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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
最終章 最弱の
732/738

731 イッコクの意志

「どおしたぁ、そんなしけたツラしてよぉ。魔王討伐の祈願(きがん)が果たされる瞬間なんだぜ。もっと喜べよ」

 タカハシのおっさんは死の(ふち)に追いやられてなお、魔王ぶって意地を張り続ける。

「どうしておまえは最後まで魔王なんかに(こだわ)ったんだ。ボクたちが魔王城タカハシに到達したら無様を(さら)す事ぐらい、わかっていただろうに」

 ただただ、アクアのお父さんを助けられなかったが(くや)しい。

「ケっ。最後までテメェは俺の名前を呼ばなかったな」

「すまない。何度か覚えようとしたのだけれど、すぐに忘れてしまうんだ」

 人の名前を覚えるのは、ソコまで苦手ではないはずなんだけどね。

「イッコクの神かなんかが、記憶が残らないよう阻害(そがい)でもしてるんかねぇ。まぁ、異物にゃぁ違ぇねぇかんな」

 諦めたように優しい声色が胸に刺さる。

「イッコクの神様はな、イッコクを守るための防衛(ぼうえい)システムを用意してんだ」

「急になんの話を」

「どの世界だろうが人間ってのは欲張りな生き物みたいでな、己の生活や欲を満たすために際限(さいげん)なく膨張(ぼうちょう)し続けんだよ。人間同士で争い合ったり、自然環境を犠牲に生活環境を向上させたり。そんな事をしながら人口はドンドンと増えていき、比例するようにイッコクのヒエラルキーは崩れてゆく」

 ボクの戸惑(とまど)いを無視しながら、タカハシのおっさんは話を続けていく。

「けど人間は無限に増える事なんてデキない。コップに入れられる水の量が決まっているように、イッコクに収容(しゅうよう)できる人間の数だって決まっている。ましてや強大な魔法が存在する世界だ。争いによる自然への被害(ひがい)尋常(じんじょう)じゃねぇだろ」

 ワイズの上級魔法を思い出す。強大で広範囲で殲滅(せんめつ)力が高いものもたくさんある。同時に、(えぐ)れた地面や破壊された森の数なんかも確かに多かった。

「そうやって好き勝手されてはいずれ、イッコクが人間に(こわ)されてしまう。ソレを阻止するために、イッコクは魔王を生み出す。多くなりすぎた人口を間引(まび)き、イタズラに進歩した技術を退歩させる。まぁ魔王が顕現(けんげん)したらイッコクがもう限界だって悲鳴を上げてるんだって思ってくれりゃいい」

 イッコクが、魔王を。その話が本当だとしたら、神が魔王を望んで生み出した事になるじゃないか。そんなのバカげている。

「魔王が使命を持って生まれたと同時に、勇者もまた、魔王討伐の使命を持って生まれる。勇者は魔王による人間の間引きが頃合(ころあ)いになったタイミングで討伐され、人間に平和が訪れる。自然環境が崩れ、またイッコクが悲鳴を上げるその時まで」

 イタチごっこもいいところだ。イッコクに伝わる数々の勇者と魔王の戦いが、そんな救いようのない理由で作られていては(たま)ったもんじゃない。

「そうやってアスモのおっさんも勇者に討伐される予定だったんだが、思いの(ほか)人間の欲が強くなりすぎていた。悪っていうのは人間に生まれるもんでな、イッコクどころか人間さえも滅ぼす女王が君臨(くんりん)しちまったんだ。その最終形が勇者も知っての通り、マリーって訳だ」

 勇者(ボク)をいいように懐柔(かいじゅう)し、死してなお底なしの欲望に浸かっていた暴君(ぼうくん)

「アスモのおっさんはマリーの排除(はいじょ)が間に合わなかった。魔王は一度討伐されたら次(あらわ)れるまでどうしてか時間が必要になる。だから例外に臨時(りんじ)の魔王が必要になった。順当にいったら、本来はチェルだった」

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