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俺が異世界で魔王になって勇者に討伐されるまで  作者: 幽霊配達員
第10章 病原のフォーレ
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599 くしゃみ

 ハード・ウォールを旅立って三週間ほど。途中ロンギングに寄り道をし、救援隊を各地に派遣してからエルフの森へと足を踏み入れた。

 神聖なる森ヴァルト・ディアスは神樹サマネア様に守られた穏やかな地域だ。自然の恵みに溢れ、エルフ達が静かに暮らす悠久の地。

 しかし森に入った途端、強力な植物系の魔物に襲われる事になる。

 魔王フォーレが侵略せし地であるとイヤでも実感させられる。が知略を得意と聞いたわりには、力と数による蹂躙(じゅうりん)を主体にしているように感じられた。

 勿論脅威ではあるけれど、頭脳を使っていない力押し戦略で肩透かしを食らった気分だ。

 危険な場面は何度かあったけれども、ロンギングの精鋭達も含めて深手を負った者は一人もいない。

 警戒をしすぎたのか、或いはアクアがフォーレを慕うあまりに誇張(こちょう)が過ぎていたのか。

 ともかくボクたちはいい感じに緊張が抜けた状態で、情報を得るため森の奥にあるエルフの集落を目指す。

 魔物の出てこない瞬間は平和そのもので、空気がおいしいのもあって心身が洗われるようでもあった。

 現状の感覚だけれども、タカハシ家が侵略した他の地域に比べて一番被害が少なく感じられる。

 魔王フォーレに攻撃性がない(あらわ)れなのかもしれない。何を仕出かすかわからない反面、穏やかでボーっとした性格でもあった。

 ひょっとかすると、本当に最善の形で魔王フォーレとの戦いに決着を着けられるかも知れない。

 ボクたちの実力で勝利をし、生きたまま反省をさせ、戦いから退(しりぞ)かせ、罪を償いながらも充実した生活を送ってもらう。

 まだ寝ているときに見る夢みたいな希望。妄想とも言える段階だ。

 そんなモワモワした想像が、誰かのくしゃみで霧散した。

 振り返る。精鋭の一人が注目を浴びていた。聞くと急に鼻がムズムズしたそうだ。

 旅の疲れが出て風邪を引いてしまったのかもしれない。くしゃみが止まらなくなってしまった一人を気の毒に思いながら、気持ちを切り替えてエルフの集落を目指す。

 最初はただの心配だった。けどくしゃみが止まらない者が二人、三人と増えていった事で不安が生まれる。風邪が連鎖的に(うつ)ってしまったのではないか。

 幸い命の危機が迫るほどではないが、イヤな予感がする。

 みんなに移らない事も勿論だが、自己的かもしれないけどボクたちメインメンバーに移らないかが心配だ。

 魔王フォーレと戦うときに病気になっていては勝てる勝負にも勝てなくなってしまう。

 格上と戦うのに体調が万全なのは絶対条件。まだ情報収集前だって言うのに、不安で堪らなくなってしまっていた。

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