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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
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638 最後の砦

 日課の筋トレや走り込みをし、汗を流す。双剣を物にしようと魔王城タカハシにある広場で無心で素振りを行おうとした。けど、どうして頭に(よぎ)ってしまう。

「フォーレも()った。父さんを守れる砦は、俺一人になってしまったな」

 双剣を構えて、仮想敵に毒グモ状態のデッドをイメージし戦う。

 デッドは理想の二番手だったと思う。殺意、凶悪さ、毒、非情性と序盤で乗り越えるにはうってつけだった。

 身軽に飛び跳ね、クモの巣を張り、鋭い爪で襲いかかるのを双剣でいなして胸を貫く。

 驚愕の表情を浮かべると、デッドのイメージは霧散する様に消えた。

 次に単眼(ひとつめ)に黒い双剣を生やしたシェイを思い浮かべる。

「問題はお前だシェイ。剣の鋭さや隙のない俊敏な動き、そして父さんへの忠誠。最後に残るのはシェイが相応しかっただろうが。返せよ、俺の三番手」

 シェイは微笑むと、消えたと錯覚させるスピードで俺に急接近してきた。両腕から繰り出される黒剣(こっけん)を双剣で防御する。速い。

 懸命に双剣を振るうも追いつけなくなり、(ふところ)に潜られては一突きされてしまう。

 シェイはニヤリと微笑みながら、霧散していく。

「やっぱり強いな。なのにズルいぞ、シェイ」

 不意に風が吹いてきた。天井を見上げると、黄色い翼を広げてエアが飛んでいた。

「ズルいと言えばお前もか、エア。まぁ単純に飛べるってズルさだけどな。()りにくくて仕方ない」

 地対空と、埋められない距離から黄色い羽を飛ばしてくる。双剣で弾く。とにかく弾く。鋭い風の刃を避け、体勢を崩されたところで接近された。

 俺より低空に飛んできたと思ったら、そのままおでこを突き出して突っ込んできた。

 エアは俺の頭をかち割る勢いですり抜ると、そのまま消えていった。

 イメージトレーニングで早二敗か。

 顔を上げると堂々とした佇まいでシャインが腕を組んでいた。白馬の下半身も相まってかなりの巨体だ。

「お前は特殊すぎて何も言えんよ。中盤ぐらいで丁度よかったんじゃないか。まぁいい。真っ向勝負だ、こい」

 シャインは不快(ふかい)さを表情に出しながら全速力で突っ込んできた。双剣を平行に振り上げ、全力で振り下ろす。

獣双剣(じゅうそ○けん)っ!」

 獣の牙を思わせる様な鋭さでシャインの両肩に食い込む様双剣を振り下ろす。次の瞬間に幻が見えた。双剣のついでに、俺自身も弾き飛ばされる。

 幻から目を覚ますと、俺は双剣をただ振り下ろしていた。当然だ。幻なんかに吹き飛ばされない。けど結果は敗北だった。

「やはり男の俺じゃシャインには勝てんか。っと!」

 気を抜いた瞬間、後ろから赤い大鎌が首元に延びてきた。咄嗟(とっさ)に右の剣を振り上げて大鎌を弾き、左の剣で背後を貫く。ヴァリーがウソでしょって表情(かお)して消えていく。

「いくら不意打ちされようが、ヴァリーには負けんさ。俺も大トリは遠慮したかったが、ヴァリーには譲れなかった」

 花びらが舞いだした。次はフォーレか。顔を上げると、チャン・○ーハンスタイルのフォーレがニマリと笑っていた。

「やめろ。どうしてソレで出てくるんだ。気が()える」

 自分でイメージしといてなんだが、フォーレならやりかねないのがまた悲しい。

 どうにか気を取り直して戦おうとしたんだけど、やめた。

 つまらなそうにフォーレが消えていく。

「よくよく考えたら、フォーレ相手にイメージトレーニングは無意味だ。お前実際にイメージ通りに動く事、ないだろ。不可能だ」

 まぁ不戦敗だろう。二勝四敗。軽くイメトレしただけでも負け越している。

「やはり最後は荷が重いな。しかも、一芝居打たなければならないって条件付きだ。ホントにイヤになる」

 最後にアクアが浮かび上がってきた。鋭いトライデントを両手に、腰を落として構えている。

「オマケにアクアを相手にしなきゃイケない。なし崩し的に一番手になったけれど、お前だって最後の砦に相応しかったんだからな」

 俺達八兄弟の中で唯一の年上(あね)。真っ先に対抗心を抱いた、敵。どうしよもないけれど、俺から第一子を奪った長女。

 アクアは真剣な表情で意を決して突っ込んでくる。突き出される鋭いトライデントを双剣で弾く。

 何度か攻防を繰り返し、アクアが渾身の突きを放ったところで俺はトライデントを弾き飛ばした。

 驚きで青い目を見開くアクアに追い打ちの斬り下ろし放つ。

 アクアは驚いたまま消えていく。

「ちっ。イヤに簡単に勝たせてくれる」

 もうこんなものでいいだろうか。程よく時間も潰れたし、父さんの(いとな)みもチェル様の相談も終わっている事だろう。

 どの道俺には戦う事しかできないからな。まさかススキに感謝する日が来るとはな。

 双剣をしまい、実家の方を眺めながらしみじみと思った。

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