90 フォーレの一日 その3
お昼寝から目が覚めたらぁ、おとーと一緒におかーのところへ行くのぉ。今日はおかー日だからねぇ。
おとーと手を繋いでぇ、枯れた森にあるマンドラゴア畑まで行くのぉ。
「あぁ、のどが乾いたぁ。おとー、アクアのお水を出してぇ」
「いきなり無茶言うなよ。アクアのどころか、魔法の水すら出せねぇんだから」
知ってるぅ。どんな反応するか気になっただけぇ。
もうちょっとぉ、オーバーに反応したらおもしかったんだけどなぁ。呆れるだけかぁ。
おとーは苦笑いして答えるとぉ、頼りなさそうなやさしい目をしたのぉ。
何かいろいろとやろうとしているみたいなんだけどぉ、まだちょっと覚悟と自覚が足りない感じかなぁ。
「おとー」
「今度はなんだよ。しょうもない冗談や無理なことは言わないでくれよ」
「チェルとは子作りしないのぉ」
ブーっておとーが勢いよくツバをはいた。アニメでよく見る驚いた表現だねぇ。実際にやる人っていたんだぁ。
「ちょ、なっ。フォーレ?」
戸惑いながらぁ、頬を染めてあたいを見下ろすのぉ。ヤッてる想像でもしちゃったのかもぉ。
「チェルとの子供だったらぁ、弟でも妹でもうぇるかむだよぉ」
うぇるかむって言葉はぁ、某RPGに出てくるぅ、黄金城の入り口でネオンライトに光っているイメージのやつだよぉ。
「何言ってんだよフォーレは。そもそも子供が八人もいるんだぞ。いっぱいいっぱいだってーの」
繋いだ手を離してぇ、デタラメな身振り手振りをしたのぉ。壊れた機械のダンスみたいだったぁ。
「でもぉ、チェルの子供は欲しぃんでしょぉ」
壊れたダンスの動きがピキリと止まったのぉ。電源が切れたみたいにぃ。
おとーのなかではぁ、動揺があっちこっちに走って止まらないんだろぉなぁ。堂々と欲望を宣言できる覚悟をぉ、早く持ってほしいよぉ。
「いやもう、そういうのはいいから。ほら、早くマンドラゴアのところまでいくぞ。そっ、そうだ。肩車で走ってやる。きっとフォーレも楽しいと思うぜ」
あっ逃げたぁ。まだまだ時間がかかりそぉだなぁ。
「わぁ、楽しそぉ。おとー、肩車早くぅ」
ここはぁ、話を逸らされたフリをしてあげよぉ。
あたいは微動だにせずにぃ、じーっとおとーを見上げたのぉ。
「……せめてもうちょっと演技しないか。そこまで棒読みだと俺もツラいんだけど」
「やだなぁ。いつもこんな感じだよぉ」
演技は完璧なつもりだったんだけどなぁ。
バレたことを不満に思いながらぁ、おとーに肩車してもらったのぉ。
黄色い菊の花が特徴的なぁ、おかーの所まで着いたのぉ。
あたいは服が破けないよぉに脱ぎ散らかしてぇ、完全人化を解いたぁ。
服はおとーが回収してくれるからぁ、気にせずに頭の蕾だけ出して土に潜ったよぉ。
土のなかは植物の根がネットワークのように張り巡らされているのぉ。
あたいはスキル植物学者のおかげでぇ、普通の植物からも情報を取り入れることができるぅ。
おとーはよくぅ、枯れた森で独り言を漏らすのぉ。おかげでぇ、いろいろと知ることができるんだぁ。
おとーの考えていることはぁ、八割は筒抜けかなぁ。
もう一つのスキル月下美人はぁ、使いどころが難しいスキルだねぇ。
自爆系のスキルだからぁ、いざってときにしか使えないのぉ。効果もなんとなぁくわかっているんだぁ。
命を懸けるスキルだからぁ、きっと強力だと思うなぁ。
「フォーレ、家族とは仲良くやれてるぅ。この前きたアクアは元気ぃ」
おかーが根っこを通してぇ、直接語りかけてきたぁ。この会話はぁ、近くにいるおとーには聞こえないようになっているぅ。
「仲良くすごせてるよぉ。アクアも元気だねぇ。でも最近はぁ、槍の訓練で忙しいのぉ」
「あらあらぁ、寂しぃわねぇ」
人の姿だったらぁ、頬に手のひらを当てて困った仕草をしているんだろぉなぁ。
「でもぉ、おとーを支えるには必要だよぉ。あたいも薬の調合を覚えたいのぉ」
「そっかぁ。フォーレはチャレンジ精神満載だねぇ」
「戦闘面では最弱になりそぉだからねぇ。みんなそれぞれ凄いところを持ってるからぁ」
アクアはバランスがよくて水中戦に特化しているぅ。
グラスは純粋なパワーが凄ぉい。
エアの空中戦術にスピードぉ、プラスしてプロレス技に磨きをかけているぅ。
シャインは困ったほど不死身ぃ。
デッドも搦め手が得意だし力もあるぅ。
シェイは暗殺に特化していてぇ、闇という最大の武器を持っているぅ。
ヴァリーもスキルの使い方でエグイ戦い方ができるみたぁい。
対してあたいはぁ、中途半端にしか力がなぁい。月下美人を使えば最強だと思っているけどぉ、生きて戦う術がないのが難点なのぉ。
「そっかぁ。みんな強いんだねぇ。でもぉ、最弱に甘んじるつもりもないんでしょぉ」
おかーは確信をもっているかのようにぃ、挑発的に聞いてきたぁ。
「一応ねぇ。どこまでできるかはわからないけどぉ、みんなのフォローには回るつもりぃ」
「フォロー? フォーレは戦わなくていいのぉ」
「戦うけどぉ、ある程度は諦めてるよぉ。勇者と戦うのも一番手がいいかなぁ」
どんなに抗ってもぉ、みんなより強くなることはできないと思ぉ。
だったらぁ、最初から別の道に可能性を見いだした方が役に立てそぉ。
「フォーレ、もうちょっと欲張ってもぉ、バチは当たらないと思うなぁ」
「おかー、それは勘違いだよぉ。あたいの欲は、兄弟の誰よりも強いんだよぉ」
土のなかで微笑んだぁ。とびっきりに悪い顔でぇ。
あたいは直接戦うよりもぉ、参謀とかで命令する方が好きなのぉ。相手の感情を理解したうえでぇ、意のままに操るぅ。
「あたいの想像通りにぃ、事が運ぶことが何より楽しぃのぉ。うまくいかないことも多いけれどぉ、操る側として兄弟をぉ、家族を育てるのがあたいの欲だよぉ」
「まぁ、これは一本取られちゃったなぁ。さすがの娘だねぇ」
「ありがとぉ。でもぉ、アクアにだけは甘くなっちゃいそうかもぉ」
一緒にいて楽しいしぃ、お水もおいしぃ。だから操るとかの関係にはなりたくないなぁ。
「大切なお姉ぇちゃんなんだねぇ。うん、わかったぁ。フォーレはフォーレのやりたいようにやればいいよぉ」
おかーはツタを伸ばしてぁ、頭を撫でてくれたぁ。
「最初からそのつもりだよぉ。でもありがとぉ、あたいを認めてくれてぇ」
自分の欲望だからぁ、孤独な戦いになっても構わないって思っていたぁ。けどぉ、認められると嬉しいっていうかぁ、ホッとできるんだねぇ。
よぉしぃ。期待されたんだからぁ、全力でやっちゃうぞぉ。




