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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
最終章 最弱の
736/738

735 決戦を終えて

 どこまでも広がる青空に青い海。波間は穏やかで素潜(すもぐ)(りょう)をするには最適な日和(ひより)だね。

 ()りつける陽射(ひざし)しを浴びながら、小船から身を乗りだして海面を(なが)める。ブクブクと湧き上がってくる(あぶく)が多くなってくると、緋色の髪をした少年が顔を出した。

「ジュン、お魚いた」

 私の問いかけにジュンは笑みを返すと、右手の(もり)を突き上げて仕留めた魚を見せびらかした。

「たくさんいたぜ。オレの読みも大したもんだろアクア。今日は稼ぎ時だぜ」

 ジュンは私へ()った魚を渡すと、もうひと(もぐ)りしていった。

 お父さんが勇者に討伐されてから早一年。私は元侵略地のヴァッサー・ベスで(きょ)(かま)えていた。

 働かざる者食うべからずだからね。漁師(りょうし)見習いのジュンのサポートをしながら穏やかな日常を過ごしているよ。

 ホントは私が直接ポイントを決めて潜った方が確実なんだけど、どうしても()り過ぎちゃうからね。次期漁師の成長を見守る事に決めたんだ。

 ホントに平和で穏やかで、ちょっと物足りない日々が続いていく。

 たまにエリスが遊びに来て、私を連れ出してくれるのが楽しいかな。いつか長い休みを取って旅行をしようって約束も交わしてる。

 エリスは今、プラサ・プレーヌで気ままな狩人をやってる。狩り仲間からは大人気だって、うっとうしそうに話してた。新入りさんにもイロハを教える立場なんだって。

 ジャスはお父さんを討伐してからプラサ・プレーヌの国王になった。政務(せいむ)が忙しいみたい。魔王よりも書類の山の方が(はる)かに厄介(やっかい)だって。ワイズも側において平和維持のために日々奮闘(ふんとう)中らしい。

 ちなみに一番悩ませている問題が、世継ぎをどうするかなのが笑えるよね。ジャスってば、若干女性不信になっちゃってるから。普通に接する事はできるけど、(めと)るとなるとどうしても(うら)(うたが)ってしまうんだとか。

 ストレスでハゲちゃわないか心配だけど、お(えら)いさんにはなりたくないな。コレからも壊れない程度にガンバってほしいよ。

 あ、クミンはベルクヴェルクへ里帰りした。幼なじみのペトラと仲良く暮らしてるって。

 デッドと仲良かったアイポなんだけど、無事にって言ったらいいのかな、あの時シッカリ身籠(みご)もってた。デッドの娘を産んでお母さんになってたよ。

 一度見に行ったけど、かわいい(めい)っ子だったな。私七歳で伯母(おば)さんになってたよ。きっとデッドに似て生意気に育っちゃうんだろうな。楽しみのひとつだね。

 グラスと仲良かったドゥーシュもやっぱり身籠もっていて、無事に男の子を産んだって。こっちはまだ見に行けてないんだよね。当面の目標はプラサ・プレーヌへ(おい)っ子の顔を見に行く事かな。

 ただドゥーシュの方は色々とよからぬ(うわさ)が立っちゃってるんだよね。

 (いわ)く新たに聖タカハシ教とかいう宗教を発足させて、タカハシ家の偉大(いだい)さを布教(ふきょう)してるんだとか。しかも急激に成長してるみたいだし。

 なんでも私達が侵略した各地に、タカハシに魅入られた者が多くいたみたいで、成長に躍進(やくしん)をかけているんだとか。

 私達は静かに歴史へ埋もれていくつもりだったのに。大々的に残されたら困りそうな気がする。

 日本語を解読して、聖タカハシ語と名を改めて使ってるとも言ってたっけ。私だって日本語そんなに詳しくないんだけどな。

 宗教環境が変に整ってるだけに、グラスの甥っ子の性格が(ゆが)みそうで怖いよ。

 チェル様とはアレから連絡取ってないんだよね。元気にしてるかな。メッセージを使えば一発なんだろうけど、お父さんが討伐されてからチェル様のスキルを使うのはちょっと怖いんだ。

 気のゆるみひとつでチェル様が魔王になりかねないから。

 ヴェルダネスのみんなもどうなったかな。地下鉄は破壊しちゃったから簡単には行けなくなったんだよね。

 あんな物イッコクには早すぎる技術だし、いくら強固(きょうこ)に作ってもいずれは劣化(れっか)して危険になる。整備できない物は破棄(はき)するに限るからね。

 勿体(もったい)ない気持ちもあるけど、仕方ない。

 会いたいなって、水平線の向こうへ願ったよ。

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