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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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669 獣に支配されし街

 負傷者(ふしょうしゃ)の回復を()り交ぜつつ、警戒しながら進行していると何事もなく森を抜けた。

 開けた草原の向こうに、立派な外壁を眺められる。

「丈夫そうな外壁じゃないか。本来なら、街の住人たちは守られていたのだろうな」

「けど、魔王グラスに侵略されている。つまり、あの堅牢(けんろう)な外壁が意味を成さないほど強大な力を持っているって事よね」

 ボクが睨み付けながら感想を漏らすと、エリスが真剣な面持ちで続きを口にした。

 やはり油断ならない。まだ距離があるというのに身体に力が入ってしまう。

「うーん。ホント立派な外壁だなぁ。どうしてだろぉ。コレは本気でザコ戦を考えた方がいいかも」

 アクアだけは苦い表情を作り、腕を組みながら首を傾げていた。外壁が立派な事とザコ戦の予感がどう繋がるのかが疑問だ。

 馬車の負傷者に回復魔法をかけ直してから草原の進行を開始する。

 ワイズもクミンも傷は完全に癒えているけど、念のためギリギリまで馬車で休んでもらう事にした。

 優しい風がそよぎ、草を揺らしては青い匂いを運んでくる。

 戦場へ(おもむ)いているのがウソのように思える静けさ。けれども向かう先には確実に魔王グラスが待ち構えている。押し潰すほどの強い気配がわかってしまう。

 近付くにつれ強張(こわば)る身体を奮い立たせながら、一歩ずつ向かっていく。

 やがて辿り着いた外壁は門が開いていて、中には立派な街並みが見受けられる。

「へぇ、いい街じゃないの。住みやすそうだし、見た感じ清潔(せいけつ)ね」

「お店も揃っているようだし、腹に(うった)えかけてくるいい匂いも(ただよ)っている。ひょっとすると魔王グラスは、アクアの懸念通りの侵略をしていたのかもしれないな」

 拍子抜けとは思いつつも、平和そうな街並みにボクはホッと気を緩めたよ。

 最悪、もっと荒れ果て死の気配が漂っている可能性も考えていたからね。

 思わず顔が(ゆる)んでしまった。エリスも気が抜けたようで楽しそうに街並みを見渡していた。

「あちゃー。やってくれちゃったなーグラス。ある意味、地獄だよぉ」

 アクアだけがキョロキョロしながら残念がっていた。期待が外れていたとはいえ、地獄とは言いすぎじゃないか。

「不満ばっかねアクアは。視点が違うと見え方も変わっちゃうわけ」

「まぁね。そろそろ襲われると思うから、覚悟だけしといてね」

「襲われる。魔物の気配もなければ魔王グラスの気配もまだ遠いというのにかい」

 一体アクアは何に恐れているんだろう。いっそ魔王グラスを恐れていてくれた方がわかりやすいのに。

「かかれぇ!」

「何っ!」

 思考を遮る号令と共に、屋根の上から何者かが襲いかかってきた。的の気配に気付かなかった。

 とっさに剣を抜き、振り下ろされる棒状の何かを受け止め、驚愕する。

「なっ、人だと」

 やけに筋肉質の男からの奇襲に困惑してしまう。どうして人間が勇者(ボク)たちを襲うんだ。

「くっ」

 ケガをさせぬように押し返すと、着地に失敗して転んでしまう。あまり戦いに馴れていない。

「ちょっと、どういう事よ。何で街の人間に囲われなきゃいけないのよ」

 エリスの叫びで周囲を見渡して、筋肉質の住民達に包囲されている事に気づいた。

 強くはない。気配を感じられぬほどの弱さだ。けど。

「侵略地で人間と仲良くしすぎた代償だね。グラスも予想外だったと思うよ。どうする、感じている通りザコ共だけど、一掃する」

 アクアは人間からの襲撃を予測していたように、ボクたちへと問いかけた。

 一掃、プラサ・プレーヌに住む一般人を。できるはずがない。

 ボクはアクアの言う厄介なザコ共に()(すべ)がなかった。

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