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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
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626 萎み枯れる

 アクアは泣きながら水を操るとぉ、燃え盛る植木鉢の炎を一気に消化していったぁ。踊る様に水が舞ってぇ、赤を青で覆い尽くしていくぅ。

 燃え移っていたアタイの身体からも火が消えたねぇ。

 一通り水が引くとぉ、黒焦げた景色と隙間から射し込む光が視界に映ったよぉ。

 日光を覆い隠すほどの葉は焼け落ちてぇ、逞しい杉の枝や幹は黒ずんでるぅ。地面を覆い尽くすほどの水面もいつの間にか消えててぇ、ぬかるんで冷たい感覚の泥を背中に感じるよぉ。

「もぉ。植木鉢だからって水をあげすぎだよぉ」

「フォーレっ! 喋っちゃダメ。すぐに回復するから、それまで舞ってて。ジャス!」

 なんか急に泣き出しそうな表情(かお)をして慌てちゃったぁ。完全に油断しきってるねぇ。でもまだぁ、命懸けの戦いの途中なんだよぉ。まだアタイは咲いてるのぉ。咲いてる限りはぁ、続けれるぅ。

 腕に力を込めてツタをゆっくりと伸ばすぅ。月下美人を使ってからぁ意図的に使ってなかった攻撃手段だよぉ。小賢(こざか)しい手だけどぉ、思い込みの種は植えておいたのぉ。

 無警戒に顔を背けているアクアの首にぃ、鋭いツタをグサリと突き刺したぁ。

 青い瞳が見開いてぇ、震えながらアタイに視線を戻すよぉ。

「こんなことしちゃダメだよフォーレ。もう、力入ってないじゃん」

 ボロボロと涙をこぼしながら顔を(しか)めるぅ。アタイのやった事なんて気にも(とど)めていないみたぁい。むしろ心配されてるぅ。どうしてだろぉ。あぁ。

 アクアの首に突き刺さっているツタがぁ、変色しながら干からびて粉微塵(こなみじん)に砕け散ったぁ。まさかぁ。

 気になったアタイはぁ、軋む二の腕を上げてどうなってるか目で確かめるぅ。

 瑞々しくふっくらした黄緑の腕はぁ、硬い細枝の様にひび割れて茶色がかっていたぁ。関節を動かすのも一苦労だねぇ。水分が通ってないのかもぉ。

「あぁ、そっかぁ。アタイ、もう枯れちゃったんだぁ。一時(いっとき)でいいから勝ちたかったなぁ」

 アクアの後ろにぃ、勇者一行がゾロゾロと歩み寄ってくるぅ。月下美人の影響は完全になくなってるやぁ。

「落ち着いたらいつでも再戦するから、今は傷を癒やそっ。ジャス」

「わかっているアクア。キュア・ブレイブ!」

 勇者の完全回復技がぁ、植木鉢(ここ)にいるみんなを癒していくぅ。ジャスをぉ、ワイズをぉ、クミンをぉ、エリスをぉ、当然アクアをぉ。そしてその対象はぁ、アタイまで包み込んだぁ。

「そんなっ、どうして!」

 アクアが驚愕の声を上げたぁ。みんなの傷が癒えていくなかぁ、アタイだけがボロボロのままだからぁ。

「だよねぇ。いくら全てを完全回復するキュア・ブレイブでもぉ、削れた寿命は取り返せないよねぇ」

「寿命って、フォーレは何したのっ!」

「月下美人はねぇ、一生に一夜だけ花を咲かせるのぉ。咲き終わったら後は(しぼ)んで枯れるだけぇ。そういう切り札なのぉ。アタイは残っている全ての寿命を養分にぃ、月下美人を咲かせたんだぁ」

 日に二回の必殺技よりぃ、一生に一度の必殺技の方が(したた)かじゃなきゃやってられないよぉ。

 ごめんねアクア。全力を出して負けたら死なないって約束ぅ、前提条件の時点で不可能だったんだよねぇ。ウソはついてないけどぉ、騙す形にしちゃったぁ。

 グシャグシャに泣いてるアクアのキレイな顔を独り占めにしながらぁ、枯れ際の一時(ひととき)でも楽しもうかねぇ。

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