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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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659 水の弟子達

 そこら中から草葉のガサガサと擦れる音が聞こえてくる。

 始まる。獣共による総攻撃が。

 飛び出てきたのは狼、猿、馬の集団。四方八方からボクたちを囲う形で攻めてきた。

「うおっ、うおぉぉぉおっ!」

「うわぁぁぁあっ。くるなっ、くるなぁぁぁあっ!」

 動揺した精鋭達が声を上げ、闇雲(やみくも)に武器を振るいだす。

 くっ、開戦早々に阿鼻叫喚(あびきょうかん)じゃないか。マズい、ヤられる。けど、シロを無視するわけにもいかない。どうすれば。

「あっ、わあぁぁぁぁあっ!」

 精鋭の一人に狼が跳びかかった。身体が硬直していて明らかに無防備。悪夢は避けられない。

 鋭い牙が肉に食い込み骨を砕く手前で、エリスの放った矢が狼の脳天(のうてん)を貫いた。

 エリスだ。

 戦場を俯瞰(ふかん)するが(ごと)く次々に矢を放っては、群がる獣共に矢を浴びせる。それも精鋭達を害そうとしている敵を優先してだ。

「アンタら狼狽(うろた)えるんじゃないわよ。アクアから特訓受けてもらってたんでしょ。言っとくけどそこらに群がってる獣なんかより、トライデントの方がずっと鋭かったわよ!」

 激励(げきれい)を飛ばしながら襲いかかる狼や馬を射貫き、木にぶら下がっては石を投げつけてくる猿を牽制(けんせい)する。

「実力を発揮せずに無様にだけは死なないで。アタシが助けてあげるから、散るなら戦って散りなさい。いいわねっ!」

 応援と言うには無慈悲で厳しい。けども、内に秘めた想いは伝播(でんぱ)したようだ。

「そうだ。何のためにアクアさんに無理言って特訓してもらったんだ」

「勇者様のお共として戦力になるためじゃないか」

「今更っ、獣なんかに怯えてなんてられるかっ!」

 精鋭達は落ち着きを取り戻し、士気を上げる。さながら精鋭達のリーダーみたいにエリスが指示を与えていた。

 そうか。エリスは誰よりも、アクアから特訓を受けていたんだ。

 そもそもエリスは正規の訓練さえ受けていない、平和に生きてきた少女。強い殺意と食いつかんばかりの意地でアクアの特訓に食らいついて誰よりも成長を遂げてきた。

 言わばアクアの一番弟子。その特訓景色に精鋭達も感化され、弟弟子のようにエリスの後に続き特訓を開始した。

 勇者一行(ボクたち)に追いつくために。

 精鋭達の士気を上げるのに一番適しているのは、自覚のない内に兄弟子となっていたエリスなんだ。

 動きが格段によくなって連携も取れるようになってきた。獣を相手に優位に戦いを展開している。これなら安心してシロに専念できる。

「へー、立て直したんだ。金魚のフンにしてはやるじゃん。でもね、ボク(クラス)の獣は後三匹いるんだよ。ほら、一匹追加」

「何っ!」

 シロが空を飛び跳ねながらニヤリと笑うと、ドスドスと地面を踏みしめる重い音が聞こえてきた。

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