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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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678 信じたい人を

「させるか。ドゥーシュに戦場で戦う力なんて(そな)わってないんだ。おまえに、指一本触れさせはしない」

 手のひらを地面に当て、押し出すように身体を起こそうとする。

 動く度にズキズキと痛みが走る。身体が普段より重く感じる。けど、ここで立ち上がらずして何が勇者か。

「ほぉ、まだ立ち上がる気力があるか。敬意(けいい)こそ(しめ)せはするが、いかんせん遅いな」

「ごふっ!」

 腹に重たい衝撃が響いて地面を転がる。悠々(ゆうゆう)と歩いてきた魔王グラスから雑に蹴られた。

「無様を(さら)しているのだ。(はかな)い女神に(すが)ってもいいのではないか。一度回復するまでなら攻撃を待ってやる」

「ふざけるな。回復した瞬間、真っ先にドゥーシュを襲うつもりだろう」

「当然だ。戦いにおいて回復役から潰すのは定石(じょうせき)だろう」

 やはりこの男、戦いにおいて一片(いっぺん)の容赦がない。

「ジャス様をいたぶるようなマネはやめて下さい」

 やめろドゥーシュ。口を挟むな。魔王グラスの腹の虫ひとつで(ころ)さね()ねない。

「口先では何もできんぞ。俺を止めたいのなら、その身で前線に入って見せろ。それとも、おまえは味方を信じられないか」

 魔王グラスの挑発がドゥーシュの神経を逆撫(さかな)でている。乗るな。ドゥーシュに戦場なんて相応(ふさわ)しくない。

「誰が誰を信じられないと。いいでしょう。ワタシは、ワタシの信じたい人を信じます」

 ドゥーシュが目を閉じ、手を組んで祈りのポーズを捧げる。

 魔力が集中する様を感じ、魔王グラスが獰猛(どうもう)に笑って標的を定める。

「バカな女だ。信頼など一方的でしかないものを」

「別にいいじゃない。一方的な信頼でも」

 魔王グラスの左から、意見を込めた一矢が飛来(ひらい)する。

「意外だな。おまえはもう立ち上がれないと思っていたぞ」

 左の剣で叩き切りながら感心する。

「想いに力はないのかもしれない。けどね、勇気はくれるの。力だけじゃ、勇気は生まれない」

「訳のわからん事を。コレだから女は理解できんのだ」

 苦虫を噛んだような表情で首を横に振る魔王グラス。

「何がわからないって言うんだ。人の想いを見下すのも大概(たいがい)にしろ」

 エリスが作ってくれた時間を使って、荒い息をしながら立ち上がって睨み付ける。

 ボクの剣は、くっ、遠い。

「圧倒的な力量差を前に想いが何になるというのだ。例え勇気を生もうとも、戦力を(くつがえ)すほどの力は生めまいっ!」

 魔王グラスが()え、丸腰のボクへ駆けだした。

「させない。アクアっ!」

 エリスが魔王グラスの進路を妨害しながら叫ぶ。ボクの剣の下から水が噴き出して押し上げられた。ボクの方へと飛んできたところを掴む。

「アクア」

 アクアが手のひらを伸ばしながら、ニヤリと微笑んでいた。やってくれたよ、ホント。

「小賢しいマネを。しかし剣一本持ったところでどうしようもあるまい」

「剣一本あれば充分だ。一撃で、決めてやる」

 勇者の力を()(わた)らせて剣に溜める。手加減とか、アクアの家族を奪うとか、そんな余計な事を考えてる場合じゃない。

 まずは勝たなきゃ、話はソレからだ。

 ボクは、出し(しぶ)っていたブレイブ・ブレイドを解禁した。

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