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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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673 筋肉は裏切らない

「うおぉぉぉおっ!」

 先陣(せんじん)を切って魔王グラスへ駆ける。

 ドゥーシュがいったい何をした。あの誰にでも優しく、身を()にして負傷者を癒やし、謙虚(けんきょ)な姿勢で神に仕えていた彼女が。

 ケガをする度に眉を(ゆが)ませ、傷を癒してくれた。心許(こころもと)ないからとボクに新たな回復魔法を享受(きょうじゅ)してくれた。常に動向を気がかりにし、共に旅できない事を悔やんでくれた。

 一緒に旅する事は叶わなかったけど、(まぎ)れもなくボクたちの仲間だった。

 そんなドゥーシュが、鎖に繋がれ一方的に(なぶ)られていただなんて許されるものか。

愚直(ぐちょく)だが想いが剣に乗っている。ならば、真正面から受け止めねば失礼だろう」

 走る勢いを乗せた渾身のジャンプ斬りを、グラスは真正面から防御をした。

「何っ!」

 防がれた、まではいい。問題は右の剣一本で、走る勢いとボクの体重を乗せた一撃を容易(たやす)く受け止められた事だ。しかも微動(びどう)だにしていない。

「心意気はいいが、少々パワーが足りんなっ!」

 あろう事か右の剣をそのまま払う事で押し返されてしまう。どんな膂力(りょりょく)をしているんだ。

「ボサッとしてる場合じゃないよ。挟撃(きょうげき)して隙をつくるからね」

「クミン」

 クミンが回り込みながら駆け、魔王グラスを挟み撃ちにする形をとる。息を合わせて同時に剣を振るい、双剣による防御の突破を(こころ)みる。

 クミンが大剣のリーチを生かした回転斬りを、ボクが一歩間合いに踏み込んだ袈裟(けさ)斬りを放つ。

「ほぅ、いい連携(れんけい)だ。折角パーティを相手してるんだ。そういうのも味わわなければおもしろくないっ!」

 野性味あふれる強者の笑み。頭の中の辞書に回避という言葉が記載していないかのように、一心に受けを選択する。

 いくら力に自信があるとはいえ、それは傲慢(ごうまん)だろう。

 人間(ボク)の袈裟斬りはまだしも、ドワーフ(クミン)の大剣から放たれる回転斬りを片手で受け止められるものか。

 キンっと剣のぶつかる音が二つ鳴り、グラスは双方の攻撃を受け止めきった。

「なっ、冗談だろう」

「どこまでバカ力なんだい」

 右手でボクの剣を受け止めながら、左逆手でクミンの回転斬りを止めた。

 まさに不動の筋肉。

「なかなかに重い攻撃だが、俺を動かすにはもう一踏ん張り足りないな」

「なら、コレならどうだよっ!」

 ボクたちが硬直しているところへ、ワイズが遠くから三種の魔法を同時に放った。火・氷・風の魔法が絡み合うように踊りながら迫る。

 ボクたちはギリギリまで引きつけてから、魔王グラスから離れる。

「へっ、食らいやがれ」

 逃げるタイミングは完全に殺した。魔法が当たる。

小賢(こざか)しく、そしてぬるいっ!」

 魔王グラスは右の剣で氷魔法を貫き、左の剣を振るって炎と風の魔法を斬り裂いた。

「はぁ、魔法を斬ってんじゃねぇよ。頭おかしいだろ」

「脳筋と褒めてくれていいぞ。筋肉に(まさ)る攻撃も防御も存在しないのだからな」

 全て正攻法の攻防だというのにムチャクチャだ。

 アクアが魔王グラスを最強と(うた)っていた理由を、開幕早々に思い知らされた。

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