91 フォーレの一日 その4
「話は変わるんだけどぉ、フォーレはコーイチのことぉ、どう思ってるぅ」
おかーが唐突にぃ、おとーのことを聞いてきたぁ。
「大好きだよぉ。やさしいしぃ、あたいたちのことを大切に思ってくれているからぁ」
これで後はぁ、自分のこともしっかりできていれば言うことなしだねぇ。
「そっかぁ。ねぇフォーレ。あなたに頼みたいことがあるのぉ」
おかーがあたいにぃ? なんだろぉ。
「コーイチはやさしいけどぉ、壊れやすいところもあるのぉ。でも意地っ張りな部分もあって弱音をはかないと思ぉ。そのときはぁ、やさしく支えてあげてぇ」
首を傾げる思いで待っていたらぁ、とても重要なことを託されたのぉ。
「コーイチは根が臆病で弱虫だからぁ、察してあげるのはとっても大変だと思うんだぁ。本当はチェル様の役目なんだけどぉ、一人じゃ難しぃと思うからぁ」
おかーもわかっているんだなぁ。おとーがチェルに心を寄せていることをぉ、チェルもおとーが気になっていることをぉ。
「最後にもぉひとつぅ。コーイチの安らぎになってあげてぇ。尽くすタイプのクセにぇ、甘えんぼぉだからねぇ。気持ちに矛盾がありすぎてめんどぉだけどぉ、そこがコーイチらしいところだからぁ」
「異世界人は大変だねぇ」
余計なことを考えて育ったせいもあるんだろぉなぁ。世界が複雑そうだったもぉん。
「だねぇ。もしも男として発散したいときはぁ、いつでも受け入れる準備をしているんだけどなぁ」
「やだよぉ、おかー。おとーの子供は一人ずつだからちょうどいいのにぃ」
「あははぁ。フォーレにも嫌われちゃったかぁ」
おかーもぉ、おとーのこと大好きだもんねぇ。だから心配なんだよねぇ。大丈夫ぅ、あたいがしっかりと支えるからぁ。
地面のなかの母娘会議はぁ、今日ものんびりとしていたのぉ。
地面から養分をしっかりと吸収してからぁ、おとーの待つ地上に戻ったぁ。
みんなでおやつを食べてからは勉強の時間だねぇ。
文字はアクアとシェイぃ、それからシャインが一生懸命に覚えているんだぁ。他のみんなは捨てている感じぃ。あたいも捨てている側ぁ。
地理の勉強はなかなかおもしろいかなぁ。いろんな場所があってぇ、一度見てみたいって思うんだぁ。
ほとんどは一回だけで満足だけどねぇ。
砂漠とか何日もいたらぁ、干からびちゃうしぃ。
永住するならぁ、魔王城から北東にある森かなぁ。エルフの隠れ里みたぁい。
植物が多いならスキルが役に立ちやすいと思うしぃ、あたいでもなんとかできそぉな気がするんだよねぇ。
エルフには嫌がらせ程度のことができればいいかなぁ。
のんびりと未来計画を立てながらぁ、勉強時間をすごしたのぉ。
おとーのマイルームでぇ、アニメをアクアの隣で見るぅ。
ときどきお水をねだりながらぁ、アクアと感想を言い合うんだぁ。
ちなみにあたいはぁ、戦争ものが好きだねぇ。全体の戦術とかの勉強にもなるからぁ。
日常系はぁ、日常で間に合っているからいいやぁ。
アクアに言ったら微妙な顔でぇ、否定的な感じだったぁ。
でもしょうがないかぁ。アクアはおとーに似てぇ、根がやさしぃからぁ。
だからかなぁ。一緒にいてぇ、守りたくなっちゃうのはぁ。たとえどんなことがあってもぉ、アクアの味方でいたいなぁ。
夕食をすませたらぁ、お風呂にゆったぁり入るのぉ。
湯船って気持ちいいからぁ、つい入りっぱなしになっちゃうのぉ。
身体を洗うことを忘れていたらぁ、たまに怒られちゃうかなぁ。
でもぉ、仕方ないよねぇ。
お風呂で身体があったまった後はぁ、ベッドにダイブしておやすみするだけだねぇ。
「ねぇアクアぁ。いつか勇者と戦う日がくるよねぇ」
あたいはうつ伏せになりながらぁ、首だけアクアの方を向いたのぉ。
「そうだね。怖いなぁ。できるなら戦いたくないよぉ」
アクアは仰向け状態でぇ、首を向けてくれるぅ。青い瞳が臆病にうるんでいるよぉ。
「アクアらしいねぇ。でぇ、戦うなら何番手ぇ?」
「何番手って、戦う順番のことだよね。みんなで力を合わせちゃいけないの?」
アクアはぁ、個人で戦うことを考えてなかったみたぁい。
「いいと思うけどぉ、なんとなぁく戦うときはバラバラになりそぉな予感なんだよねぇ」
ただの思い込みだよぉ。でもぉ、協力は滅多にしない気がするぅ。
「そっか。私なら……二番手かな。一番手は怖いし、最後の方にはなりたくないもん」
アクアは視線を天井に向けてぇ、寂しく笑いながら答えたのぉ。
「でもぉ、もしも許されるなら、フォーレと一緒に戦いたいな。二人ならきっと怖くないもん」
青い瞳でぇ、まっすぐあたいを見つめたよぉ。あぁホントにぃ、アクアはかわいいなぁ。
「アクアぁ、いつまでも一緒だよぉ」
あたいは手を上げるとぉ、小指を立てたぁ。アクアはニンマリ微笑むとぉ、同じように小指を立てたのぉ。二つの小指をギュッと結ぶぅ。
「うん、約束だよフォーレ」
「指切りげんまんウソついたら針千本飲ーます。指切った」
二人でぇ、手を振りながら約束を歌ったぁ。
絶対に守られることがない約束だとぉ、直感しながらぁ。
「おやすみぃ、アクアぁ」
「おやすみ、フォーレ」
満面の笑顔が眩しかったぁ。あたいの笑顔はきっとぉ、作り物に見えたんだろぉなぁ。
ちょっと悲しく思いながらぁ、眠りについたのぉ。




