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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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689 時間

 タカハシ家で夜食に軽くお茶漬けを頂いて、そのまま泊まる事になったわ。

 グラスが死んだ時に(そな)えての待機だったんだけどね、(さいわ)いにも生きて帰ってきてくれたからコーイチの側に来た意味がなくなっちゃった。

 まっ、ないならない方がいいんだけど。子供を失った瞬間のコーイチは、いつだって見ていられないほどだったから。

「おかげで(ひま)になっちゃったのよね。夜も遅いから寝ればいいだけなんだけど。けどグラスはよかったわけ、久しぶりに帰ってきたのにチェルにコーイチ渡しちゃって」

 開いてる部屋の布団を借りて横になりながら、なぜか同じ部屋で畳に座っているグラスへ話しかけたわ。

「もう父さんの時間も貴重だからな。明日か、明後日には父さんと勇者達との戦いが始まる。いや、戦いが終わる。なら俺なんかに構ってないで、チェル様との時間を大切にしてもらわないと」

 そっか。もうそんなにも時間が少ないんだ。少しぐらいアタシにも時間を分けてほしいって気もするけど、もうたくさんもらっちゃったからな。

 それにいい加減、チェルにも一線越えてもらわないと楽しくないわ。

「チェル様には変な薬を押し付けられた借りもあるしな。アレを持たされたせいで話が予期せぬ方向に進んでしまったし」

「薬って、まさか媚薬」

 チェルが使うと思ってたのに、グラスにあげて逃げるだなんて信じられないわ。女っ気のなさそうなグラスに渡しても宝の持ち腐れ、今予期せぬ方向に話が進んだって言った。

「えっ、まさかグラスに媚薬を使う相手がいたの」

 問いかけるとプイッと顔を(そむ)かれたわ。言えないのが答えってわけね。

 あー、確かにグラスの方が媚薬必要だったのかも。気があるのに手を付けないなんて()え切らないもの。

 ちょっと、ニマニマが止まらなくなっちゃうじゃないの。

「よっ、男前。かっこいいぞ」

「余計なお世話だ。チェルにしろススキにしろ、どうしてこの手の話題に盛り上がれるのか理解に苦しむ」

 そりゃちょっと突くとおもしろいぐらい反応が返ってくるんだもん。楽しいに決まってるじゃない。

「そんな事より、ススキはこの先どうするんだ」

 あからさますぎな話題の切り替えだけど、グラスからしたらかなり気になる部分なのかもね。少しはアタシの事、気にかけてくれてるんだ。

「どうもこうも、ヴェルダネスで暮らすだけよ。ソコ意外の生き方なんて知らないもの。ありがとう」

「ふん、ただ気になっただけだ」

 素直じゃないんだから。チェルもそうか。いい加減、コーイチに素直になるのよ。変な意地、張ってる時間なんてもうないんだから。

「ふぁーあ。いい加減眠くなってきたわ。グラスも一緒に寝る。狭いけど布団温まってるわよ」

「寝はするけど同じ布団に誘うな。一人で寝るわ」

「えー、照れなくていいのに。何もする気ないんだからさ」

 グラスはフンと鼻息を吐いて部屋から出て行ったわ。

 つれないけど、楽しい反応だったわ。うん。楽しかった。

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