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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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650 奇襲と宣戦布告

 俺は疲れて眠ってしまったドゥーシュに布団をかけ直してから、脱ぎ捨ててあった服を着直す。

 よくわからん話の流れに飲み込まれてしまったおかげで、部下達に勇者がプラサ・プレーヌに向かって進行していると伝えれていない。

 三階ほどの高さにある窓から飛び降り、地面へ着地。入り組んだ城内を歩き回るより直線的に動けるので効率的だ。

 毎回ドゥーシュに小言を言われるのだが、まぁ知った事ではない。

 活気に(あふ)れる筋骨隆々の人間共をかき分けながら城下町を駆け、外壁付近まで向かった。

「クロ、ギン、シロ、キー。来いっ!」

 腹に力を込めて号令すると、程なくしてみんな集まった。心なしか全員ニマニマしているように感じられる。

「どうしたんですダンナ。改まってオイラたちを呼ぶなんて」

「先程はドゥーシュに流されてしまったせいで、重要な事を伝え忘れていてな」

 引き締まった口調を意識し、眼力を込めて部下達を見渡す。すると銀狼(ぎんろう)のギンが溜め息を吐いた。

「ついに一発ヤったって話なら改まる必要ないわよ」

 いきなり話の腰がねじ曲がる。

「なっ、違うっ」

「何が違うのよ。身体にドゥーシュの匂いを染み込ませておいてよく言うわ。鋭い嗅覚がイヤでも察知するわ」

「よしたまえギン。ダンナからしてみれば重大発表もいいところじゃないか。盛大に祝ってやるのが部下の勤めだろう」

 嘆息するギンを、キリンのキーがちまちま俺を流し見しながらニマニマと(なだ)めた。というかキーも楽しんでるだろ。

「さすがダンナ。一人前の男になってきたんだね。コレで将来安泰(あんたい)だよ」

 白ウサギのシロが赤い瞳を輝かせながら喜んだ。まっすぐな眼差しが心臓に刺さるから目を逸らしてしまう。

「しかし子供の名前はどうするのだ。オイラ達には()の子だろうが女子(おなご)だろうが人間の名前なんてわからんぞ」

「話の飛躍(ひやく)が過ぎる。一発やった程度でそう易々(やすやす)と子宝など授かるものかっ!」

 アゴに手を()えて首を傾げるクロに思いっきり怒鳴ってやった。どいつもこいつも。

「もういい。お前らには頼らん。ようやく勇者がプラサ・プレーヌを目指して動き出したというのにキサマらは」

 ワナワナと震えながら文句を言うと、全員の視線が鋭くなった。

「おいおい、そりゃダンナがドゥーシュの想いに応えたのと同等の案件じゃないかい」

「いいねいーねー。ようやくボクの力を見せつけられるよ」

「貧弱な人間を鍛え上げて街を作るのも思いの外楽しかったが、やはり戦闘の楽しさは別だな」

「ふふっ、ゾクゾクしちゃう。忘れかけていた感覚、取り戻さなくっちゃ」

 キーが茶化しながらも気合いを入れ、シロが高ぶってピョンピョンと跳ねる。クロは己の爪を見ながら獰猛に笑み、ギンも触発(しょくはつ)された。

 戦いにおける気の高ぶりようが頼もしい。

「しかし、プラサ・プレーヌは戦場とみるにはあまりにも適していない。そこで、どの方角から来ようが通り抜けねばならぬ森を戦場にして迎え撃とうと思う」

奇襲(きしゅう)になるわね。久々の狩りといったところかしら」

「悪くはないけど、ただ森って言うのもつまらないよね。なんか地名つけようよ」

「ならば猛獣(もうじゅう)の森でいいのではないか。どうせオイラ達が勇者を迎え撃つ間の仮名だ。縁起悪くしようじゃないか」

 ギンが乗り気になっているとシロが提案をし、クロが応える。

 猛獣の森、悪くない。

「よし、では猛獣の森にてオレ達獣の凶暴さを勇者共に味合わせるぞ!」

「えっ、ダンナも猛獣の森に入るのかい」

 作戦も決まり全員で気合いを入れようってところで、キーから待ったが入る。

「当たり前だ。俺が戦いから逃げて何になる」

「ダメね。ダンナが待ち構えるのは獣王城に決まっているでしょう」

「そーそー。大将は城でドッシリと待ち構えるのがかっこいいんだよ」

 ギンとシロの意見も頷けるものがある。せっかく作った城だからあまり壊したくないが、一室ぐらいなら派手にやらかしても構わないだろう。

「わかった。なら俺を除く部隊が獰猛の森に潜み、勇者一行を迎え撃つ。異論はないな」

 見渡すと、今度こそ全員頷いた。

「では俺はアクアとメッセージで話し合って勇者の接近を確認する。獰猛の森で迎え撃つと宣戦布告もするから、各自気合いを入れておけっ!」

「ちょ、あの。奇襲とは?」

 キーが何か言っていたような気がしたが、大きな怒号でかき消えたのだった。

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