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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
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613 木を隠すなら

「それじゃぁアタイ達ぃ、アクア達を驚かせよぉ」

「おぉ」

 緩い号令にこれまた緩い返事をしたフォーレ達は、口調とは裏腹な俊敏さで迫ってきた。

 素手で接近戦を挑むフォーレ達。種を蒔いて植物による遊撃をしてくるフォーレ達。回り込んで囲み込もうとするフォーレ達。

「くっ、みんな手分けして迎撃するぞ」

 個の強さと数の強みの両方を生かした戦術。チームプレイなんて簡単に崩されるのは明白だ。ならばボクたちも個を生かした戦いに切り替えなければならない。じゃないと、チームの隙を突かれて一瞬で崩壊しまうだろう。

「魔法使いを孤立させやがって。付き合ったらぁ!」

 ワイズが自ら距離を離しながら、迫り来るフォーレに杖を一振りして風の刃を放つ。

「あっ、残機が減っちゃったぁ」

 呆気なく胴体を真っ二つにされたフォーレが、(ほう)けた表情で最期の言葉を漏らす。

「へっ、思ったより呆気なぁ!」

 崩れ落ちるフォーレの身体を貫きながら鋭いツタが伸びてきてワイズに迫る。

「ちい!」

 伸びているツタの中間をクミンが咄嗟(とっさ)に斬り捨てると、勢いを失いフォーレの身体と一緒に地面へ落ちる。

「おいおいおい。初っ端からやってくれるじゃねぇか。自分のコピーを捨て駒ってか、目眩ましに利用するなんてよぉ。頭イカれてんじゃねぇのか」

「悪態つくなんて余裕だねぇ」

「クソぉ!」

 冷や汗をかきながら息を荒げていたワイズの後方から、新たなフォーレが襲い来る。なんとか対応しているが息つく暇もない。そしてサポートに回る余裕もない。

「ちょっと手数が多いじゃないのよ。もうちょっと人数減らしなさいよ!」

「アタイ達を減らしたいならぁ、がんばって減らしてねぇ。複数のコピーフォーレよりぃ、オリジナルフォーレを倒した方が手っ取り早いと思うけどねぇ」

「だったらわかりやすく目印でもつけなさいよバカっ!」

 伸びてくるツタや高速で乱射される種を躱しながら、矢を放つエリス。フォーレを一人仕留めている様だけれど、まだまだ数は多い。

 オリジナルの特徴は頭に生えているツタだ。コピー達はパンジーやデイジーといった花を咲かせている。けど同じようなツタを生やしたフォーレも複数確認できている。数を絞る事ならできる。

(せわ)しなくて(たま)らないねえ。知恵を持った団体は苦手だよ」

「コピー達はそれほど賢くないよぉ。人工栽培(じんこうさいばい)だとどうしても限界あるからぁ」

「冗談はもうちょっと弱くなってからいいな!」

 クミンも一回転の横薙ぎで一体を真っ二つにした。けど斬られたフォーレの肩に足をかけて別のフォーレが跳びかる。

「あぁ、アタイを踏み台にぃ」

「味方相手に使うセリフじゃないと思うなぁ」

「ふざけんのも大概(たいがい)にしなっ!」

 緩い口調で殴り下ろそうするフォーレを、クミンは二回転目の斬撃で斬り捨てる。

「隙ありぃ」

「あぁもう!」

 体勢が完全に崩れきったところに別方向から種の弾丸が迫る。悪態しかつけず反応できないクミン。

「させないよ、フォーレ」

 アクアが遮る様に間へ跳び込み、トライデントで全ての種を斬り捨てる。

「アクアかっこいぃ。でもアタイも負けないからぁ」

「コピーの接近戦とかワンパターンじゃないかな!」

 アクアへ接近戦を挑むフォーレへ、トライデントの薙ぎ払いを返す。さっきまでのパターンならコピーが斬り捨てられて本命が飛んでくるはず。大丈夫、アクアなら対処できる。

「酷いなぁ。アタイがオリジナルなのにぃ」

 フォーレは反射的に跳び退いてトライデントを躱し、足下から複数の根を伸ばしてきた。

「あぁぁぁぁあっ!」

「アクアっ!」

 トライデントを振り抜いた体勢で、寝に胸を数ヵ所貫かれてしまう。

 動きが他のフォーレと違う。まさか本物が接近戦を仕掛けただと。

 よく頭の植物を見ると、本物が生やしているツタが存在していた。

「木を隠すなら森だよねぇ。あでもぉ、コピーたちは人工だから林かぁ」

 イタズラが成功した様な笑みを浮かべたフォーレは、知的に緑の瞳を輝かせた。

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