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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
最終章 最弱の
738/738

737 最終話 負け得た未来

 えっ、誰だろう。こんな場所に。夜遅いのもあるんだけど、ここ海の上だよ。

「はーい」

 疑問には思うんだけどとりあえず応対かな。悪い人だったら返り討ちにできる自信もあるし。

「どちら様、で」

 玄関を開けると、美しい女性が赤子を抱えて立っていたよ。

 金色のボブカットに、(ひつじ)のようにロールした黒い角。ルビーのように赤い瞳。

 懐かしい姿を確認したら、驚きのあまり出しかけていた言葉が引っ込んじゃった。

「久しぶりね、アクア。随分(ずいぶん)(さび)しそうな場所に住んでいるから(たず)ねるのに苦労をしたわ」

「チェル様。久しぶりだね。すっごく(さび)しかった。その子は」

「私の子供、女の子よ。アーケって名付けたわ。寝ているか泣いているかのどっちかで大変だわ」

 小さな身体に金の産毛(うぶげ)。肌は丸味を()びてやわらかそう。チェル様に抱かれてスヤスヤと眠っている。

「かわいい。ねぇ、()いてみてもいい」

「もちろん。まだ首が()わっていないから気をつけてね。ほらアーケ、アナタのお姉さんよ」

 眠っているアーケに語りかけながら、チェル様は大切に差し出さしてくれた。宝物のように大切に受け取りながら、新しい命を感じる。

 やわらかくて、熱くて、ずっしりと重い。小さいけれど、ちゃんと生きている。

「わぁ、わぁぁ。私がお姉さんって事は、やっぱりお父さんとの子供なの」

 問いかけると、優婉(ゆうえん)に微笑みながら頷いたよ。

「正真正銘、コーイチとの娘。アクアの妹よ」

「そっか。そっかぁ。私はアクア。あなたのお姉さんだよ。これからよろしくね、アーケ」

 私、またお姉ちゃんになったんだ。独りじゃ、なくなったんだ。

 たったそれだけなのに、なぜか涙が出てきたよ。なんでだろうね。

「タカハシ家、第九子六女なんだね」

「第十子よ」

「え?」

 チェル様の訂正(ていせい)に思わずマヌケな声を上げちゃった。

「ススキが先に男の子を産んでいるの。ヴェルダネス中でお祭り騒ぎになっているわ。コーイチの世継(よつ)ぎが産まれたのだからね。今はススキと二人で子育てに大苦戦中。なかなか難しものね。でも、楽しいわよ」

 そっか。ススキも弟を産んでくれてたんだ。ヤるなぁ。

「凄い。どんな子だろう。その内会いに行かなくちゃ。楽しみだな。どう育っていくんだろう」

 まだ見ぬ弟に期待が(ふく)らんでいく。かわいいんだろうな。

「ありがとう、アクア」

 不意にお礼を言われちゃったんだけど、なんのことだろう。首を(かし)げてしまう。

「どうして」

「あなたたちが勇者と戦ってくれたから、私は今、幸せの形を手に入れる事ができたわ。こんな風に(いと)しい人との子供を産んで、親しい人と一緒に()でる事なんて諦めていたから。感謝してもしきれないわね」

 あぁ、そっか。今ようやく結果として目の前に現れたんだ。私達タカハシ家は、無事に魔王をやりきったんだ。

「感謝なんて勿体ないよ。私達もお父さんも、チェル様の未来を守れて満足だから」

 再びアーケへ視線を落とす。

「後はアーケがどう成長していくか見守れたらばんばんざいだね。将来が楽しみだな」

 もう弟妹(ていまい)が幸せに暮らしてくれるなら、それだけでお腹いっぱいになれる。きっと賑やかに成長してくれるだろうな。

「嬉しそうね、アクア」

「嬉しいに決まってるじゃん」

「きっとコーイチもアクアへ同じ事を想ったはずよ」

 お父さんが、今の私と同じ気持ちを。

「あなたたちはコーイチに未来を願われて育ってきたの。アクアがアーケを想っているように、アクアだってコーイチに想われてきた。もちろん私だって想っているわ。だから、ツラい時には泣きに来なさいな。(むね)を貸してあげてよ」

