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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
最終章 最弱の
714/738

713 防御力と根性

「ボクの方はもういいから、クミンも大剣を拾ってくるんだ」

 自分の大剣をほっぽってまでボクの剣を優先してくれたんだ。これ以上クミンの手を(わずら)わさせてはいけない。

「言っとくけど、ワシはもうこの戦いで大剣を拾うつもりないよ」

「クミン」

「どうせワシの大剣じゃ魔王グラスを(とら)えられないからね。わざわざ拾いに行く時間も惜しい。ソレに、撃つ気なんだろ、ブレイブ・ブレイド」

 覚悟の決まった瞳で見上げられ反論を失う。()わった目つきが(うった)えかけてくる。ボクって、わかりやすいのかな。

「クミンも知っているだろうけど、撃つまでに溜めが必要になる。大剣もなしにどう時間を稼ぐつもりだい」

「はんっ。武器なんてなくても、この肉体ひとつでいくらでも魔王グラスを足止めしてやるさ。さっ、雑談してる暇はないよ。溜めなっ!」

 ボクの回答も待たずにクミンが魔王グラスへと突っ込んでいった。

 制止しようと伸ばしかけた手を引っ込め、奥歯を噛みながら剣へ力を溜めた。否応ないクミンの覚悟、(つな)がずして何が仲間だ。

「ふっ、心意気やよし。全力で打ち砕く甲斐(かい)があるものよ」

「ドワーフの頑丈(がんじょう)さを舐めんじゃないよ。ワイズ、固くなるヤツ」

「ディフェンスマジックぅ! 死ぬなよ相棒ぉ!」

 クミンが()えてワイズが応える。防御力を上げるバフを(まと)い、待ち受ける魔王グラスへと殴り込んだ。

 小さな右の拳は、スウェーで簡単に(かわ)されてしまう。

「短く、遅く、単純。そして何より、大剣ほど動きが洗練(せんれん)されていない。素手での特攻は早計だったな!」

 開かれた右のボディに、魔王グラスの左の爪がめり込んだ。

「むっ、思ったより固いな」

「腹筋を固めてたからね。ドワーフの頑丈さに加えてバフまでかかってるんだ。油断しきった攻撃の一発くらいならいくらでも()えられるよ」

 クミンが微笑みながら、口の端から血を垂らす。

 違う。防御力なんて(ゆう)貫通(かんつう)しきっている。今魔王グラスの攻撃を(とど)めているのは、クミンの根性だ。

 クミンは(たくま)しい左腕に全身を使って組み付き、動かせないようキツく締め付ける。

「時間稼ぎなんて甘っちょろいんだよ。左腕一本、もらってくよ!」

 ギチギチと悲鳴を上げる左腕。力任せにへし折る気だ。

「くくっ。実におもしろい。俺に力でこうまで食い下がってくるとはな。ひとついい事を教えてやろう。徒手空拳(としゅくうけん)にだって使える武器は存在するのだ!」

「なっ!」

 魔王グラスは左腕を振り上げると、クミンを床に叩きつけた。鈍い音が鳴り、床が沈み、地面が揺れる。

 拘束は緩まり左腕に自由が戻る。クミンを中心に血溜まりが満ちていく。人間に比べて小さな身体が、動かない。

「ク、ミン」

 チャージが重い。まだ撃てない一撃が歯がゆい。動けないのが、ツラい。

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