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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第11章 堅物のグラス
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641 グラス・タカハシ

 (おの)が主を誰よりも強く、そして側で守れる男になれ。

 (おさな)い頃に聞かされ続けた母さんの言葉だった。

 常に(きび)しいトレーニングを(こな)し、とにかく戦う力を求めた。鍛え上げた筋肉は必ず心に応えてくれる。そう思っていた。

 生まれこそ第二子と後れを取ったが、それ以外では腑抜(ふぬ)けた兄弟共に負けるはずがないと高を(くく)っていた。

 出会い、共に育ち、そして気付かされる。強さとは、力だけではないという事に。

 一番最初に俺を打ちのめしたのはフォーレだった。力を示す隙も与えられず、口先だけで言いくるめられてしまった。

 デッドには初見殺しを味合わされた。狡猾(こうかつ)(から)め手に為す術なく(おちい)ってしまった。真正面から力で対抗できる代物ではなかった。

 そしてシェイの鋭さに見蕩(みと)れた。あんなか細い力をまかり通せる実力に、挫折(ざせつ)以上の憧れを覚えた。

 強さに様々な種類がある事を知り、全ての方法を取り入れようと試し、元の鞘に戻る。

 結局俺は、愚直(ぐちょく)に鍛え上げる以外の強さに適性がないと理解させられた。

 弱点を克服する事は勿論大事だろう。けど短所を(おぎな)うあまり長所を(ないがし)ろにするのは愚かだと言えよう。絶対の強みを同時に捨てる事になるのだから。

 力をベースに他を少しずつ伸ばしていく。俺にとってのベストだと結論づけた。

 そして月日が経つにつれ、守るべき主がチェル様から父さんに変わった。と言ってもほぼ同列でチェル様も守るべき主なのだけれども。

 同時に、俺達の死ぬ瞬間も決まった。ならばよそ事に(うつつ)()かしている余裕はない。

 多少の兄弟遊びや父さんの余興には付き合ったが、家族以外に余計な時間を割くわけもいくまい。

 特にシャインみたいに女に構ってなどいられない。恋愛したところで死別は明確に訪れる。わざわざ悲しみを増やす趣味も俺にはない。

 正直、男女のやりとりというのもまどろっこしくてよくわからん。

 だから恋愛なんて、父さんのを側で見ていられるだけで充分だった。

 悲恋(ひれん)なのはわかりきっているけれども、父さんとチェル様の一喜一憂が自分事の様に心を揺さぶる。

 そして父さん達の恋愛を守るために強くなれる。

 もう一つの願いは単純に戦って力を試したいという欲求だ。心の内にある獣の闘争心が戦いを求めている。単純だ。

 俺は単純でいるだけで、よかったんだ。

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