598 肥料のような悪態
実家での挨拶も終えたからぁ、アタイは侵略地であるヴァルト・ディアスでのんびりとアクア達を待つ事にしたよぉ。
「んー、やっぱりいつきても森の空気はおいしいねぇ。エルフ達が住み着くわけだよぉ」
両手を広げぇ、胸いっぱいに深呼吸しながら散策するぅ。
木々で密集してるけどぉ、優しい木漏れ日が射していて涼しぃ。動物や虫の生命も感じられてぇ、一日中ぼぉっと過ごせそうだねぇ。
「まっすぐ拠点に戻っても構わないんだけどぉ、せっかく森に戻ってきたんだから挨拶に回ろうかなぁ」
千年以上も昔から森を守っている神樹サマネアの所へ足を向けるぅ。雑談するにはもってこいの相手だしぃ、時折遊び相手にもなってくれるから好きなんだぁ。
何時間ぐらい歩いたかなぁ。森を抜けると広い空間に出たよぉ。中心にポツンと大きな木が一本だけ生えてるぅ、いかにも厳かな場所だねぇ。
「ソ○モンよぉ、アタイは帰ってきたぁ」
「勝手に変な地名つけるんじゃないわよ。ぶえっくしゅ!」
悦に浸ろうとしたらぁ、正面から矢が飛んできたよぉ。とっさに装備していた鉄球でブンと弾いちゃったぁ。
「来てたんだねぇキナハト。いきなり射ってくるから驚いたよぉ」
大きな木の根元にぃ、金色ショートヘアのロリエルフが弓を持って立ってたよぉ。色白で肌もプニプニなんだけどぉ、かわいそうにタレた鼻をズビズビ啜ってるぅ。
「驚いたんなら素直に胸を射貫かれなさいよ。涼しい顔してナマイキなんだから。ぶえっくしゅ!」
緑色したアーモンドアイが恨めしそうにウルんじゃってるぅ。ツラそぉ。
「お薬処方しよっかぁ。一日二回朝晩飲めばぁ、花粉症が緩和されるよぉ」
「敵からのほどこしなんて要らないんだから。それに、エルフのみんなが苦しんでるのにわらわだけ楽しようなんて許されないもの。ぶえっくしゅ!」
白衣の内側を探ってる間に断られちゃったぁ。
エルフの巫女に選ばれてるだけあってぇ、キナハトは律儀だなぁ。強がらなくてもいいと思うけどぉ。
「サマネアも久しぶりぃ。光合成してるぅ」
「様をつけなさい様を。それから不吉な事聞くんじゃないわよ無礼者。ぶえっくしゅ。うぅ」
「フォフォ。構わんよ。して、今日は何をしに来たのだ、緑に愛されし娘よ」
威厳なく叱りつけてくるキナハトを宥めながらぁ、サマネアが要件を聞いてきたぁ。
「もうしばらくしたらぁ、勇者達がアタイを討伐しに来るからその報告ぅ」
キナハトの眉間にシワが寄った気がしたぁ。
「遂に待ち人が来たるか。口出しは不要じゃろうが、悔いの残らぬようにな」
さすがは千年生きた森の主だねぇ。何もかもお見通しだぁ。
「もちろんだよぉ。キナハトにはぁ、メッセンジャーをお願いしたいんだよねぇ」
「勝手にわらわをコキ使ううんじゃないわよ。フォーレなんか勇者にギッタギタにされちゃえばいいんだから。うぅ。で何よ?」
文句をタレぇ、鼻を啜りながらも聞いてくれるぅ。捻くれつつも優しいところが好きだなぁ。
「アタイの居城は知ってるよねぇ。アタイが待ち構えているって伝えてくれるだけでいいよぉ」
「はっ。自ら勇者の案内をお願いするだなんて殊勝な心がけじゃない。任されてあげるからズタボロにされちゃいなさい。ぶえっくしゅ!」
にしても豪快なくしゃみぃ。アタイが言うのもなんだけどぉ、どうにかしたげたいよぉ。
「それと好き勝手してきた事に対して勇者からお仕置きをされたら、わらわ達に詫びに来なさい。生きて謝りにきたら寛大な心で許してあげるんだから。だから絶対死ぬんじゃないわよ!」
キナハトってば威勢よく上目遣いで睨んでくれちゃってぇ、嬉しくてニマニマが止まらなくなっちゃうよぉ。
「ありがとぉ、キナハト」
「ちょ、わらわを抱き寄せてムダにデカい胸に抱き寄せるな。フォーレの服が鼻水で汚れるじゃないの。あと身につけてる鎖が痛い」
フォフォフォと微笑むサマネアとぉ、キナハトの悪態が耳に心地いいよぉ。




