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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
最終章 最弱の
705/738

704 宝箱みたいな

「そろそろ出発しよう。ここは居心地がよすぎて、決断しないといつまでも入り(びた)ってしまいそうだ」

 ボクは立ち上がり、窓の外にある魔王城タカハシを眺めた。

「なんなら一泊ぐらい休んでもオレはよかったんだけどな」

 ワイズがどっこいしょと、重い腰を上げながら軽口を叩く。

「グダグダ言ってないで働きな。頼りにしてんだからね」

 クミンは立ち上がると、大剣を背負い直す。

「こんなタイミングじゃなかったら、アクアのアルバムをじっくり見れたのにな」

 エリスは後ろ(がみ)引かれる思いで立ち上がり、んーっと縦に伸びをした。

「あっ、ちょっと待って。ちょっと持っていきたい物があるんだ」

 アクアが出発を制止すると、パタパタと家の奥へ走っていった。思い出の品でも持ち出したいんだろうか。

 暫く物色する物音が聞こえた後で、アクアは箱を両手で持って戻ってきる。

「お待たせ、はい、コレ」

「いや箱を差し出されても。なんなのよソレ」

「フォーレ特製のエリクサーが作り置きしてあったんだ。一ダース。グラスとの戦いで必須になると思うから、みんな(ふところ)(しの)ばせておいてね」

 エリスの問いに満面の笑みで答えるアクア。気軽に差し出された超貴重な回復薬に気が引けてしまう。

「いやありがてぇけどよぉ、気軽に一ダースもドンと出てきていい代物(しろもの)じゃねぇだろ」

「しかもお手製ってところがタチ悪いね。何食わぬ顔で気軽に量産していそうだから恐ろしいよ」

「宝箱みたいな家しないでよ。つくづくタカハシ家は常識ぶっ飛んでるわね」

 ワイズがツッコみ、クミンが気付き、エリスが吐き捨てる。

 この家、探せば探しただけ諸々出てきそうで怖い。

「でもエリクサー()るでしょ」

「絶対に要るから返す言葉に困るよ」

 アクアの追撃に打ちひしがれながら、エリクサーを二本手に取る。

「もう一本持っとけジャス。勇者(おまえ)が頼りなんだからよぉ」

 ワイズが一本取って押し付けてくる。

「いや、ボクよりも撃たれ弱いワイズやエリス、前衛で傷つきやすいクミン、何よりアクアを優先すべきだろ」

「いいから三本持っときな。ワシもワイズも二本で充分だからね」

 ボクの意見をクミンが封殺する。拒否権はなさそうだ。

「決まりだね。じゃあ残る五本はエリスが持ってね」

「自分をカウントしなさいよバカ。アクアも三本に決まってるでしょ」

 すっとぼけたアクアに一喝(いっかつ)を入れながらエリスが五本取り出し、内三本を押し付ける。

「やだな。私みんなより丈夫な自信あるよ」

「いいから黙って懐にしまう。で必要な時は自分のために使いなさい。いいわね」

 エリスが睨みながら顔を近づけアクアに圧をかける。冷や汗をかきながらコクコク頷くと、納得して顔を離した。

「ははっ。今度こそ準備はできたようだし、行こう、みんな」

 号令を取ると、強い眼差しでの頷きが返ってきた。身が引き締まる。真の魔王チェルよ、首を洗って待っていろ。

「いってきまーす」

 玄関を出る際、アクアの平和な挨拶に緊張感が乱されたよ。お邪魔しましたぐらい、言った方がよかったのかな。

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