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1ー2 自称天使現る

頭を下にしたまま、体は空中で固定されていた。例えるなら、空中で空間ごと凍り付けにされた感じだった。腕も足も、指先も、眼球さえ動かない。瞬きさえもできない。そもそも呼吸をしている感覚もない。心臓の鼓動も感じない。意識だけが空間から切り取られて、思考だけができている状態。はっきり言ってこれは普通じゃない。実はもう死んでしまって夢でも見ているのではないか、とさえ思ってしまう。が、死後の夢が死ぬ前の一瞬というのも、個人的な感覚にはなるがつまらなさすぎるだろう。


いったい何がーーー


と口に出来ない感想を思い描くと、


「驚いてるねえ」


という答えがはっきりと返ってきた。


「どうだい、びっくりしたかい?」


面白がっているように聞こえた。語尾にフフフと不審な笑い声が付いてきそうだった。小馬鹿にしたような笑みを浮かべてそうだったが、生憎と体は寸分も動かすことができないのでその顔を拝むことは出来そうもなかった。

代わりにと言っては何だが、問いかけをされてそうなので、思考で返事をしてみた。


びっくりも何も、これ普通じゃないねーーー


「割と冷静なんだね、つまらない」


思考に対して、音声による返答有り。どうやら会話なのかどうかわからないやりとりの相手は、サイコメトラーな上にテレパスであるらしい。


「残念ながらハズレかな」


どうやらサイコキノを付け加え忘れているのをご不満に思っているらしかったーーー


「超能力者じゃないからね」


総称して否定されてしまった。じゃあいったい何になるんだ、というをする前に答えは返ってきた。超能力、よりももっと現実的ではないアンサー。


「僕は天使だよ」


腕が動かないのがこれほど難儀なことはかつてこれまでになかった。頭を抱えたくてしょうがなかった。


天使?ーーー


これほど状況と口調が不釣り合いなものがあるのか。

死に逝く人間の行動を自然の理を捻じ曲げて押しとどめ、その状況を楽しそうにしている。そのような者が天使であるとはにわかに信じがたい。

だが天使はこう言った。


「君を迎えに来たんだ」


なるほど天使らしいごもっともなお言葉である。だがお亡くなりの直前に迎えに来るなんてややこしい天使だな。


迎えは死んでからにしてくれーーー


「まあ確かにごもっともだね。でも君はもう死んだも同然だよ。何せ君の体は空中浮遊の真っ最中だ。次の瞬間、君は潰れたトマトのように、その体を潰して、血のように赤い液体と新鮮な内臓のようなピンク色の肉片を撒き散らして死ぬよ?」


撒き散らすのは血液と内臓そのものだと思うのだが。まったく天使らしくないグロテスクな言い回しなことだ。

しかし、そこは突っ込みどころではないのだろう。


じゃあ死ぬ前だから死んでるのと変わらないと、だからとっととあの世に連れて行って痛い目をみなくしてやろうというご慈悲ですかーーー


「まあ確かにいま連れて行けば痛くなくて済むと思うよ。まぁどちらにせよ途中で意識はなくなるから、そのまま落ちても痛くないとは思うけど」


即死ならね、と天使は付け加えた。


「ちなみに、その答えは不正解です。僕はね、救済に来たんだよ」


またもや、天使らしからぬ発言をする者が口にするとは思えない単語を口にした。自称天使なのであっているのだろうけれど。そもそも口を開けて会話しているんだろうか。

見えないからわからない。


救済?落下する位置を低くして死なないように、あるいは高くして即死コースに変更してくれるとーーー


「そんな夢のない救いをする天使きいたことないよ」


天使が夢をみるというのも、こっちからすれば初耳だ。


「死ぬ前にチャンスを与えに来たんだ」


天使の目線が物凄く上になったような気がする。まぁ確かに人間ではないようなので、やはりもっともな気がするがどうも納得がいかない。

いやそもそもだ。


「次の瞬間転落死のこの状況で、どんなチャンスがあると?」


よくぞ聞いてくれました、とばかりの口調で天使は歌うように告げた。こんなチャンスは人生に一度足りとも存在しないから心して聞くがいい!と言っているような気がした。


「時間を巻き戻してみるかい?」


別に自称天使はどこかのスクールアイドルを推してるとか、そんなんじゃないです、偶然です

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