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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
最終章 最弱の
708/738

707 最短最速

「魔王城タカハシへウェルカム、レディ達。旅路(たびじ)はさぞ過酷(かこく)だったであろう。ロビーから右へ行くとレストルームがあるから、まずはソコで身体を休めるといい」

 城門を潜り庭を抜け、ガラス張り両開きの自動ドアを(くぐ)って魔王城タカハシへ入ると、どこからともなく歓迎の声が響いてきた。

「なっ、この声はシャイン。まだ死にそびれてたのかい」

 もう聞く事のない声色と言い回しにクミンが声を上げて辺りを見渡す。

 シャインへ対する()()(みょう)語法(ごほう)に納得しつつ、あのシャインなら(よみがえ)ってきてもおかしくないと思い警戒をする。

「あっ、違う違う。これは事前に録音していた声だよ。自動ドアが開くとランダムで再生されるようになってるの。見てて」

 アクアが自動ドアの前まで行き再び開くと、別の声が(ひび)いてきた。

「やっほー。魔王城タカハシへようこそー。歓迎してあげるからー、まずは通路を右に行ってすぐにある休憩室へ入ってねー。盛大に歓迎しちゃうよー」

 今度はヴァリーの無邪気そうな声だった。

「つぅかなんでみんなして休憩室へ誘導しようとしてんだよ。しかもヴァリーの声で案内されっと罠な気がして仕方ねぇんだが」

 ゲンナリしながらワイズが肩を落とした。じゃあ誰の声だったら信頼できるのかと考えると、全員言葉に裏がありそうな気もする。つまり誰一人信用できない。

「残念。私も録音したんだけど流れなかったなぁ。いっそ今ここで休憩室へ誘導を(うなが)した方いいかな」

「すっごくマヌケだからやめなさい」

 未練(みれん)がましく食い下がるアクアにエリスが制止(せいし)をかけた。

「ちなみに最初は、(ぼう)コンビニの入店音を流そうとか思ってったんだよね」

「コンビニが何かは知らないけど、絶対気が抜けるからやらなくて正解よ」

 魔王城への入城ってこんなにも緊張感が霧散(むさん)するものだったっけ。いや間違いなく圧倒はされているけれど、ベクトルが違いすぎる。

「とりあえず、先へ進もう。ロビーで言い合ってても仕方がない」

 立派な内装をしていて、王都にある貴族の屋敷と比べて引けを取らない。むしろ品がいいまであるんだけど、所々見た事ない物が混じっているだよね。下手に触るのが怖い。

「そうね。アクア、案内を頼める」

「えっ、探索を楽しんだりしないの。私を含めてみんな色々と趣向(しゅこう)()らしたんだけど」

「最短で安全な順路を頼むよ」

 アクアの期待をクミンがバッサリと斬り捨てた。

「ホントに、ホントに最短安全でいいの」

「最短がいいに決まってんだろ。魔王グラスとの戦いを前に消耗(しょうもう)なんてしたくねぇ」

 念押しもワイズがバッサリ斬り捨てる。

「しょうがないね。じゃ、エレベーター使おっか」

「ちょっと待って、なんか嫌な予感するんだけど」

 エリスの呟きを残しながら、アクアは右の方にある壁へと向かっていく。ボタンを押すと、壁と思っていた場所が開かれた。

「みんな乗って乗って。エレベーターが最短安全だから」

 エレベーターとはなんぞや。みんな似たような疑問を浮かべていると確信しつつ、アクアの言うがままに乗り込む。

 箱の内側みたいな感じだ。扉が閉まり動き出すと、妙な感覚に襲われる。上へ、向かっているのだろうか。今更ながらエレベーターは一種の乗り物らしい。

「五秒もしないでグラスの待つ広間に到着するから、みんな戦う覚悟してね」

「早すぎるわよバカ。せめてコレに乗り込む前に言っときなさいって!」

 無慈悲にチーンと音が鳴り、覚悟なんてデキてないまま扉が開かれたのだった。

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