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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
613/738

612 数の力

「やる気満々だねぇ。アタイも出し惜しみナシでいこっかなぁ」

 フォーレは宣言するなり後ろを振り向き、しゃがみ込んで脱ぎ捨てた白衣を漁りだした。

「ねぇ、何で白衣脱いじゃったの」

 隙だらけで背中を見せるフォーレに、アクアが思わずトライデントを下げて呆れてしまう。

「ホントは(そで)を通したままぁ、フォーレぇ、行きまぁす。って脱ぎ捨てたかったんだぁ。けど思ったより難しかったからぁ、肩からふぁさぁってマントを脱ぐ隊長スタイルに切り替えたのぉ」

「えっと、かっこつけたかったから脱ぎ捨てたって事でいいわけ。っで後から必要な物を白衣にしまってあった事を思い出して探してると。情けなくない」

 思わずエリスに同意してしまう。いやまぁ剣を下げるつもりはないけども。

「情けないでしょぉ。そのまま見下してくれててもいいんだよぉ。あったあったぁ」

 もう狙って弱く見せているのか素なのかがわからん。ボクたちのゲンナリした気持ちを知ってか知らずか、ホクホクといった様子でフォーレは向き直った。手には試験管が握られている。

「何度も言ってるけどぉ、アタイって他のみんなに比べて弱いんだよねぇ。知略がどうこう言われてるけどぉ、フィジカルでは勝ってこないんだよぉ。ましてや多勢に無勢だからねぇ、戦う前から白旗(しろはた)気分なんだぁ」

「もっともな事を言って同情を誘う気かい。生憎手加減できるほどフォーレを下に見ちゃいないんでね」

 気が抜ける発言は多いが、心の奥底では危険信号を敏感に発している。クミンじゃなくても危機感を覚える。

 上手くいかない事にムーっとすねた様子を見せるフォーレだったが、手に種を作り出すとニマリと微笑んだ。

「そんなに警戒されちゃってたら一人じゃ勝てないよねぇ。だからぁ、増やす事にしたよぉ」

 フォーレは植木鉢に種をばら撒くと、試験管の液体を上からかけた。

「ヴァリーだったけか、部下を使役する戦術をとったのは。まぁタカハシ家復活に比べりゃ、ザコの増援なんて訳ねぇぜ。浅知恵もいいとこだな」

 植物系の魔物を増産する事で指揮下において戦うつもりか。確かにヴァリーに比べて兵力は一段落ちるだろう。しかし指示をするのが魔王フォーレだ。ザコをけしかけられるだけでも油断できない。

「アクアは覚えてるぅ」

 唐突に問われ、首を傾げるアクア。

「ほらぁ、アクアが勇者と戦うときに御守り上げたよねぇ」

「あっ、あの時は本当に助かったよ。ありがとねフォーレ」

 改めてといった感じでお礼をするアクア。確か御守りが砂浜に落ちた事で中に入っていた種が植わり、成長して。

「まさかっ!」

「ジャスは気付いたみたいだねぇ。別にアタイも恩着せがましく感謝されたいわけじゃないんだよぉ。あの時どうやって助かったが重要だからぁ」

 ばら撒いた種が芽吹き、急成長を遂げて行く。あの時砂浜に落ちた種は、フォーレそっくりな姿に成長をした。

「前言撤回。ヴァリーより倫理観狂いそうだわ」

「文字通り数を増やすんじゃないよっ!」

 ワイズが嘆き、クミンが顔を引き攣らせる。

「アタイ参上ぉ」

「ねむぅい。まだ土の中にいていいかなぁ」

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃじゃぁん」

「ウソでしょフォーレ。想定越えすぎだよ!」

 アクアが衝撃の光景に目を剥いてしまう。

 ワラワラとコピーフォーレが土から生えてくる。ばっと三十ぐらいだろうか、全員が眠そうな目つきに黄緑の肌をしている。わかりやすく違うのは、頭に生えている花ぐらいだろう。

「アタイの出番が遅い分ねぇ、改良も重ねられたし数も増やせたよぉ。ひとつ安心させたげるぅ。コピーフォーレ達は痛みと恐怖を感じない様に作ってあるからぁ。だからアタイ達の猛攻をぉ、全力で抗ってねぇ」

 ゾッとするほど緩い笑顔で、全員のフォーレが微笑んだ。

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