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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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676 純粋な力業

「次は、勇者との力比べをしようか」

 魔王グラスはボクに視線を向け、駆けてくる。獲物を定めた肉食獣が迫力。捕食者に狙いを()()まされたかのように、身体が気圧されてしまう。

 逃げる事が許されるなら逃げ出したい。生存本能が戦いを拒絶している。

 そんな絶望的な力量差に打ちのめされた事が、今まで何度あっただろうか。挫折(ざせつ)を味わう度に乗り越えてきただろうが。

 シッカリしろ、ボク。

「おぉぉぉぉぉぉおっ!」

 腹の底から雄叫びを上げて自らを奮い立たせ、剣先を魔王グラスに向けて待ち構える。

 恐怖に呑まれるな。防御時こそ隙はなかったけれど、攻撃時には必ず隙が生まれる。(のが)さずに(とら)えるしか、勝機はない。

「熱くなって正面からやり合おうとすんなっ。わざわざ敵の分野に合わせてやる必要なんてねぇんだ。クリエイトアイスっ!」

 ワイズがボクの前に出張ると、巨大で密度のある氷塊を作り出してグラスの進路を遮った。

「いくらバカ力でも超圧縮して作った氷塊は砕けねぇだろ。筋肉だけじゃ魔法には(かな)わねぇんだよ」

「聞き捨てならんな。いいだろう、その氷塊、正面から打ち砕いてくれよう!」

 上手い。魔王グラスにかかれば氷塊を迂回(うかい)する事なんて造作(ぞうさ)もないはず。けどもワイズが矜持(きょうじ)をくすぐった事で固執(こしつ)をさせた。

 路上を塞ぐ土砂を身を守る盾へと話術だけで進化させる。

「フンっ!」

 氷塊へ突き出された右の剣が、氷の表面に先端だけ食い込んで止まった。

「ほぉ、さすが魔法で作られた事はある。思いの外、頑丈だ」

「はっ、テメェじゃ一生かかっても砕けねぇよ。オレの勝ちだ」

 勝ち誇る事で煽りをいれ、冷静な判断を鈍らせにかかる。ワイズのペースだ。後は意固地になっている隙を突いて魔法を叩き込めば、少なくてもダメージは負わせられる。

「いい意気だ。その自身、全力で砕くに値する。はぁぁぁあぁっ!」

 魔王グラスが双剣を平行に並べたまま振り上げると、地面がえぐれるほど踏み込みながら全力で振り下ろした。

獣双剣(じゅうそうけん)っ!」

 まるで獣の牙が食い込むように並んで下ろされる双剣が、一撃で氷塊を打ち砕いた。

「うわぁぁぁぁあっ!」

 氷塊の前に立っていたワイズが、砕け散る衝撃に巻き込まれて吹き飛ばされる。

「はっ」

 砕かれた。ワイズがただ硬く丈夫に作るだけに魔力を注いだ氷塊を、一撃で。混じりけない純粋な力業で。

 並んだ双剣を振り下ろした状態で、フーと息を吐きながら見上げてくる。

 魔王グラスの後方。隙を突いて攻撃しようと近付いていたアクアが、唖然(あぜん)と立ち(すく)んでいた。

獣○剣(じゅうそうけん)、なんって恐ろしい技なの」

「ソコを伏せるな。ドラゴンシー○ーが出てくるだろうが」

 こんな緊迫した状態でツッコミを入れないでもらいたい。アクアも訳わからないボケをかまさないでほしい。

 悲しいかな、防御と常識が通じない事をわからされてしまうのだった。

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