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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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680 敗走

「うおぉぉぉぉおっ!」

 魔王グラスが青筋(あおすじ)を立てながら雄叫(おたけ)びを上げ、ブレイブ・ブレイドを力尽くで押し切ろうとしている。

 必殺技同士が、拮抗(きっこう)している。効いている。シャインの時のように、一方的に打ち消されるなんて事にはなっていない。ある、勝機が。

 この機会を逃したら勝ち目を失う。もう一発ブレイブ・ブレイドは放てるけれども、撃つチャンスを作り出せない。

 祈っている、場合じゃない。

 今なお魔王グラスは周囲に余波の衝撃を撒き散らしながらブレイブ・ブレイドを押し込めようとしている。

 一発で足りないなら、二発目を足してやる。

 続けざまの一発を放つ為、再び勇者の力を研ぎ澄まして剣へ注ぐ。

容赦(ようしゃ)がないではないか勇者よ。だが二発目を溜めるまで、一発目がモツかな。おぉぉぉおっ!」

 四肢(しし)の筋肉が膨れ上がり、ブレイブ・ブレイドが押し込まれてゆく。

「ちょっとヤバいわよ。魔王グラスの方が優勢じゃないの」

「急げジャス。ブレイブ・ブレイドが()われっぞ」

 わかっている。けども足りない。結局最後は祈るしかないのか。頼む、もうちょとだけモってくれ。

「リザレクション」

「あっ!」

「なっ!」

 全身を(さいな)む痛みがスッと抜けてゆき、力が(みなぎ)ってくる。ボクだけじゃない、ワイズもエリスも。クミンも、アクアにだってドゥーシュの回復魔法がゆき渡っている。

「女ぁぁぁあっ!」

「またとない機会です。勇者の力、存分に味わって下さいませ」

 魔王グラスのはち切れんばかりの怒号(どごう)を、ドゥーシュは涼しい微笑(びしょう)で受け止めていた。

 すまない、ドゥーシュ。ありがとう。おかげで、力がすぐに溜まったよ。

「魔王グラスぅぅぅぅうっ!」

 敵の名を叫びながら二発目のブレイブ・ブレイドを放つ。既に魔王グラスの双剣を抑えている一発目と重った瞬間、優位がひっくり返った。

「ぐっ、おぉぉぉぉぉおっ!」

 魔王グラスの踏ん張る足が、地面をめり込ませながら押し込まれていく。玉になった汗が落ちては衝撃に当てられて散っていく。

「いけぇぇぇぇえっ!」

 振り下ろさんとしている双剣が少し上がった気がする。このまま、このままっ。

「この俺がっ、力押しで負けられるかぁぁぁぁあっ!」

 魔王グラスの矜持(きょうじ)を乗せた叫びが響き渡り、ブレイブ・ブレイドを叩き切られた。双剣が地面へと振り下ろされる。

「負けた、ボクの、ブレイブ・ブレイドが」

 二重に重ねても、魔王グラスの純粋な力には及ばなかったのか。

「ちっ」

 しかし勝者のはずの魔王グラスは舌打ちをした。

 手に持っていた双剣にひび割れが走り、無残に(くだ)け散っていく。

「壊れた。双剣がブレイブ・ブレイドの威力に()えられなかったのか」

 必殺技を使い切ってようやくできたのが武器破壊か。希望は潰えたかもしれないけれど、状況は悪くない。だってボクたちは、ドゥーシュのおかげで全回復しているから。

 それに闘争心(とうそうしん)(あふ)れる魔王グラスの事だ。武器を失おうとも戦いを続けるはず。

「やめだ」

 覚悟とは裏腹に、魔王グラスは双剣の(つか)を地面へ捨てて背を向けたのだった。

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