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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
最終章 最弱の
716/738

715 突き重なる力

「溜まったね。撃ちなジャス。ワシが魔王グラスを留めてる内に」

笑止(しょうし)。俺の筋力を甘くみるな」

 魔王グラスは力尽くで羽交(はが)い締めを()(ほど)くと、クミンのボディに回し蹴りを浴びせて氷壁の奥へと吹き飛ばした。

「ゴフっ」

「クミン」

 氷壁の向こうでエリスが、エリクサーを手にクミンへと駆け寄っていく。回復は間に合いそうだけれど、援護はもう期待できないだろう。

「しかし勇者の因果律(いんがりつ)とは大したものだ。全力で必殺技の妨害を(こころ)みてなお、完成を許してしまうのだからな。だがそうでなくてはおもしろくない。力比べといこうかっ!」

 魔王グラスが腰を落とし、迎撃する体勢で待ち受ける。

 万全の状態を相手に勝負はしたくないのだけれど、頼れる武器がもう必殺技しかない。

 ならば、全身全霊(ぜんしんぜんれい)の一撃目を放ちながら即座に第ニ射を溜めるまでだ。

 決まってくれ。

「行くぞ。ブレイブ・ブレイド!」

 極限まで剣に溜め込まれた勇者の力を、剣撃(けんげき)と化して解き放つ。

「うおぉぉぉぉぉおっ。獣爪拳(じゅうそうけん)っ!」

 身体を(ひね)り、遠心力を加えて腕を全力の振り回す攻撃特化の殴り()き。

 ぶつかり合った互いの必殺技が周囲に衝撃を()き散らしながら拮抗(きっこう)を生み出す。

()し切れぇ!」

 見ているのが()れったくて()えてしまう。実戦では、気迫が敵を押し込める事だって充分あり得る。

「ぐっ」

 魔王グラスの腕が徐々(じょじょ)に押し戻されていく。このまま、このままっ。

「この根比(こんくら)べ、負けてしまってはなんのために日々鍛錬を積み重ねてきたかわからなくなるわ。今ここで、筋肉こそがパワーである事を証明してみせる。おぉぉぉぉぉおっ!」

 魔王グラスが負けじと()え、ブレイブ・ブレイドを押し返してきた。

 マズい。ブレイブ・ブレイドが霧散(むさん)させられる。

 中途半端な二発目を足しとして重ねるべきか、我慢して最後の最大チャージに希望を見出(みいだ)すべきか。

 ダメだ。どっちも勝てるビジョンが浮かばない。魔王グラスの筋肉に、押し潰されてしまう。

「まだだよ。はぁぁぁぁぁあっ!」

「アクアっ!」

 拮抗している魔王グラスへ向かって、真正面から駆け込みトライデントを突き出した。

「この状況からカジキだと。ブレイブ・ブレイドの上から重ねる気かっ。アクアぁぁぁぁあっ!」

 ブレイブ・ブレイドの真後ろからトライデントを突き(かさ)ね、アクアが獣爪拳(グラス)へ全力のケンカを売る。

(カジキ)勇魷槍(ゆうゆうそう)!」

「おっ、おぉぉぉぉぉぉおっ!」

 カジキに勇者の力を乗算(じょうざん)させた一撃が、日々積み重ねて鍛え上げられた(たくま)しい腕を吹き飛ばしたのであった。

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