「チェル様」

 そっか。お父さんも私の未来を想ってくれていたんだ。生きてる間に(たく)された最後の想いだもんね。いつまでもメソメソしてたら、お父さん、心配して死んでも死にきれないや。

「ありがとう」

 お礼を言いながらアーケをチェル様の腕へ返す。ムニムニと幸せそうに眠る顔を見て、チェル様と一緒に微笑んだ。

 子供に夢を見るのって、凄く心が満たされる。コレが、お父さんが討伐されてまでも(えが)きたかった未来なんだね。

 きっと人ってこうやって、夢や希望を託していくんだ。

 アーケやまだ見ぬ弟、(おい)っ子や(めい)っ子の未来を見守りながら、私も楽しく生きていこう。

 だって私も、大好きなお父さんに未来を託されたんだもん。


 日常は代わり映えしないようでいて、少しずつ変化しながら未来へと向かっていく。逆行する事も、止まる事もできずに。

 負けを重ねながら、間違いや後悔(こうかい)(あやま)ちだってたくさん体験していくと思う。人生なんて出会った分だけ確実に別れるようにできている。ソレでも、幸せを託され託しながら生きていくんだ。

 いつだってみんながみんな、未来を願われている。

 だから向かっていこう。敗北の先にある、未来へ。


 Fin

 やぁぁぁぁと終わったぁ。長かったぁ。

 一度書くのがめんどくなって失踪してたんだけど、周りの言葉に刺激されて五年越しに続きを書き始めたんだよね。

 前書いてた時とモチベーションが全然違うし、集中力もなくなってたから文章の雰囲気がガラッと変わっちゃてるんじゃないかなって思ってます。

 正直、五年のブランクはデカすぎた。

 けどもチマチマと書き続けて、無事に終わりまで辿り着けたよ。


 自分は幼い頃から王道の格闘するアニメが好きで、頭の中では自分を主人公に世界を冒険する妄想をたくさんしていました。

 異世界召喚や転移とかって単語を知らないまま、異世界で俺tueeeをやっていましたね。

 勿論今も嫌いじゃありませんよ。

 ただ大人になるにつれ、自分は主人公になれないなって悟ったんですよね。なんっていうか異世界に転移やら転生やらしてチートをもらったとしても、根は変わらないから無双もできなきゃ世界も変えれないし、恋愛だって不可能だなと。

 いつしか自分の描く物語は、主人公が異世界へ飛んだところで弱いまま進んでいくようになったんですよね。この物語も一例のひとつです。


 にしても、頭の中で動かしていた物語をいざ文にするのは難しいね。まず見合う単語が出てこなくて四苦八苦。会話が望んだ方向に行かなかったり、逆にどうでもいい繋ぎの部分で思ったより立ち止まったりと思ったようにいかないいかない。

