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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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665 カウンター

 三匹まで増えたギンは、それぞれ別の方向に走って攪乱(かくらん)を開始する。

「くっ、ワイズは右、クミンは左を警戒してくれ。ボクが正面を受け持つ」

 三匹ならまだボクたちの目の方が多い。いくら素早いからってそう易々(やすやす)とは見落とさない。

「芸がないわね。そんな単純な手段で、ワタシを封じれるわけないじゃない」

 ギンが言うや、ボクが注目していた一匹が銀光(ぎんこう)と化して消えた。

 偽物か。イヤにネタばらしが速いけれど、ひょっとしたら分身体はあまり長く保てないのかも。なっ。

 視線を移さずに考えていると、消えた少し後方から銀光が発生しだしてギンの駆ける姿が現れる。

(みょう)手品(てじな)をしてくれるねえ。一回消えておいてまた出てくるなんて」

「けどソレが何だって、おい、まさか全ヶ所でソレが起こってねぇだろぉなぁ!」

 ワイズの気づきにハっとさせられる。(ばら)けた全てのギンが一回消えては再び現れた事になる。

 つまりこの現象、ギンは偽物だけでなく本体でも惑わす事が可能。

「サービスはこんなところでいいかしら。そろそろ攻めるから、せいぜい楽しい反応をしてみせなさい」

 ギンの余裕ぶった宣言(せんげん)と同時に、全匹がボクたちに向かって迫ってきた。

 ボクが注意していたギンは最初の攻撃同様、遠くから跳躍して回転しながら突っ込んでくる。

「ジグザグに走って狙いを付けづらくする魂胆(こんたん)かよ。上等だっ!」

「まっすぐ真っ向勝負かい。なかなか肝が据わってるじゃないかい」

 ワイズとクミンに迫るギンは、それぞれ別の戦術を用いて迫ってきているようだ。

 いくら出たり消えたりで翻弄(ほんろう)しようとも、最終的な攻撃手段は接近による物理攻撃だ。タイミングさえ合わせられれば、斬れる。

 ギリギリまで引きつけてからのカウンター。確かにギンは速いさ。けれど、それ以上にデタラメな速さの敵とボクたちは戦ってきたんだ。この程度なら、タイミングは合わせられる。

 神経を研ぎ澄まし、集中する事でギンの接近を見極めようとした。

 本当にそうか?

 直感とでも言うのだろうか。湧き上がった疑問がボクに防御を選択させる。剣の腹をギンに突き出し、両手で支えた。

「見切った。ソコだぁ!」

「今だねっ!」

 ワイズとクミンがカウンターを放ったようだ。

 ボクも回転アタックに備えて力を入れた。接触すると思った瞬間、銀光を放ってギンが消えた。

「何っ!」

 ボクの反射的に上がった声は、クミンとワイズの声と重なっていた。どうやら二人の方のギンも消えたらしい。

 そしてワンテンポ遅れ、消えた所にギンが再び現れた。攻撃していた勢いを(ともな)って。

 正面からの時間差攻撃。

「ぐっ!」

 防御を固めるタイミングこそズラされたものの、体勢自体は崩されていなかったのでどうにか防御に成功した。

「うわぁぁぁあっ!」

「ちぃぃぃいっ!」

 対して攻撃を外され、硬直直後の隙を突かれたワイズは右腕を噛みつかれた。

 クミンは大振りの勢いに身体を任せる事でわざと体勢を崩し、致命傷のかっ裂き攻撃をどうにか深手で済ませたようだ。

「ワイズっ!」

 エリスの矢がワイズに噛みついているギンへ迫るも、銀光を放って一瞬消えてしまう。攻撃をやり過ごしたところで、ワイズに噛みついた状態のギンが姿を現した。

「おっ、おぉぉぉぉぉおっ!」

 腕を噛み千切(ちぎ)る勢いのギンに、ワイズの悲鳴が森を木霊(こだま)したのだった。

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