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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
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617 憧れを焦がれ

 脇腹が酷く熱い。なんの洗練(せんれん)もされてない鉄球がここまで破壊力を秘めているなんて。

 土を握りしめて見上げる。フォーレの調子に乗ってる声が常に聞こえる。ジャス達が少しずつ追い詰められていく。

「ダメ、まだ倒れてなんていられない」

 手に力を込めて起き上がろうとするんだけど、ズキリとくる脇腹の痛みに身が沈んでしまう。

「がんばるねぇ、アクア。けどモロに鉄球入ったからツラいでしょぉ。まだ休んでてもいいんだよぉ」

 私の側でしゃがみ込むフォーレ。頭に盆栽(ぼんさい)が生えてるから明らかにコピーだね。でもその声で言われたら、お言葉に甘えたくなっちゃう。

「アクアの強さは本物だよぉ。槍捌(やりさば)きは見てて()()れするしぃ。憧れるほど強かったぁ。オリジナルフォーレだって認めてくれてるよぉ」

 そっか、認めてくれてるんだ。あの優しくて頭がよくて、私の手を引いて微笑んでくれていたフォーレが。

「後は勇者達に任せよぉ。大丈夫ぅ。仲間なんだから信じちゃいなよぉ」

 そうだよね。頼れる仲間がいるんだもん。信じるのもアリだよね。

「けどさ、そうやって諦める私を、フォーレは失望しちゃうよね!」

 新たにトライデントを作り出し、見下ろしてくるコピーフォーレへ寝転んだまま突き伸ばす。胸を貫いてなお、微笑みを絶やさない。

「ホントがんばり屋さんだなぁ。やっぱりアクアの事好きだよぉ」

「私の方がフォーレの事、大好きなんだから。フォーレよりも、私はフォーレの事を憧れてるんだから。だからっ!」

 酷い痛みを、歯を食いしばる事で押し殺す。根性で立ち上がって近くで背を向けているフォーレへトライデントを振り回す。

「私はフォーレに少しでも追いつきたいっ!」

「あヤバぁ」

 肩越しに振り向いて緑の瞳を見開くフォーレの、左腕を切り裂いた。

「痛ぁっ!」

 赤い血を流して傷口を押さえるフォーレ。

「ほん、もの?」

 破れかぶれの一撃だった。まさかオリジナルフォーレにダメージを与えられるなんて。

 猛攻していたコピーフォーレ達も本物にダメージが入った事に驚いた様で、一斉にオリジナルフォーレへ注意を向けた。

「ナイスよアクア!」

 エリスは褒めながら、硬直しているコピーフォーレを次々射貫く。クミンは大剣で片っ端から斬り捨て、ワイズは土魔法で潰し貫く。ジャスだって千載一遇のチャンスを逃さない。

「参ったなぁ。アクアは倒したつもりだったからぁ、警戒し損ねたぁ」

 汗を垂らしながら顔を(しか)めるフォーレ。一瞬の硬直がコピーフォーレ全員を奪い去り、形成を逆転させた。

 思ったよりも呆気なかったけど、ようやくフォーレに追いつけた気がした。

「はぁ、はぁ。決着だよ、フォーレ」

 手傷を負い、孤立したフォーレへ勝利の宣言をしたよ。

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