表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
最終章 最弱の
703/738

702 対になる者

「ねぇアクア。戦いが終わったら一緒に旅をするわよ」

 魔王グラスが家を出てから、真っ先にエリスが話を振った。アクアはキョトンとしてしまう。

「へっ、いきなりどうしたの」

「今度は戦いなんて考えないで、地方の景色を楽しんで、郷土(きょうど)料理を満喫して、いろんなかわいい服をたくさん着るの。約束だからね。だから、絶対に生きて帰るわよ」

「エリス。そうだね、楽しそうだね。イッコクはまだまだ広いもん」

 エリスが猛追(もうつい)するも、アクアはやんわりと(かわ)してしまう。言質(げんち)を、取らせていない。

「わかった。アクアが死んだらアタシも後を追うから」

「それはイヤだな」

「だったら生きなさい。いいわね」

「もぉ、エリスは厳しいなぁ」

 苦笑を浮かべるアクアに、エリスは一旦納得したようだ。

「いやぁ、エリスは執念(しゅうねん)(ぶけ)ぇな。ンで気になってたんだが、魔王グラスはこのコップで何がしたかったんだ」

 ワイズが茶化(ちゃか)しを入れつつ、カップを指で摘まんで観察しながら疑問を口にする。

「ワイズが選んだコップってエアのなんだよね」

「はぁ」

「ジャスはフォーレでクミンはデッド。エリスは私のだよ」

 僕が選んだコップがフォーレのか。

「コップの(くだ)りは本当に遊びだったんだね」

「デッドのねえ。飲んでから毒でも入ってるんじゃないかと心配になってきたよ」

「アタシがアクアのを選んだなら、アクアは誰のを選んだのよ」

「シェイのコップだよ」

 妙に納得したけど、仮にフォーレのコップも残っていたらどっちを選んでいたのだろうか。少し気になるな。

「にしても、なかなかいい家だね。調度類もオシャレで実用的だし、飾りも細やかだ。ん、アレは」

 棚の上で光を反射させた絵画(かいが)のような物に目が止まる。アクアが立ち上がると、手に取ってテーブルまで運んでくれた。

「写真っていうの。景色を撮って記録できる物だね。コレは家族みんなでヴァッサー・ベスに視察に行った時の写真。懐かしいなぁ、この時フォーレが海に流されちゃったんだっけ」

「なんでだろ、逆らう事なく波に攫われる姿が想像できるのは」

 アクアの思い出話にエリスが思わずゲンナリしてしまう。

 アクアは思い出話が楽しくなってきたのか、アルバムなる物を引っ張り出してきてエリスと見だした。過去を教える姿がとても微笑ましい。

 手元の写真に視線を戻す。映るタカハシ兄弟はみんな幼く、かなり露出の多い服を着ている。みんな表情が生き生きとしていて、幸せそうに笑っている。真ん中にいるのがコーイチと、その隣は。

 見覚えのある黒い角。冷ややかに微笑む女性を見た瞬間、ボクは確信を持って注視した。

「おっ、凄ぇ別嬪(べっぴん)さんがいるじゃねぇか。あまりにキレイすぎて釘付けになってぜジャス」

「ほお、珍しい反応だねえ。ジャスはこういう女性(ひと)が好みなのかい」

 ワイズとクミンが左右からからかってきたが、ソレどころではなかった。

「コイツだ」

 震えつつも、鋭い声が出る。

「コイツがタカハシ家を裏で操っている真の魔王。倒すべき、敵だ」

「なっ、マジか!」

「聞き捨てならないね!」

 ワイズとクミンも魔王の女性に注目をする。初めて見るけれどもどこか、何かの面影を感じさせられる。

「チェル様は魔王じゃないよ」

 勇者の直感を、アクアは即座に否定したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