の推測だと、妊娠したメスゴブリンがドラゴンのエサとして巣へと運ばれた直後、その雌ゴブリンが俺を産んだとかそんなところだろう。

 こりゃ、歴代最高に運が無い。ドラゴンの巣がスタート地点とか速攻で死亡確定だなぁ。

 この世界では弱い事は罪だ。生きることすら許されない。

 ……はぁ、いい加減ゴブリン以外に転生したいなぁ。

ドラゴンって物語だと強者として出てきますよね。それも大体悪役で。

そしてその大体が横柄な性格だったりで強くなろうと努力をしている様子が見当たらない。

いつも完成された強者として出てくる気がします。

そしてその強者を人間が努力して打ち勝つ。もしくは、油断した隙をついて倒す。

「わきまえよ、愚かな人間よ……(キーン、ドオォン、ザシュッ)……ぐああああっばかなっ」的な?

ドラゴンの巨体を小さな人間が努力して倒すことにはカタルシスが詰まっていると思います。

じゃあ、逆に油断も慢心もなくて人間以上に努力するドラゴンがいたらどうだろうか?

油断も隙もなく淡々とアサシンスタイルで敵を屠りに来るドラゴン。

毒や罠を使う事に一切の躊躇もしない。

おまけにまともに戦っても化け物じみて強い。


……そんなの嫌だなぁ。戦いたくないなぁ。


人間主役にした物語の場合ってそんな存在が現れたら詰みですよね。

だって勝てるヴィジョンが浮かばないもん。

だったらそれを主人公にしちゃえば解決。こんな具合でこの話の構想が出来ましたとさ。

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