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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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661 首

「きたきた。ボクももっと凄いキックを魅せつけちゃうぞ」

「アンタは臆病に逃げ(まど)ってなさいよね」

 襲い来る木々の雨に向かって跳び込むシロへ、エリスが矢を放って牽制(けんせい)する。

「おっと、やるね。けど弓矢だけでボクを(とら)えれるとは思わないでね」

「思っちゃないわよ。ワイズ、今の内っ!」

「任せろっ。クリエイトアイス!」

 エリスがシロを攻撃し続けて反撃する余裕をなくしている内に、ワイズがクモの巣状に張った氷で木々の雨を防いだ。

「ほぉ、やるじゃないか。しかしいつまでシロを()い止めていられるかな」

 キーが挑発的に称賛(しょうさん)しつつ、次の攻撃を準備するため長い首を振るって木々を倒し始める。

「図に乗ってんじゃねぇぞ。お返しだっ!」

 ワイズが風圧弾を凍れるクモの巣に発射。砕く衝撃で絡むように張り付いていた木々を、キーへ向かって降らせる。

「返品は受け付けていないのだがね。このぉ!」

 キーもやむを得ないと、溜まりきっていない木々で相殺にかかる。

 ワイズの勢いが乗っている木々に対し。キーの木々は発射間際。数に加え重力の差もあって、キーは木々の雨に打たれる事になる。

「おわぁぁぁぁぁあっ!」

「キーっ!」

 上がる砂埃(すなけむり)を見てシロが叫ぶ。

 モウモウとしていた砂は風に飛ばされて視界を鮮明にしていく。地面に突き刺さったり折れ曲がって落ちている木々の中で、赤く染まりながらもキーは堂々と立っていた。

「この程度で、ヤられるタマではないがっ、こう一方的にヤられると頭にくるね」

 フーフーと息を(あら)げながら睨み付けてくる。怒り浸透(しんとう)なのだろう。

「ふざけるなっ。一方的な蹂躙(じゅうりん)をしてきたのはそっちがさきだろうがぁ!」

「なっ!」

 いつのまにかキーへ近付いていた精鋭の一人に、ボクは思わず声を上げた。気持ちはわかるがムチャだ。

「相手は虫の息よ。決めてしまいなさい」

「うおぉぉぉぉぉおっ!」

 エリスの後押しを受けて精鋭の一人が剣を手に跳びかかった。

「このキーを舐めるなっ。ザコにくれてやる首ではないわっ」

 しかしキーがリーチの長い首を振るう事で、精鋭はあえなく吹き飛ばされてしまう。

「がっ、あっ。アクアさん。ごめっ……」

 背中から木に打ち付けられて地面に倒れた精鋭は、握っていた剣を落として動かなくなった。

「くっ、ちぃぃ!」

 エリスが歯を食いしばって悔しげな舌打ちを放つ。

「どうだっ。この自慢の首の威力は。直々に受けた事をあの世で誇るんだなっ!」

「せっかく彼は勇気を振り絞ったんだ。土産ぐらい持たせるのが優しさってもんじゃないかい!」

 一人ヤって溜飲(りゅういん)を下げていたキーの後ろから、大剣を振りながらクミンが跳びかかる。

「なっ、いつの間に。うおぉぉぉぉおっ!」

 キーが驚きながらも反射的に首を振ってクミンを迎撃しようとする。

「ワシの大剣も、獣に打ち負けるほど貧弱じゃないんだよっ!」

 真正面からぶつかる大剣と長い首。大剣に負ける道理はなく、キー首は跳ね飛んだ。

「まず一匹。次は空跳ぶウサギだね」

「おいおい、獣のフィールドは地上だというのに空ばかり見るのはどうかと思うぞ」

「何っ」

 突如(とつじょ)聞こえてきた声に視線をやる。木々をへし折りながら四足歩行の黒い熊が現れ、クミンへと迫っていた。

「遅いよクロっ。もうキーやられちゃったよ」

「そう言うな。シロだって援護できなかっただろう」

 黒い熊、クロが軽口を叩きながら立ち上がる。鋭い爪がついた大きな前足をクミンに向かって豪快(ごうかい)に振り下ろした。

「くっ、思ったより速いじゃないかいっ」

 文句を言いながら大剣でガードするクミンだったけど、膂力(りょりょく)が強く殴り飛ばされてしまった。

「がっ、あっ」

「クミン!」

 あのパワーをもつクミンが、力負けして背中から木に叩きつけられた。一度地面に膝をつくも、首を振ってから立ち上がる。どうにか無事だ。

 しかしせっかく一匹減らしたと思ったのに、とんでもないのがまた一匹増えるなんて。

 事態はなかなか好転してくれなかった。

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