 キャラや世界観が詰め切れていない事も承知で走り出したから、たぶん色んな矛盾点が生まれちゃってると思う。

 物語を書くって、想定外の連続なんだなと実感させられたね。

 この物語をメイン主人公にコーイチを、サブ主人公に八人の子供達を充てて進んで行きます。無論チェルとのゆっくりすぎる日常もメインに置いています。

 タカハシ家の生き様を描けてたらいいなと思う今日この頃です。

 たぶん力を入れているのキャラがここまでなんですよね。あ、アスモのおっさんとリアはしっかり力入れてたわ。

 ススキなんて物語の想定当初には居なかったし。2章のボス兼ヒロインになってもらった訳だけど、ここまで重要人物になるとは思ってもみなかったな。

 話の流れで勇者一行を登場させる訳だけど、コイツらの名前をテキトーにつけすぎたせいで全員総換えしたいと思ったほどです。強くて弱いナゾの集団のできあがり。

 まぁ話をメインキャラに戻しまして、十人もいると好きなキャラと嫌いなキャラが出てくるわけですよ。

 個人的にフォーレが一押しで、次点にシェイが入ってきますね。デッドも話を進めていく内に好きになっていきました。

 逆に嫌いなのはシャインだったね。このろくでなしはって、創造しておいて思ってしまったり。ヴァリーもワガママが過ぎて嫌いだった。想定より遙かに街壊しちゃってたし。

 ただここで好き嫌いとは別に書いてて楽しかったキャラと詰まらなかったキャラも出てくるわけですよ。

 まぁ結局フォーレは楽しかったんだけど。勝手にボケて話を脱線させるもんだからもぉ、とんでもない行動に自身で笑わせてもらいながら必死で軌道修正させていただいたね。

 で次に楽しかったのがシャインなんだよな。セリフを書いてる時に途切れないキャラだったし、おかげで長文になりやすかった。コイツが勝手にバカやってくれたから書きながら笑わせてもらったんですよね。誰だ、コレ考えたバカはと自分でツッコんだり。

 ンでつまらなかったのはグラスだったね。マジメでかっこいい武闘派でトリを飾る役目を担ってたんだけど、いかんせんマジメで堅物過ぎるせいで話が弾まなかったんだよね。強さに偏らせすぎた弊害かな。気付いたらいじられる側になっていたよ。

 ソレから個人戦の章ごとに二つ名を考えたんだけど、すんなり決まったキャラとなかなか決まらなかったキャラと半々に分れたんだよね。

 アクア・エア・フォーレ・シャインはすんなり決まってたけど、グラス・デッド・シェイ・ヴァリーはなかなかに難航したな。特にグラス。

 グラスは獣を使った二文字にしようと思ってたんだけど、結局いい案が浮かばなかったんだよね。

 デッドは最初蠱毒にして、孤独とかけようかとも思ったんだけど、よくよく考えるとコイツ全然孤独してないなって思ってシンプルにしたっけ。

 シェイも影を使った二文字を調べてて本影になったけども、たぶんもっとかっこよくて相応しい二つ名があると思う。

 ヴァリーは困った反面、シックリきた印象だったな。


 ちょっと話が逸れるけど、自分アクションゲームのロックマンが大好きなんですよね。だから何か物語を創造すると、不思議と八人という数字になりがちだったりします。

 あ、アニメの初代デジモンも好きです。アレも八人だけど、影響はロックマンの方が多いはず。

 まぁ影響受けた作品なんて挙げたらキリないんですけどね。

 脱線、終わります。


 脳内には本編で死亡したタカハシ家が日本に転生して、学生生活でわちゃわちゃする話が浮かんでいたりします。

 このメンツで今度こそ平和に日常系を過ごさせてみたい。チートなしで弱い人間の身体で暮らしていく物語。

 せっかくキャラを生み出したんだから、平和に暮らす世界戦も見てみたいって願望ですね。

 前世名デッド・シェイ・エア・シャイン・ヴァリーがひとつ年上で、フォーレ・グラス・コーイチが年下ですね。なおコーイチのみ記憶はありません。

 そしてアクアは生存しているので転生しようがありません。

 そんな設定の物語を考えてはいるんですが、まぁ書かないですね。想像の時点で終わりが見えていないので、確実に宙ぶらりんになってしまいます。

 コレは自分が物語を考える上で陥る現象なんですよね。終わりが見えないと延々と終わらないので話にならないんです。故に最初から書いて残すと言う選択肢にすら入らないんですよね。

 なおペンネームの幽霊配達員もそういった理由でおじゃんになった物語です。

 最初と終わりがシッカリと浮かんでいる物語はできたら形にして脳内から出したいって思っちゃうわけですよ。

 せっかくだからってだけの理由なんですけどね。

 でも物語というか、見せ場だけをアレコレ考えるのが好きなだけで、文を書くのは苦手なのがネックなんですよね。

 でも自分の考えた物語は自分にしか書けないからしょうがない。

 今はとりあえず疲れたけれど、またその気になったらテキトーに書きたいなと思います。


 かなり独りよがりな物語&あとがきでしたが、ここまで読んで下さりありがとうございました。

 少しでもこのキャラのここがかっこよかった、かわいかったって思って下されば光栄です。

 ではでは――

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