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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
最終章 最弱の
723/738

722 比較対象

 重厚(じゅうこう)で大きな扉は品のいい赤色で、金の装飾で縁取られ豪華さが際立(きわだ)っている。

「見ただけで特別だとわかる扉じゃねぇか。普通なら()らねぇ見栄(みえ)に金かけやがってって吐き捨てるとこなんだがな」

「魔王城の主を知った今となっちゃ、ケチをつけられないほど釣り合ってるよ。むしろ扉の方が負けているまであるねえ」

「まさに、最終決戦に相応しい扉だよ」

 ボクたちは心の中で付け加える。待ち構えているのが先程逃がしてしまった、真の魔王チェルだったのならばと。

 華奢(きゃしゃ)で小さな身体に巨大な扉は大きさこそ釣り合っていないものの、あり余る存在感が物理的な不釣り合いさを充分すぎるほどカバーしていた。

 対して記憶に残るあの冴えないおっさんはどうだろう。ダメだ、比べるのも失礼なくらい扉の方が(まさ)ってしまっている。

 ドラゴンVSゴブリン以上の差があると言っていい。

 というか本当にこの扉の向こうに待ち構えているのか。存在感どころか生命力すら感じられないのだけれど。

 緊張感とは別の意味で冷や汗が出てしまう。こんな辺境(へんきょう)の最奥まで来ておいて誰もいなかったらどうしよう。

「うん。いい感じに緊張してるねジャス。でもいつまでも扉の前で(たたず)んでるわけにはいかないよね。行こっ」

 アクアが壮絶な勘違いと期待をしてボクを促してきた。違うんだ。何も期待なんてしていないんだ。

「気持ちはわかるけどさジャス、今は何も言わずに進もう」

 エリスに心中お察ししますといった声色で(さと)されてしまった。確かに進むしかないんだけれども。

「えっと、うん。行くよみんな」

 仲間を見渡す事も返事を待つ事もせず、両開きの扉に両手を伸ばしで踏ん張りながら力を入れる。

 重い、けど動く。

 力を込めながらゆっくりと大きな扉を、人が余裕で通れるスペースがデキるまでこじ開けた。

「コレは」

 赤く幅広い絨毯(じゅうたん)()かれ、奥へと誘うように八本の立派な支柱(しちゅう)が謁見の間を支えている。

 支柱にはそれぞれ立派な魔物の姿が()られていた。まるで玉座を守る番人のように。

「ちっ、()った作りをしてくれんじゃねぇか」

「この魔物の数と種類、イヤでも彷彿(ほうふつ)とさせられるねえ」

 手前から順にスケルトンとシャドー、アラクネとユニコーン、マンドラゴアとハーピィ、マンティコアとクラーケン。タカハシ八兄弟の本来の姿だ。

「ホント、雰囲気出してくれるわ。雰囲気は」

 エリスの言うとおりだ。コレで奥にある立派な玉座に座っているのが真の魔王チェルだったのなら、たちまち圧倒的な存在感と君臨(くんりん)する威圧感に飲み込まれていただろう。

 現実は悲しいかな、場に似つかわないタカハシのおっさんが震えながらムリな笑みを浮かべていた。

 例えるなら服に着せられているような感じだ。やはりこのおっさん、つい手を差し伸べたくなる残念だけどどうしても放っておけない一般人みたいなものだ。

「来たな、俺の勇者。そんな出入り口でぼっ立ちしてないで入って来いよ。それとも足が(すく)んで動けねぇか」

 やばい。挑発(まが)いに手招きする腕がブルブルに震えているじゃないか。必死に凄んでるのがどうしてもわかってしまう。強がっているのが隠しきれていない。このおっさん、文字通り敵にならない。

 うん。やっぱり真の魔王チェルの居場所を聞き出してこのおっさんにはアクアと平和に暮らしてもらおう。

 一目見ただけで討伐しようという意志が折れてしまったよ。

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