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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
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603 記憶と成長

 キナハトの恩恵(おんけい)で宿を借りた私たちは、英気(えいき)(やしな)うために美味しいご飯を食べて、ゆっくりと木の香りがするお風呂に浸かった。

 フォーレのと決戦前だけれど、かなりリラックスできた。

 エリス達におやすみを言って布団に潜ったんだけれど、どうしても寝付けなくて起き出しちゃった。足音を殺しながら部屋から抜け出して、ヴァルト・ディアス内に動き回っても問題ないスペースを探した。

 うん、ここだったら多少騒がしくしても迷惑にならないよね。

 星空を眺めながらイメージする。三日月に照らされた広場は薄暗いけれど、私には充分な明るさだった。

 音もなく浮かび上がってきたのは、いつもの余裕の笑みを浮かべるフォーレ。

 私が水からトライデントを精製すると、フォーレは周囲に(たね)()いた。地面から様々な花が()えてきて、その中央から高速で種が発射される。

 フォーレとの距離を詰めながらトライデントを振るい、被弾するはずの種を全て切り捨てる。銃弾のような重い威力を誇っている上、体内へ根を張って寄生してくる危険な攻撃。かする事さえ一度も許されない。

 遠くでフォーレが腕を振るう。私の足下(あしもと)へ緑色のツタが延びてくる。

 フォーレの腕に巻き付けられたツタは、生き物のように軌道を変えてくる。

 進行方向を横に逸れながら跳ぶ事でツタの一撃を(かわ)す。縮められない距離をもどかしく感じるけれど、水魔法による遠距離攻撃は御法度(ごはっと)だ。

 フォーレと一緒に戦うとき私は最高に相性がよくて、水で植物を活性化できた。

 けど敵対したとなると逆効果。私の水はフォーレを有利にしちゃう。

 トライデントによる物理戦しか私に勝機はない。地道に少しずつ距離を詰めて、懐に潜り込まなきゃいけない。

 不意に伸びてきたツタにトライデントを絡め取られてしまう。

 私の手元からトライデントが離れた瞬間、フォーレは勝利の笑みを深めた。

 その隙を逃さず二本目のトライデントを精製して一気に距離を詰める。驚いて硬直するフォーレの身体に、私はトライデントを突きつけていた。

 勝てる。フォーレは私の事をよく知ってるけど、私だってフォーレの事をよく知っている。

 どう動くか想像出来るし、行動が読めればフィジカルで圧倒できる。

 一度勝ったフォーレのイメージを霧散させ、再び遠くにフォーレをイメージし戦う。

 五戦五勝。私一人でもフォーレに完勝だ。本番はジャス達とコンビネーションを期待できるからもっと勝ちが確実になる。

 みんなが万全なら勝てる。イメージ通りなら勝てる。あのフォーレに。

 星空を見上げながら、森の風を髪で感じる。あのフォーレは、いつだって想定外の攻撃をしてくる。

 記憶の中のフォーレになら勝てる自信があるけど、新しいフォーレに通じるかな。

「ホントいい動きするわよねアクアは。キレだってよかったのに、顔が不服そうよ」

 声をかけられて振り向くと、寝ているはずのエリスが側にいた。全然気付かなかったな。

「エリス」

「安心しなさいよ。アクアのパフォーマンスは最高だったから。だからアタシ達を信じて、思いっきりフォーレにぶつかってきなさい。納得、したいんでしょ」

 エリスは私の胸の中央辺りに手のひらを当てながら、茶色い瞳でまっすぐ見つめてきた。

「わかったら早く寝るわよ。明日に疲れなんて残してたら許さないんだから」

 一方的に言って手のひらを離すと、あくびしながら一人で宿に戻っていった。

「強くなったねエリス。(かな)わないや」

 エリスの成長が嬉しくって思わず笑みがこぼれちゃった。

 大丈夫。私だって成長してるんだから。だからフォーレ、うんと驚かしちゃうんだからね。そんでもって、一緒に生きてもらうんだから。シェイみたいな事、イヤなんだからね。

 私はエリスを追うように宿へと戻ったよ。

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