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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
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639 サンドイッチ

 すっかり暗くなってから俺は、タカハシ家二階建て一軒家の自宅へと帰る。

 さすがにこの時間帯ならススキも家に戻って、父さんも生きる気力を取り戻しているだろう。

 次男(バカ)が放った言葉だが、女性は偉大だとつくづく実感させられる。

 チェル様がいなければ這い上がるための軸を失っていた。ススキがいなければ這い上がる気力を奮い立たせれなかった。

 そしてアクアが死んでいたら、それこそ這い上がれないほどのダメージを負っていた。

 ホントに生きていてくれてよかったよ。俺は、真正面からアクアに挑める。

「ただいま」

「お帰りなさい、グラス。夕食は私が作っておいてよ」

 ダイニングに入るとチェル様が一人でお茶を(たしな)んでいた。近くにはラップがかけられたスプラッタなサンドイッチ? が皿の上に乗っている。

「すみません。もっと早く帰っていれば俺が晩ご飯を作りましたのに」

「どういう意味か()(ただ)してもよくて」

 不機嫌そうに睨まれたんだけど、サンドイッチのような物が全てを語っているんだよな。まぁ食べれなくはないだろうからフォークとナイフで頂きますが。

「というか父さんはまだ倒れているのですか。それとも料理をできないほど容体(ようたい)深刻(しんこく)なのでしょうか」

 ススキが来たからには大丈夫だと思っていたのだが、心配になってきた。

「コーイチなら大丈夫よ。覚悟を決めたススキが後半戦をしているところだもの」

 まさか再熱させていたとは。父さんも若いな。それにこの家の防音性に改めて驚かされた。建てたの俺達だけども。

「ちなみにススキはドーピングをしていてよ。フォーレ印のお薬を、ね」

「本気すぎやしないか。って言うかフォーレは何を渡しているんだ」

 恐ろしく早い根回し。ホントに何やってんだフォーレ。

「ちなみに、フォーレは何を」

「本来は媚薬だったわ。けど私がフォーレから受け取っていた懐妊薬と交換したの。喜びなさいグラス、あなたたちに弟妹(ていまい)ができてよ」

 フォーレは恐れってやつを知らないのか。効き目は折り紙付きだろうし、そうなったら、アクアが喜ぶか。

「ところでチェル様。少しメッセージを使わせてくれませんか。アクアと話したいので」

「別に構わないけど、グラスは固くてね。許可を取らなくても使える様にしてあるから、他の子達は勝手に使っているわよ」

 あいつら、ホントに遠慮なかったんだな。

「ありがとうございます」

(アクア、起きてるか)

(グラス。珍しいね、どうしたの?)

 思ったよりも元気そうな声が返ってきた。さすがにフォーレの死は(こた)えてそうだと思ったから心配したんだが、杞憂(きゆう)だった様だな。

(落ち込んでるかと思ったんだが、平気そうだな)

(ありがと。正直、フォーレと一緒に死んじゃってもいいかなって思ったんだけどね。お父さん、(たく)されちゃったから)

 切ない笑みが脳裏に浮かんだ。けど、この短時間で吹っ切っている。こういうところが、アクアは強い。

(安心した。もしも不抜(ふぬ)けてしまっていたら、相対する時に楽しみが減るからな)

(あははっ。怖いな。でも、私達も負けないから)

 私達、かっ。

(勇者と仲良さそうでよかったよ。もう退屈だから早く俺の元へ来い。最後まで待たされたおかげで、人間をいじめるのに飽きたところだ)

(そっか。大丈夫、ちゃんといじめれてた?)

(舐めるなよ。またな)

(うん、またね)

 残る(うれ)いは、チェル様だけだな。けど、きっとススキと父さんがなんとかしてくれるだろう。

 俺は肩の力を抜くと、気合いを入れてサンドイッチもどきを頂いた。

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