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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第1章 スローライフ魔王城
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69 デッドの一日 その3

 昼飯を食い終わって昼寝してから、ジジイに連れられてババアの部屋に向かう。

 一日が長ぇっていうのに、もうババアの日がきたのか。特に会う必要もねぇんだけどな。

「おいジジイ。どうにかしてババアの日をなくすことってできねぇのか」

 生意気にも前を行くジジイを見上げて提案する。ボサボサの黒髪にやる気のなさそうな顔が振り返った。

「デッドは同じことを毎回言うな。まぁ、習慣だと思って諦めろ」

 妙にやさしそうに諭すから気に食わねぇ。もうちょっとこっちの言うことも聞けっての。

「それに、アラクネにしか教えられないこともたくさんあるんだろ。種族が近いからこそ、特化して教えてもらえるってもんだ。デッドの言うババアに感謝しろよ」

 こともあろうか弱々しい手で僕の頭を撫でやがった。

「やめろ、うっとおしい。何様のつもりだジジイ」

 振り払ってやったら、はははって愉快に笑いやがった。こっちは全然おもしろくねぇっての。

 ジジイにからかわれてる気がして、すっげー不服だぜ。

耳障(みみざわ)りだジジイ。黙って歩きやがれ」

 僕が叫ぶと、余計に大きく笑いやがった。チクショーが。


 ババアの部屋に入った僕は、元の姿に戻ってクモの巣に飛び込んだ。人間の姿のままだとクモの糸を出し(にき)ぃからな。

 ジジイがズボンを破るなってうるせぇけど、知ったこっちゃねぇ。チェルに怒られるようだからザマァ見ろだ。僕をガキ扱いした罰だぜ。

 それに服を破りながら強くなるのってかっこいいだろ。怒ったときのケンシ○ウみたいでさ。服とズボンの違いがあるけど、気にしねぇ。

「キヒッ。あんたも()りないねぇ。コーイチいじりは楽しいかい」

 ババアのケツに着地すると、楽しそうに聞いてきた。

「別に。ただジジイがイジメてほしそうにしてるからさ、仕方なくイジメてやってんだよ」

「キヒヒ。そうかい。じゃあそろそろ練習しようかねぇ」

 ババアはジジイの目が届かない場所まで移動する。クモの糸が滅茶苦茶に張られて、複雑になっている空間だ。

 薄暗くて、なかに入ると下からは覗けないようになっている。

「しっかしババア。よくこんな立派な場所を作ったな」

「慣れれば簡単さ。デッドもできるようになるね。この前やったクモの糸を上手に張る練習を続けてれば、自然と素早くできるようになるさ」

 ババアのケツから、八本の足で巣の上に降りる。粘っこいのに丈夫で伸びがいい。クモの足じゃなかったら一瞬で動けなくなってんだろうな。

「ケッ、難しいことを要求すんじゃねぇか」

「泣きに入るのかい?」

 八本の長い足を器用に動かしながら、僕の手前に回り込んだ。いっぱいある赤い瞳で、挑発してきやがる。

「バカにされるのも癪っ(しゃく )てもんだ。今日も糸をやればいいのか」

「いや、今日は子グモを操る訓練だね。デッドと一緒に生まれた兄弟に命令して、手足のように自在に操れるようにするのさ」

 ギザギザの鋭い口を左右に動かしながらキヒヒと笑う。

「コーイチは勘違いしてるかもしれないけど、その子グモたちにも薄いなりにコーイチの血が流れているよ。あたいはデッドをボスになるよう調整して産んだからね」

「あぁ、どおりで。こいつらが命令通りに動くわけだ」

 僕はスキル、ガキ大将を発動させる。どこからともなく、ねんどろ○どほどの大きさをした子グモの魔物がウヨウヨと出てきた。

 数は知らないけど、百匹ぐらいはいると思う。僕が生まれたときから一緒にいて、自由自在に出し入れすることができる便利なやつだ。

「その子たちにも意思はしっかりあるよ。だから嫌なことはしたくないって思うのさ。その辺を上手くコントロールして、操れるようになりな」

「生かすも殺すも僕次第ってことか。キヒっ、いいね。上の人間になった気分だ」

「おもしろいこと言うじゃないか。一応、注意しとくよ。そいつらの命は一つだ。死んだら補充できないからね」

 何がおもしろかったのか知らねぇけど、玉数に限りがあるのはめんどくせぇな。

「しゃーねぇな。子グモをムダに使えねぇしな。聞いてやるからありがたく教えろよ、ババア」

「口数の減らないボウヤだこと」

 ババアは皮肉を楽しそうに流しながら、僕の練習に手を貸すんだった。


 練習が終わった後はおやつを食って、勉強をさせられる。

 テキトーにやりすごしたらアニメの時間だ。兄弟で戦争になることもあったりする。

 なんでもいいから四話見ると、晩飯になる。

 風呂が終わると寝る時間だ。

 僕のベッドはヴァリーと隣同士で、窓際にある。

「デッド、今日もきれいな星空だねー。窓際ベッド特権だよねー」

 頭を窓際に、仰向けでしゃべる。

「夜空はキラキラ光ってていいよな。でもさ、朝の眩しさは勘弁だぜ」

「ヴァリーちゃんも眩しいのは嫌いだなー。でもでも、犠牲を払わなきゃ夜空は見られなかったんだもん。仕方ないよー」

「だな」

 僕は別に、景色に興味なんてない。だけど、ヴァリーと一緒に見る夜空は輝いていて好きだ。

「ふふー」

 ヴァリーが寝返ると、何かを企んでるような笑顔を見せる。組んだ両手の上に顔を乗せて、足を愉快にバタつかせた。

「どうしたんだよ気持ち悪ぃ」

「へへー、内緒。今日は疲れたから寝ちゃおー。おやすみデッド」

「? まぁいいや。おやすみ」

 よくわかんねぇけど、眠くなってきたし素直に寝ることにした。


 翌朝、ヴァリーに踏まれて起こされて……怒らされてケンカになった。


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