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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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656 獣の力

 ドゥーシュから逃げるように。いや決して逃げているわけでなく、あくまでように。獣王城を飛び出した俺は、そのままプラサ・プレーヌの広場へと駆け抜けた。

 広場には既にクロ、シロ、キーとこの街を支配している獣達がキッチキチに集まっていた。考えなしに招集(しょうしゅう)しすぎたな。

 住んでいる人間共も遠巻きに様子を伺っている。

「朝っぱらから気合いが入ってるな、ダンナ」

「待ちに待った戦いの時だもんね。ボク昨日はワクワクでなかなか眠れなかったよ」

「シロはお子ちゃまだな。まっ、待ちきれなくて朝っぱらから叫んじゃうダンナもどっこいどっこいだけどな」

 クロが豪快に笑いながら腕を組み、シロがワクワクを身体で表すようにピョンピョンと跳ねる。そしてキーがもの言いたげに俺を見下ろしてきた。俺は顔を背けてやった。

「全員集まって、ギンがいないな」

「女性は支度に時間がかかるものよ」

 後ろから聞こえた声に振り向くと、ギンが獣王城の方から走ってきていた。

「毛並みでも整えていたのか。確かに勇者とのお披露目だ、第一印象はよくしておきたいのが女性の心か」

「まっ、そんなところね。ついでに茶番の準備もしておいたわ。インパクトのある第一印象作るために、ね」

 今日はいつになくギンの行動が読めんな。戦いが近くて人知れずに高ぶっているのやもしれんな。

 考え込んでいる俺の横をギンは通り過ぎてクロとシロの間、定位置に入った。

「前もって伝えている通り、今日勇者一行が南より猛獣の森に入りここプラサ・プレーヌへ進行してくる。各自森へ潜み迎撃態勢にて待機、気配を感じ次第各自で戦闘を開始しろ!」

 号令を飛ばすと雄叫びが返ってきた。皆やる気に満ちてなにより、今人間の声も上がってなかったか。

 遠目にいる人間共を眺めると、心なしか腕を上げている者がたくさんいるような気がするのだが。何かの間違いだよな。きっと場の空気に感化されただけだろう。

「勇者達をどう料理しても構わん。最悪俺の(もと)にまで辿り着けなかったのならソレまでで大いに結構。ただひとつ、アクアには手を出すな」

「身内への情けかしら。ダンナも存外(ぞんがい)、女々しいのね」

「それとも、ボクたちの力を見くびってるの」

 ギンとシロが異を唱える。血気盛んな事はいい事だが、過度な自信は身を砕くぞ。

「ではシロとギンは俺と戦って勝てるか。アクアと戦うという事は、そういう事なんだ」

「なるほどソレは自殺行為だ」

「しかしアクア様も勇者側にいるんだろう。向かってきたらどうするんだい」

 クロが諦観(ていかん)しながら納得し、キーが疑問をぶつけてきた。

「おそらくアクアが矢面に立って戦う事はない。こちらから突かない限りは、な。まっ、出てきたら命を捨てる覚悟で戦え」

「簡単に言ってくれるわね」

 ギンが嘆息を吐きながらも瞳に闘志を宿した。他の面々も()()づいてはいない。

「俺からの話は以上だ。各員、(けもの)の力を見せてやれっ!」

 地面を揺らすほどの雄叫びを上げた部下達が、土埃を立てて猛獣の森へと駆けていった。ギンだけ残して。

「ん、ギンは行かないのか」

「行くわよ。ダンナも最後、ドゥーシュに(ケダモノ)の力を見せてあげれば」

「ギンっ!」

「きゃあ怖い」

 冷やかすようなセリフを置いて、ギンも猛獣の森へと駆けていったのだった。

 なんだか急に、ギンの準備したら茶番が怖くなってきたぞ。

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