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最弱(ゴブリン)生活に順応しすぎた結果、最強(ドラゴン)は堅実な努力に生きる。  作者: 秋月みのる
一章 何かがおかしいゴブリン生活
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巣の拡張工事?


 俺はハンマーを掲げて意気揚々とドラゴンの巣に引き上げてきた。

 接着剤も縛り紐も使っていない素材を活かした実に素晴らしい作品だ。


 さーて、ドラゴンの卵を早速破壊させて貰いますか。


 俺が卵に近づいていき、ハンマーを振りかぶったところでバッサバッサと羽音とが聞こえてきた。

 巣の主の帰還である。

 俺は慌ててハンマーを放り出した。勘ぐられないようにこっそり土魔法を使って埋めておく。

 

 そしたら後は健気なペットを演じるべく、巣の入り口までドラゴンのお出迎えである。

 

 ドラゴンはエサを持ち帰ってきた。

 今日のメニューは紫に赤の水玉模様がある蛇だった。明らかに毒々しい。

 毒々しいが出された物はしっかり食べる。

 あんまり食べたことはないけれど、多分肉は大丈夫な奴だ。

 この世界の魔物は基本的に大体食える。毒は決まった部位にしかないことが多い。

 危険且つ有用な素材は毒袋くらいかな。

 それだけ取り除いて保管しておく。

 前世の習慣で魔物毒を何種類もストックしておく癖がついている。

 毒の系統が違うのか蜘蛛毒と蛇毒では効く魔物に差が出るのだ。

 それらを使い分けて弓矢に塗りつけているだけで結構な威力を発揮する。

 基本的に毒矢で射た獲物は食べないので、あくまで護身用ではあるが。

 毒の保管法だが腐っても別に構わない。腐ったら腐ったでそれなりの効果がある。


 弓が欲しいな。使わないかも知れないけど、やっぱり使い慣れた武器があると安心感がある。

 森へ狩りに行こうか。

 でも、今日はドラゴンが巣穴にいる。

 外に出ようとすると通せんぼされるから仕方がない。


 外に出られないと巣穴の拡張工事がしたいな。

 巣の主に許可を取らないで勝手に拡張工事しても大丈夫かな。

 言葉が交わせないことがもどかしい。


 ドラゴンは時々吠えるけど、GROOOOOOOOOOOOO!とかこんな声を出されても何を言っているかわからない。ゴブリンのもゴブリンでゲギャギャとしかいえない。

 俺は九十九回ゴブリンを経験してるけど、未だにゴブリン公用語がわからない。

 一週間で子が親を忘れ、親が子を忘れるゴブリンだから仕方がないかも知れないが、あいつら絶対考えて発言していない。発音規則性がない。そもそも声帯から発生できる音が少ない。

 

 例えば、


 GAO!

 

 とか、こんな感じ。

 あれ、なんか声がおかしかったような。風邪でも引いたのかな。

 ま、いいや。

 

 会話が不可能なのでアイコンタクト。

 洞窟の改装を進めたい。

 住む場所の要塞化はサバイバルに必須だ。

 それなりでいい。あまりやり過ぎても馬鹿を見るだけだ。

 俺は一度、ゴブ生全てを捧げて要塞を築きあげたことがある。

 石を積んで壁を作り、せっせと投石器を作って設置する。

 狙撃用の壁穴を開けて弓も大量生産。

 そうやって完成させた結果……兵士が俺一人しかいなくて完全に持てあました。

 勿体ないから一度同種であるゴブリンを誘致して住まわせてみたけど、そのゴブリンは城壁から飛び出して魔物に突撃して散った。棍棒以上の道具を使う頭はないらしい。

 結局ボッチの秘密基地ごっこだった。

 食料を得るにはやはり狩りに出るしかなくて、狩りに出たところを魔物に殺された。

 黒歴史である。


 それからという物俺は洞窟に最低限の罠を設置するだけにしている。

 きっとドラゴンも広くなるなら喜んでくれるはず。


 俺は土魔法で壁を掘り始める。ドラゴンはじっと見ているだけで邪魔をしてくる気配はない。

 どうやらオッケーって事だな。

 まずは俺一人が通れる分の大きさの穴を掘り進めよう。

 これだけで大分外敵の種類を絞ることが出来る。

 俺と同じ大きさの魔物が相手ならそれ程苦労はしないはずだ。


 普段の感覚で穴を広げてみたところ、横腹が突っかかった。

 俺はどうやら普通のゴブリンよりも体が大きいらしい。

 土魔法で通路の穴の何度か大きさを調整してようやく俺一人が通れる大きさになった。


 そこから十メートル掘り進んで通路を一気に広げる。

 小さな小部屋を作る予定だ。

 古部の中央部に土魔法で穴を掘る。掘ったら表面だけ土魔法で再生しておく。単純な落とし穴だ。

 単純だが馬鹿に出来ない。落ちたところを弓で迎撃すれば安全に倒せるからな。

 

 俺は更に土魔法を発動させて壁を掘る。

 うん、何だか乗ってきたぞ。


 そう思っていたら、俺が掘り進んできた通路の方から、GAROOOOOOOOOOOOOOOOO!

 とドラゴンの鳴き声が聞こえてきた。 


 それからしばらく、ドガッ、ドガッ! と衝突音が繰り返され、その音が鳴る度に洞窟全体が打ち震えている。

 やがて、ピキピキッと音を立てて俺が掘り進んできた通路が崩落した。

 俺が唖然としていると、ザッザっとショベルカーのように巨大な手を使ってドラゴンが土砂をどけてくる。

 あっと言う間に俺の努力は無駄になり、ドラゴンの監視下生活へと戻った。


 …………無念。


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