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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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668 支配下の正しい姿

 ワイズを(ふく)む全員に回復魔法をかけてから、ゆっくりと森の進行を再開する。

 アクアが言うには獣共は全滅しているようだけれど、警戒するに()した事がないのがゆっくりと進む理由の一点。

 もう一点は時間をかけながら持続して、負傷者に回復魔法をかけていきたいからだ。

 ボクの使える回復魔法はキュア・ブレイブを除いて即効性に欠けている。後に魔王グラスとの戦いが控えている状態で、()に二回しか使えな切り札を切るわけにもいかない。

 馬車の外を歩くのはボクにエリス、そしてアクアの三人。

 ワイズは勿論、クミンも負傷したので馬車で休んでもらっている。数少ない精鋭達も同様だ。

「それにしてもいい空気だよね。このまま森林浴(しんりんよく)でもする」

「アクアは空気を吸うよりも、空気を読む事を重視した方がいいと思うわよ。何しに来てるかちゃんと自覚してるの」

 緊張感のないアクアに、エリスがジト目で視線を送る。

 緊張感がない事には同意だけれど、前線に出ておいてアクアが戦わないという選択もしないだろうから口を(つぐ)んでおく。

「グラスと戦いに行くんでしょ。当然覚えてるよ。ただね、ちょっと森の平和さが気になってるんだよね」

「どこが平和だったのよ。アクアには実感なかったかもだけれど、獣共を相手にかなりの死闘(しとう)(えん)じてたじゃないの」

 同感だ。(はげ)しい戦いだったし、仲間に死人も出た。とても平和なんて言葉を擁護(ようご)できない出来事がだった。

「エリスの言いたい事もわかるよ。けどね、森にしては道が整いすぎてるんだよね。馬車、普通に通れてるし。この森も一応グラスの支配地だよ」

 そういえば森を急ぐのに不自由していないな。支配どうこう関係なく、もっと進みにくいのが普通だ。

 エリスも不自然さを理解したようで言い(よど)んでいる。

「私達タカハシ家はこれでも侵略をしていたんだからね。そういう意味ではヴァリーが一番正しい姿をしていたんだよ。まぁ、やりすぎではあったけども」

 崩壊していたハード・ウォールの悲惨さを思い出し、不覚にも納得させられてしまう。魔物に襲われた姿としては、間違いなく正しい状態だった。

「グラスがちゃんと侵略をできているかタカハシ家としてちょっと不安なんだよね。戦いに関しては誰にも引けを取らないけれど、正々堂々って感じで蹂躙(じゅうりん)とは無縁(むえん)だから」

 非情に返答に困る会話内容なだけにどう返していいかわからない。

 一応ボク勇者だからね。その手の発言はできるだけ控えてほしいな。

「だから森を抜けるのが怖くなってきちゃった。平和なプラサ・プレーヌが出来上がってたらどうしよう。別の意味で一難(いちなん)起きそうで嫌だな」

 アクアからしたら懸念(けねん)事項(じこう)なんだろうけども、ボクからしたらむしろ願ったりだ。

 申し訳ないけど、アクアのイヤな予感が当たっていてほしいよ。

「一難起きる要素がどこにあるのよ」

「もしかしたら、想定外のザコが群がってるかもしれないって事。考えすぎならその方がいいんでけどね」

 今更ザコに群がられたところで大した脅威にはならないと思うけども。アクアが言うぐらいだし、本当にザコレベルの魔物だろうし。

 アクアの心配がどうにも理解できなかったよ。

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