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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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682 再会と訃報と

 突然(おと)れた幕切れに呆然としていると、ドゥーシュがこちらに気付いて歩み寄ってきた。ただでさえ際どい服装がズタボロに引き裂かれているせいで、視線に困ってしまう。

「お久しぶりですジャス様。ご無事ですか」

「ドゥーシュのおかげで見ての通り無事だよ。かっこ悪いところは見せてしまったけれどね」

 魔王グラスの獰猛(どうもう)な迫力に気圧されていたからね。勇者としてさぞ情けなかっただろう。

「立ち向かえるだけ、ご立派でしたよ」

「そうだろそうだろぉ。オレの事も褒めちゃってくれよドゥーシュちゃぁん。すっげぇ痛かったんだからよぉ」

 ワイズがボクの肩に肘を乗せながら馴れ馴れし態度をとる。鼻の下も思いっきり伸びているのを隠そうともしない。視線なんて釘付けだ。

「まぁ、ワイズさんも相変わらずでしてね。今も変わらずに独り身で」

 ドゥーシュがコロンと首を傾げながらワイズへ一撃必殺の問いかけを浴びせる。

「うぐっ、それは聞かないのがお約束だろぉ」

「シャンとしていればモテるのですから、もっと自重(じちょう)をなさるべきだと思います」

「ほっといてくれ」

 ワイズの(こうべ)()れる度に笑いがこぼれたよ。ドゥーシュの方が一枚上手だな。

「ご無沙汰してるねドゥーシュ。おかげで助かったよ」

「クミンさんもご無事で何よりです。大丈夫だと思いますが、後で傷口を見せて下さい」

「お願いするよ。けど情けないね、あぁも呆気なく力負けしちゃうなんてさ」

 力自慢のクミンが力負けをしたんだ。そうとうショックだったようで、(うつむ)いてしまっている。

「けど、次は負けないよ」

 と思ったけど、手を強く握って視線に力強さが宿った。

「クミンさんはお強いですね。憧れてしまいます」

「お互い様だろ」

 慈愛を込めた微笑みと負けん気の強い笑みが行き交った。この二人、意外と馬が合うんだよな。

「エリスさんもお久しぶりですね。ちょっと見ない間にすっかりキレイになって、ちょっと()けちゃうぐらいです」

「ありがとう、ドゥーシュ様」

「それで、エフィーさんはどうしたのですか。姿が見えないのですが」

 キョロキョロと見渡すドゥーシュ。胸の中が重い物で満たされるような感覚に襲われてしまう。

 そうか、ドゥーシュは知らないんだ。気まずいけれど、伝えなければ。

「おとうさんなら、死んだわ。ロンギングを襲撃された時、タカハシ家に、ね」

 言いにくいであろう事を、エリスが間髪入れずに言った。視線を地面へ落としながら。

 にしても、言葉を濁したな。直接手にかけたのはエア・タカハシだというのに、タカハシ家と。

「そんな、エフィーさんが。ツラかったですね、エリスさん」

 ドゥーシュが衝撃で目を見開きつつも、すぐにエリスを抱き締めながら背中を(さす)る。

「ドゥーシュ様」

 エリスは肩を震わせて、そこから何も言えなくなった。

 普段こそ気丈(きじょう)に振る舞っているけれど、まっすぐ思い出してしまうとやっぱりまだツラいんだ。

 ましてや死に様を直面してしまった身だ。感情の暴れようも想像できない大きさのはず。

 ボクたちだって、未だに思い出すとキツい事があるからね。

 暫くの間、エリスのために静寂を守るのだった。

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