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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
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630 本物とか偽物とか

 困惑している私をよそに、フォーレはジャス達にも巨大なタンポポの綿毛を渡していく。

「っで、綿毛(コレ)でどうしようって言うのよ」

 あっ、エリスが思わずつっこんだ。

「タンポポの綿毛を持ったまま飛び降りるに決まってるよぉ。頭にタンポポ咲いてるだけあってぇ、オリジナルよりタンポポの精度は高いからぁ」

「えっと。アレかい。この高所からでもメルヘンにフワフワと地上に降りられるのかい」

 クミンがこめかみを押さえちゃった。まるで家庭が外れててほしいみたい。

「そのまさかだよぉ。大丈夫ぅ、オリジナルが用意してた脱出方法だもぉん。綿毛に乗ったつもりでいてよぉ」

「いや、そんな大船みたいに言われてもなぁ。しかも泥船の方がまだ頼れそうだし。そもそも人間の体重に堪えれんのか」

 ワイズが持っている綿毛を疑わしげに観察しだしたよ。

「あんまり時間残ってないからぁ、さっさとアタイを信じて飛び降りた方がいいよぉ。ちょっと風に流されちゃうかもしれないけどぉ、まぁ死んだりはしないでしょぉ」

「ここぞってタイミングで不安を煽らないでくれないかい」

 ジャスが呆れながら青ざめた。みんな不安なんだろうなぁ。

「大丈夫だよ。フォーレが考えてくれたんだもん。無事に脱出できる。飛び降りよう」

 全力を出し切ってから私たちを(おとし)めるほど、フォーレは悪人になれないもん。

 キッパリと言い放ったおかげか、みんな決心して頷いてくれた。私は改めて、コピーの方へ振り返り手を差し伸べる。

「ねぇ、フォーレも一緒に行こう」

「ふぇ。アタイコピーだよぉ」

「コピーでも、やっぱり一緒に生きてほしい」

 きっと本物とか偽物とかそういうのは関係なく、フォーレは私を想ってくれていると思うから。

 緑の瞳をまん丸くしていたフォーレは、微笑んでから首を横に振った。

「やめとくぅ。だってアタイ達はぁ、オリジナルの側で眠るって決めてるからぁ。それにこの身体ぁ、すぐ(しお)れる様に作られてるんだよぉ。今生き延びたところで半日も持たないもぉん」

 別れを告げる笑顔は吹っ切れていて、(はかな)げで、悔しいほどキレイだった。やっぱりこの()もフォーレだ。花は違うけど、散り際に()かれてしまう。

「やっぱりズルいなぁ。大好きだから、余計にズルいや」

「仕方ないよぉ。大好きだからぁ、からかいたくなるんだもぉん。アタイのいじわるぅ、受け止めてくれてありがとねぇ。アクア」

 あぁ、別れたくないな。離れたくない。

 植木鉢の揺れが大きくなってきた。もうホントに時間がない。

「しょうがないなぁ。決心がつかないみたいだからぁ、アタイが背中を押してあげるねぇ」

 コピーはそう言うと、正面から両手で私を空へと突き飛ばした。

「きゃ」

 綿毛を両手で握り、風に乗ってフワフワと植木鉢から離れていく。ジャス達も周囲にフワフワと浮かんでいた。コピーが私と一緒に突き落としたみたい。

 見上げると、植木鉢の端っこでフォーレが大きく手を振ってくれていた。小さくなって見えなくなるまで、ずっと。

「ぅっ、フォーレ」

 風に流されながら漂っていると、バサリと白衣が近付いてきた。手を伸ばして捕まえると内側に日本語が書いてあった。

 肩パットの代わりがぁ、白衣ぐらいしかなかったよぉ。

「もぉ、最後までボケないでよ。植木鉢、燃やしたくなっちゃうじゃない」

 結局、最後まで振り回されちゃったな。

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