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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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652 染まりゆく

 近くから聞こえてきたアクアとエリスの会話に、ボクは思わず溜め息が出てしまった。近くにいたワイズとクミンも同じように溜め息を吐いたよ。

「なんっつーかよぉ、タカハシ家ってワードを悪口の総称に使うのはどうかって話だよなぁ」

「そこかいワイズ。いや意味が理解できる分、わからなくはなけども」

「ワシらは良くも悪くも、タカハシ家に染められてるんだろうねえ」

 ワイズの言いようにボクはツッコミを入れ、クミンが苦笑いを浮かべた。

「まぁよくよく考えたら本当に残虐(ざんぎゃく)な振る舞いしてたタカハシ家って、ヴァリーぐらいなもんだったろ」

 ワイズが組んだ手を枕代わりに寝転びながら、思い出すように夜に染まりゆく空を見上げた。

「町中を戦場にしたタカハシ家もヴァリーだけだったからねえ」

「思い返してみると、ヴァリー以外のタカハシ家はみんな信念を持って侵略をしていたね」

 考えるとヴァリーが異質に思えてきた。彼女のタカハシ家らしさって、どこにあったんだろうか。

「ちょっとジャスー。デッドの事忘れないであげてー。一生懸命悪ぶってたんだからー」

 ボクたちの会話が聞こえていたのか、アクアが遠くから声を上げてきた。

「デッドか。確かに非道(ひどう)な行いをしていたけども」

「アイポとの最期のやりとりを見た身としては、どうにもヴァリーと同類には見れないんだよねえ」

 アクア自身、悪ぶってるって言っちゃってるからね。

「あの最期は、やるせなかったよなぁ」

 思えばデッドの時からだったのかもしれない。タカハシ家に手を差し伸べる事が出来なかった罪悪感を感じたのは。

 続くシェイの自害は止められなかった。シャインとエアとの戦いでは茫然自失(ぼうぜんじしつ)(おちい)っていた。フォーレに至っては手の(ほどこ)しようがなかった。

「ボクは、今度こそタカハシ家を救いたい。魔王グラスも、そして魔王ぶったおじさんも」

「魔王ぶったおじさんって、名前覚えてやれよな」

「そういうワイズはどうなんだい。あの冴えない男の名前、覚えているんだろうね」

 クミンの問いに沈黙が落ちた。ふと見下ろすとワイズの顔は明後日の方を向いている。やっぱり覚えてないようだ。

「ちなみにクミンは?」

「知るはずないだろう」

「だよね」

 正直ボクは(いま)だに信じていない。タカハシ家を(ひき)いる黒幕が、一般人以下の自称魔王のおじさんだなんて。もっと裏で、別の誰かが糸を引いているとしか思えない。

「まっ、魔王グラスも冴えないおっさんも救うのは構わねぇけどな。でも手加減だけはすんなよ。負けるぜ」

 ワイズの声色に真剣味が帯びる。

「ワシは少しロンギングでグラスと正面から対峙したけれど、凄いパワーだった。舐めてかかれる相手じゃない」

 クミンも鋭く目を尖らせた。

「クミンに力で渡り合える魔王なんだ。舐めてかかれるはずないだろう。大丈夫、切り札は使うさ」

 敵を救う為にまず勝たなければ。負けたら交渉すらさせてもらえないからね。

 夜に染まる空を見上げて、ボクは決意を胸にした。

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